自費出版というものは

リアル鬼ごっこを斜め読みした。
内容的に趣味じゃないのと、文章が下手なので、斜め読みになった訳だけど、あとがきを読むと、自費出版で20万部売ったと書いてある。
それはたいしたものだ。
文章うんぬんよりも、感性が受けたという事らしい。
通常の出版ルートであれば、文章の出来で、まずはねられていたであろう(出版は叶わなかったであろう)、とあとがきに書いてあったが、確かにそうだ。
自費出版という特殊なルートだからこそ、出版が叶い、結果としてブレークしたのであろう。

自費出版と言えば、僕も最初の本は、自費出版だ。
当時は、「本を出版した実績があれば、有事の際(会社を辞めた時、会社が合併された時など)に有利だろう」というのが、本を書いた動機なので、売れるかどうかは二の次で、本を作る事自体に目的があった。

つまり、出せればいいや、という感じ。
それが、最初香港の日本語書店(旭屋書店)に置いてもらい、それが思いもよらず売れた為、(ビジネス書なので、数千部の話だが)、日本の流通に乗り、次からは、出版社リスクで本が出せる様になった。
そんな感じで、とんとん拍子に話が運んだのは、幸運と、その時の編集者の頑張りも大きな要素だ。

どの世界でも、飛び込みというのは話が極めてまとまりにくい。
出版業界も会社組織なので、失敗を極端に恐れる(金額の多寡の問題ではない)。
そのため、原稿を持ち込んでも、通常出版してもらえる可能性は殆どない。
その意味で、自費出版でまず出してみて、何らかの方法で流通させてみるというのは、一つの方法だ。

そんな事を考えて、4~5年前に自費出版ビジネスをやろうと考えた。
自分が本を出す過程で、本を製作する手段、香港、日本で流通させる手段を手に入れていたので、それを、有効活用しようとしたのである。
これが、全くうまくいかず、一冊も制作できなかった。

自費出版で本を作るには、工場で製本をするだけで、100万円弱の実費が必要だ。
これに、デザイン・校正・編集が必要なので、その人件費(外注費)を加えれば、本を1000部程度作るのに(本の冊数が増えても、そう費用はかわらないが)、150万円程度が必要となる。
これは、対象となる原稿が、きちっと出来上がっている前提だが、文章が完成していない、つじつまが合わない等の原稿が持ち込まれる場合が多く、その場合は、編集者に多大なマンパワーが要求される。
いくら、流通に回らないと言っても、文章的に問題があるものを出版すれば、会社の信用に関わるので、編集の手間はそれなりにかかる。
それを考えれば、200万円で請負っても、殆どもうけは無い事になり、流通に流す事ができない本であれば、やらない方がよいという判断になる。
ただ、払う側から見れば、200万円のコストは馬鹿にならない。
そんな訳で、高い(依頼者側)vs 安い(作成者側)のギャップが生まれる訳だ。


自費出版は、流通に流れる事は保証されない。
というか、通常は、出来あがった本を、依頼者に渡して終わりである。

図書流通は、極めて保守的な業界なので、本を作るよりも、流通に流す方がはるかに難しい。
リアル鬼ごっこは、執筆者と出版社が、コストを負担し合って完成させ、流通に流した様であるが、自費出版を請け負う会社が、流通に出す手段を持っており、更に、販売が見込める原稿であれば、こんな方法もありだと思う。

子会社のチェイスチャイナは、ビジネスコンテンツの販売を目的とした会社だが、まだ、設立1年と歴史が浅い事もあり、コストがかからないインターネット販売に特化している。
ただ、将来的には紙媒体にも広げるつもりであり、現在の活動は、ライター(ビジネス書を書ける人材)発掘も目的にしている。
この準備段階を経て、将来的には、ビジネス誌・ビジネス書を出版、流通させてみたい。

その際には、まず自費出版から手掛ける事になるのであろう。
ただ、マンパワーの関係もあるので、これをやるのは、数年先の話になろうが・・・

話変わって、近所の書店で買った、「6時間後に君は死ぬ(高野和明)」を読んだ。
映画は前に見ていたのだけれど、本で読むのは初めてだ。
短編集で、続編の「3時間後に僕は死ぬ」なども収められているが、テンポ良い文章で、タイトルとは違って、人情味のある展開がおもしろかった。
なかなか爽やかで良い本であった。