時代の流れに緊張感を以て向き合う

ただいま成田空港。JALのラウンジ。
今回の日本滞在は、4泊と短かった。
元々、このタイミングで帰国する予定はなかったのだけど、日本経済研究センターより「研究発表の関係でどうしても月末まで待てない。月初に戻ってきてくれ」との要請有り、これに応じたもの。

日本経済研究センターでは、「視野に入った生産拠点の再構築(トレンドとなるASEANと中国の軸足バランスの調整)」というタイトルで研究発表を行い、4月16日に講演も行う予定。
よって、詳細はそちらを参照して頂きたいのだが・・・
今回の研究テーマとして、最初に頂いたテーマは「視野に入った中国撤退」であったが、計数分析をすると、(少なくとも短中期的には)このタイトルは正しくない。
現在生じているのは、中国拠点を残しながら、軸足バランスをASEANに移していく動きである。
詳細は、昨年のブログ(中国プラスワン・ASEANシフトの現状と分析)を参照願いたいのだが、ジェトロ・NNA・週刊ダイアモンドのアンケート結果で、中国縮小・撤退を挙げたのは共通して7.5%~8%(縮小と撤退を分けているのはジェトロアンケートのみで、そこでは撤退1%、縮小6.5%)。
現状維持が一番多いが、中国から撤退できない理由は、産業集積。
製造原価の6割以上を占める原材料費の合理的管理の観点から、産業集積が進んだ中国からの撤退は困難だ。一方、リスク分散の観点からASEANへの軸足シフト(つまり、リスクバランスの分散化)は必然。
これは、全体的な製造原価がある程度上がってでもやらねばならない課題であり、この様な意思決定よりASEANへの追加投資が進んでいると僕は考えている(勿論、この様な過程で、中長期的に見れば産業集積も変わってくるし、企業の判断も影響を受けよう)。
それを表すのがこの数字(日本ASEANと、中国ASEANの貿易額の推移)。
対ASEAN貿易額(棒グラフ)

対アセアン貿易額(折れ線)2008年からの推移

日本の新規直接投資がASEANに向かったからといって、日本・中国間の貿易が、日本・ASEANに切り替わる訳ではない。
貿易額では、中国・ASEAN間の商流が大きく伸びている(中国・ASEAN間の貿易額は、2009~2013年の5年間で2.6倍になっている)。
2003年時点では、日本・ASEAN間の貿易額と、中国・ASEAN間の貿易額は、ほぼ同じであったが、2013年では中国・ASEAN間の貿易額は、日本・ASEAN間の貿易額の3倍弱になっている。
つまり、中国とASEANの相互依存が強まっているのが現状。そして、中国の日系企業もそのトレンドの重要な要素の一つであると推測している。
つまり、リスクバランス分散の観点より、(過度に中国に依存した軸足を)ASEANに移すものの、現時点では、産業集積の低いASEANでの部材調達には限界がある。
このため、ASEAN生産拠点は、中国からの部材調達が進み、貿易額(特に、中国からASEANへの輸出)を増加させているのであろう。

この様に、経済はすでに、日本・中国、日本・ASEANという単純な構図では語れなくなってきている。
前回書いたように、日本中心の見方ではなく、アジアの中の日本、世界の中の日本、という観点で分析をしないと、経済的には判断を誤る惧れがある(海外拠点をなくして日本での製造に特化し、海外市場への輸出を狙うという判断も、状況によっては当然あり得る。つまりは、地域的な機能分析がより重要性を増してくる)。
この様に、日本企業も、アジア・世界全体でベストプランニングを導き出していく必要が出てくるが、そこには、国が違うだけに、関税、国際物流コスト、税制の違い、外貨管理などの問題が出てくる。
この中で、最適のフォーメーションを構築できた企業が生き残っていく(利益を伸ばしていく)のだろうし、それは僕自身も同じ。
時代の流れに追いつき追い越さないと生き残れない。
緊張感を以て、時代と向き合いたい。
そんなことを思う、新年の昼下がり(在成田空港)。

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