日中間のビジネストラック(ファストトラック)

2020年11月30日から、日中のビジネストラック(中国では、快捷通道)開始というのは、結構大きく報道された。日本の外務省も情報を公開している。こちらを参照下さい。

この程度の情報は、楽に取れるのだが、「中国で宿泊するのは、どの様なホテルなのか」、「どの程度の行動が認められるのか」は、何処にも書かれておらず、全く分からない。そのため、上海・蘇州・広州等の関連政府機関(外事弁公室、商務主管部門)や、日本のビザ発行センターに確認した。
12月1~2日と、制度開始直後のヒアリングだけに、何処に聞いても、まだ、政策が下りてきていないと、確たる回答が得られない中、蘇州の政府機関から「快捷通道実施環境管理の10の衛生学指導意見」を見せてもらった。概要は、以下の通りだ。
① 中国入国後、PCR検査(日本出国前にはPCR・抗体の二種検査だが、入国後はPCRのみ)を行った上で、48時間の集中隔離。検査結果が陰性であり、且つ、同一便全員が陰性の場合、会社で業務が認められる。
② 会社と隔離場所の往復は、会社は専用車・専用運転手の手配が必要(運転手の交代は認められず、同一人員であること⇒ヒアリングでは、運転手も隔離対象との発言)。
③ 会社内には、「専用通路、専用エレベーター、専用執務場所(つまり、他の社員と接触しない環境)」の準備が必要で、他の社員との接触は不可。
④ 会社は、専用ホテルの準備が必要であるが、そのホテルは、一般宿泊客と接触しない環境(専用通路・エレベーター等)を備えてなければいけない。他の部屋に行ってはいけない。つまり、僕が、上海での集中隔離の時に宿泊したようなイメージか。
⑤ 会社は、オフィス付近に隔離者専用場所を設営し、そこで食事する。若しくは、デリバリーを取る。食事中の他人との接触と会話は禁止。
この通りに運営された場合、結局、イメージは、隔離場所と執務場所の往復であり、会社内でも他人との接触ができない事になる。ヒアリングしている過程で、政府側は、独立した不動産を持っている工場・宿舎をイメージしている事が分かった。少なくとも、共用ビルにオフィスが入っている会社は、この制度の適用は無理だ。
そうなると、TV会議が発達した昨今、わざわざ行く価値が有るのは、サンプル商品などの検査を、その場でやるような技術者の方というイメージであろうか。

ビジネストラックというと、短期訪問に際しての隔離免除というイメージを持たれるが、日本の外務省のHPでも、「隔離期間中(日本の場合は、自宅待機要請期間中)に、一定範囲の活動を認める制度」と記載しており、飽くまでも、隔離の延長線上の制度、というのが、日中双方の政府機関の立ち位置だ。
そうなると、特に、病気を抑え込んでいる自信がある中国は、この姿勢を崩したくないのは確実で、積極的ではないのがうかがえる。つまり、「来たいなら、制度に基づき、しっかり隔離されろ」というのが立ち位置と思われ、人員の往来には、まだ時間がかかるなあという印象。

因みに、その2日後(12月4日)に、広州市外事弁公室・広州市黄埔区外事弁公室に状況確認した時は、もう少し、具体的な話が聞けた。それは、「 広州市は、既に、ビジネストラック(快捷通道)作業指南・案を作成したが、外部公開していない」という点、「ビジネストラック制度の招聘状は、(外事弁公室ではなく)商務局が発行する。発行されるのはKJビザ(快捷の略と思われる)。ただ、この申請は、重要プロジェクトが前提で、緊迫した状況に限定されるので、非常にハードルは高い」という点。また、「防疫管理部門が、今後、条件を満たすアパート・ホテルなどのリストを作成する可能性がある(現時点ではリストは無い)」という点だ。
何れにしても、日中間のビジネストラックは、ハードルが高く、適用は、極めて難しい。バラ色の想定は描けないのが、現時点での状況だ。

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