その後の人民元対外決済

いまや、丸紅上海の財経部長として活躍する谷垣君(これは語学研修生時代)から、「世界で最初に人民元の対日送金を実施した男になりましたよ!」という自慢げな報告があった。

去年9月のブログで、人民元対外決済の試行措置が活用されない理由と、今後の見通しに付いて解説したが、ここで予測した様に、運用面での規制緩和が徐々に実施されている。

これは、根拠となる法規(国際貿易に関わる人民元の試験的な決済管理弁法:中国人民銀行・財政部・商務部・税関総署・国家税務総局・中国銀行業務監督管理委員会公告[2009]第10号)自体は変更せずに、運用で規制緩和を実施しているもの。
具体的には、上記の弁法では、対外送金が認められるのは貨物代金決済だけであるが、非貿易項目の送金実例も出てきている事。
今回の送金は、日本に対する人民元送金(弁法では、香港・マカオ・ASEAN向け送金のみ)。それも、非貿易項目。
二重の意味で、弁法に基づかないオペレーションが、許可された事になる。

日本に人民元送金が認められた(日本で人民元口座開設・換金も認められた)というのは、意義としては大変大きく、人民元のハードカレンシー化への実験が、じわりじわりと進んでいる事が伺える。
勿論、人民元のハードカレンシー化は、人民元相場の大幅な切り上げに繋がりかねず、現段階で急激な規制緩和はしにくいと思う。
ただ、法規を変えずに運用面で実験をし、結果を確かめてから法規改定、というのは、中国がよく採用する方法。
国内流通権を外資に開放する(2004年)前に、保税区を使って、10年近く実験を行った上で開放につなげたのと、基本的には同じ事だと思う。

そんな感じで、人民元自由化の実験が、着実に行われている訳であるが、実験措置の速度は、僕が予想していたよりも、ちょっと速めかな、という印象。
完全自由化が実施されるまでは、施行措置実施後5~10年程度かかるかな、というのが僕の予測であるが、さて、これは早まるであろうか。


一つ補足すると、運用面での規制緩和が実施されているとはいえ、まだ、送金に関する管理は厳格に行われている。
つまり、外貨だとできない受け払いが、人民元だとできるという訳ではない。
この面での緩和は、まず行われないであろう。