香港ドル10円の時代と15円の時代

マンガで分かる香港投資ガイドの出版まであと一息。
最後に、終わりの言葉などを書いているところ。
香港のガイドブックを書くのは初めてだが、僕自身としても知識の整理・再確認になったので良かったし、執筆中に、中国返還時(僕の赴任時でもある)の事を思い出して、懐かしくなった。
1997年は、返還バブルと呼ばれる頃で、景気もよく物価も高かった。
引き継ぎ期間中に、前任者から言われた、「水野君、HK$1は15円だが、10円だと思え。そうしないと、金は使えないぞ」という、強烈で理不尽な言葉が思い出深い。
前任者は、飲み歩くのが好きで、食事にもこだわりが有った。
つまるところは、消費は善(甲斐性)という意見の持ち主だったので、2週間の引き継ぎ期間に、随分お金を使った。
赴任前には、香港から電話がかかってきて、「経理は交際費枠ないから、引き継ぎ期間中の食事は全部自腹だよ。最初の1~2日はおごってあげるけど、あとは割り勘だから、貯金下してたくさんお金持ってきてね」と言われたものだ。
前任者も僕も若かった。
そして、景気が良かった。
当時は、寿司屋のカウンターに座って日本酒を飲むと一人HK$1,500程度。二次会も同じくらいかかったので、一晩HK$3,000消費した。15円換算だと45,000円で、確かに、使う気にならない。
引き継ぎ期間中は、毎晩数名で会食だったし、2次会では終わらず、3次会、4次会まで行く事もあったので、あっという間にお金が消えて行く。
ふと我に返ると、銀行残高が激減しており、「恐ろしい。香港は魔物が住むのか」と思った。
勿論、香港に慣れるにつれて、生活のコツが分かってきて、無駄遣いも減っていったが。
その後、アジア金融危機、SARS、日本の景気の移り変わり、その他の要因が重なって、今の香港の日本人は、昔ほど、威勢よく金を使わなくなった。
僕自身、「赴任早々飲み歩かずに貯金をしていたら、もっとお金がたまっていただろうな」と思うのは確かだが、あの頃は懐かしい。
若かったからか、香港赴任したてで新鮮だったからか、景気が良かったからか。
おそらく全部であろう。
日本のバブルにも似た思い出である。

因みに、ここ数年で進んだ円高で、本当にHK$が10円になってしまったのには驚いた(最近の揺り戻しで11円程度)。円換算すると、15年前より、却って価格が安くなる。
香港居住16年弱。
自分が香港で過ごしてきた期間でも、色々な変化があったものだ。