経験して分かる事(ビジネス本の出版は、全く儲けにはならない)

最近、本を出版してないねと、何人の方から言われた。過去に、改定を含めると40冊くらい本を出したかと思うのですが、書籍という意味では最後の出版は2022年9月の「中国企業所得税の制度と実務」。ただ、PDF版の改定であれば、昨年まで出しているという状況です。
最初の本を出版したのは2002年(中国ビジネス投資Q&A)。実は自費出版で、売れなくてもいいや、という記念出版だったのが、有難いことに香港・中国本土で売れてしまい、日本の図書流通に乗りました。僕の出版との付き合いは、そこから始まります。どちらかというと、苦難の歴史ですが・・・

ビジネス書は全くもうからない。5000部売れれば、「よく売れたね」といわれる世界で、5000部売れて、印税は100~150万円程度です。これは、出版社がリスクを取って、しっかり払ってくれる場合。中国書籍が売れている時は、こんな感じで、それなりの収入になりましたが、中国進出ブームが落ち着いてからは、10~20万円などという印税もざらとなり、更に出版業界自体が思わしくないので、印税の支払いが滞りがちになりました。
僕の本は、主にキョーハンブックスから出していたのですが、ここは、全く口を挟まず、図書コードだけを使わせてくれました。好きなように本を書きたい(出版社の指示で、不本意な内容を書くことはしたくない)僕には有難いことでしたが、制作費用は全てこちら持ちです。
メリットは、地図共販の子会社だったので、書店にネットワークが有り、本を平積みで手配してくれたりできたことです。その為、キョーハンブックスの経営不振で販売代金が入らなくても、宣伝費用と割り切ればいいやという意識でした。
ただ、その後キョーハンブックスが倒産し、書籍を出版する方法を模索せざるを得なくなりました。

日本の図書業界は閉鎖的で、日販、トーハンなどの寡占状態。彼らを通さないと書店には本が並びません。以前、キョーハンの社長が、「日本の出版は、表面上は外資規制はないけど、外資で出版社作っても、卸が扱わないですよ。だから書店に本は流せない。これが日本流の外資規制です」と笑っていました。そんな感じの閉鎖社会です。
キョーハンブックス倒産後は、子会社のチェイスネクストが出版コードを取って、構成・製本まで行うようになりましたが、卸売業者との付き合いがないので、書店には並べられません。
一応、過去の実績を評価されて、八重洲ブックショップ、新宿紀伊国屋など、4~5か所の書店は個別引き取りに応じてくれましたが、やはり面倒なようで、1~2年後には、対応不可になってしまいました。現在では、Amazonのみで販売しています。
Amazonは有難く、図書流通の閉鎖社会とは無縁で、チェイスの書籍も扱ってくれます。更に、卸売業者経由で流していた時は、製本費用(デザイン・印刷など100万円程度)をこちらで負担した上で、運よく入ってきても、販売代金の10%程度。一方、Amazonで売ると、売上代金の60%がすぐに支払われます。全く以て、黒船革命、規制破壊という感じ。
その結果、Amazonでは、500冊程度が採算分岐点(卸売経由であれば、3000冊が分岐点)。

ただ、見方を変えてみると、PDFであれば、制作費用は10~20万円程度。1冊1万円程度で売れるので、紙の書籍に比べれば圧倒的に利益が出ます。更に、紙の書籍を外国で流すのは困難(物理的に、本を運ばねばならん。中国だと図書公司を通さねばならんなど)ですが、PDFなら一瞬で解決します。
その為、経営者目線では、紙の本は出さずにPDFにしたいのが本音です。
ただ、紙の本は、宣伝の意味で出した方が良い。このせめぎ合いという感じです。

夢の無い話で恐縮ですが、ほんのひとつまみの流行作家を除けば、本の執筆・作成は苦行でしかありません。ただ、書き終わった時の一瞬の快感は、マラソンを走り切った感覚に似ているのではないでしょうか。その一瞬を支えに書いています。

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