7.4%(年間目標値7.5%とのかい離0.1%)という数字が目に入った時の、僕の直観的な印象は、「高いな」というものであったが、それは、(2013年の数字だが)日本(1%台)、香港・韓国・台湾・豪州(2%台)、ベトナム・インドネシア(5%台)と比較したもの。
世界2位の規模のGDPを持つ国が、7%代の伸びを維持しているという事の意義は大きい。
勿論、それ故に、世界経済に与える影響も大きく、景気の減退には神経質にならざるを得ないのは確かであるが。
ともあれ、市場選定を行う際には、市場の成長性は大きなポイントになるため、報道の誘導的な記載は参考程度にとどめ、数字をしっかりと把握する必要がある。
因みに、最近、中国・ASEAN投資環境に関する文章を書く機会が多くなり、JETROのHPをよく参照する。
JETROを持ち上げる訳ではないが、以下のレポートには、知りたい数字が非常によくまとめられており、こんな情報を無料で提供するのは、たいしたものだと感心する。
アジア・オセアニア・欧州の主要都市における投資コスト比較
また、6月9日に、JETROが香港で、中国の日系企業実態調査(2013年)に関する講演を開くのだが、それに際して、僕にも簡単なスピーチをしてほしいという依頼が有ったので、レポート(中国の日系企業実態調査・2013年))を眺めていた。
これも、価値のある調査報告である。
これによると、調査企業1,411社(有効回答940社)の数字は以下の通りの様である。
① 黒字企業
大企業67.7%(均衡を加えれば80.1%)
中小企業48%(均衡を加えれば74.9%)
つまり、赤字企業は、大企業19.9%・中小企業25.1%
尚、製造業と非製造業別では、業種によってばらつきはあるものの、全体を纏めてみれば、黒字・赤字比率に大きな違い無し(製造業の赤字比率21.1%・非製造業の赤字比率22.9%)
② 今後の事業展開
今後、1~2年の事業展開方針に付いては、拡大する(54.2%)、現状維持(39.5%)、縮小(5.0%)、第三国への移転・撤退(1.2%)となっている。
以上の通り、拡大方針が最も多く、現状維持を加えると93.7%
縮小・撤退・第三国への移転方針の合計は、前年度比0.5%の増加。
縮小・撤退方針の理由のトップは、コストの上昇。
この数字を見た印象は、やはり報道とはずいぶん違う。
黒字比率が80.1%(大企業・均衡を加えた数字)であり、今後、1~2年での拡大方針が54.2%(現状維持を加えると93.7%)という数字は、ここ1~2年の報道とは真逆の印象を与える。
一言でいうと、かなり良い数字である。
企業運営には、リスクヘッジは必要であるし、また、中国にポリティカルリスク(日中関係を始めとして)が存在する事は確かであるため、リスク分散の形で中国プラスワンというのは、極めて妥当な判断だと思う。
また、限りのある資金、社内の人的資源の配分を考えると、伸びしろのある地域(新興国等)に振り分けるのも妥当である。
ただ、企業利益の確保の為に、適切な現状認識は必要であり、方針決定のためには、計数に基づいた実態把握が、極めて重要である。