日本の寒さに震えながら香港に到着すると、いきなり18度。
すっかり温度感が狂ってしまう。
飛行機の中では、来週(19日)香港で開く講演会のレジュメを作っていた。
1万5千字程度のレジュメになったので、なかなか書くのに時間を要し、あっさり5時間経ってしまった。
19日のセミナーは2部構成で、一部は中国における非居住者課税の強化に付いて。
二部は、香港から見た中国ビジネス再編成のポイント。
第二部の内容は、「統括会社としての香港の位置付け」、「来料独資転換」、「香港が関係する中国事業再構成(出資持分譲渡による)の注意点」というもの。
レジュメ作りの絡みで、考えをまとめていると、2009年は、香港にとって有利な制度改正が行われている事が分かる。
例示してみると、
1.日本の税制変更
まずは、日本のタックスヘイブン対策税制改定(子会社からの配当を合算対象から除外)と、受取配当金課税制度の変更(子会社からの受取配当金の95%を非課税とする一方、外国税額控除の適用を制限)。
これにより、香港での持株会社設立がやりやすくなり、且つ、香港経由の投資の方が、日本からの対中直接投資より最終的な税コストが有利になる可能性がでてきた(香港・中国本土の租税協定の関係上)。
2.中国の税制改定
特定の組織変更に際して、特殊性税務処理(組織変更時の課税を繰り延べる処理)が認められた。
よって、日本⇒香港、日本⇒中国という出資を、日本⇒香港⇒中国という間接出資形態にする場合、一定要件を満たせば持分譲渡時の課税が免除(繰り延べ)される。
3.日本の税制変更
2009年12月に、再度、タックスヘイブン税制が改定。
ポイントを列記すると以下の通り。
① トリガー税率の引き下げ(25%⇒20%)。
② 保有出資比率割合の緩和(5%⇒10%)。
③ 一定の出資比率を有する事を条件に課税免除される配当の扱いの変更(課税率考慮の対象に)。
④ 地域統括会社の場合は、持株会社と見なさない事となった。
⑤ 販売業である地域統括会社と、被統括会社の取引は、関連者取引と見なさない事となった。
⑥ 実態はあるものの、非関連者基準を満たさない場合の合算課税における、人件費10%控除制度の打ち切り。
⑦ 適用除外要件を満たした場合でも、一定の所得は合算対象に。
対象となるのは、出資比率10%未満の会社からの配当・株式譲渡所得、債権利子所得、工業所有権・著作権(当該外国子会社が開発した場合を除く)、船舶・航空リース所得。
香港企業にとって重要なのは、④と⑤で、今まで、持株会社という形態であれば、自動的に実態を否定されていたものが、実態のある地域統括会社であれば、これから除外される事となった。
また、⑤に付いては、進料加工を行う企業にとって大きい。
現時点では、卸売業の場合、売上、若しくは、仕入の50%超を非関連者と行っていないと実態を否定されているが、地域統括会社との売買は、関連者取引と見なされない事となった。
4.人民元対外決済の試行措置
2009年7月から開始された、人民元決済の試行措置は、現時点では、影響が小さいが(意図的に、大きな影響が出ないようにコントロールしているのではないかと考えている)、適用対象が拡大し、何より、香港での人民元調達が可能となれば、一気に重要性を増す。
香港の、中国の人民元金融センターとしての位置付け向上、更には、香港に地域統括会社を設立した上で、人民元決済センターとする事の可能性が拡大する。
この様な変更は、今後、2~3年で、確実に出てくると思う。
その意味では、人民元の対外決済は、これからが重要だ。
上記の理由で、香港に地域統括会社(アジアを含む)を設立する必然性が、この1年で拡大したような気がする。
数年前までは、コストが相対的に高く、且つ、日本の税制を考慮した上でのトータルコストを判定すると、却って不利になるケースが多かったので、僕としては香港の活用を全面的に肯定できない面もあった。
これが、随分変わってきた気がする。
対中ビジネス拠点としての香港の重要性が増すのは、これからと言えるのではなかろうか。