部下の思い出と今

2008年の起業の時、5人の主要な部下が付いてきてくれたのが、会社を順調に立ち上げる事ができた大きな要因の一つである。
特に、杉山さん(現日本所長)、胡さん(現上海総経理)が、僕の退職日に着いていくと宣言してくれ、麦さん(現広州総経理)が1ヶ月以内に身の振り方を決めてくれた事で、大勢が決した感があった。

この時、僕の中で、感謝と反省があった。
感謝は当然であるが、反省というのは、以前の会社の人事政策の間違いに付いてである。
当時の僕は、即戦力を雇用して、一刻も早く事業を拡大しようと躍起になっており、年間数名の社員を高給で採用していた。
結果として、昔から文句も言わずに僕と働いている社員より、新しく入社する人間の方が、給与がはるかに高くなるという状況が生じ、これが不満につながっていた訳だ。
また、人事採用にあたり、自己主張や気の強い性格を、やる気と錯覚する事も多かった。
ただ、自己主張がない人間の方が、結果、粘り強く働き、功績を残るケースが多かったのである。

勿論、過去にも1~2年の就業期間で、キラリと光る実績を残してくれた社員もいて、それに対する感謝はあるが、起業時に、「この人間に抜けられたら困る」という部下が残ってくれた事で、今までの考えを改めた。
「一生(とまでは行かなくても、数十年)一緒に働いてくれる人間」、「性格が穏当な人間」を採用する事、また、僕や総経理クラスの社員に負担がかかっても、若手を採用して、数年がかりでじっくり育てる事(焦らない)を方針とする様になった。
そして、会社に長くいてもらうための環境作りも必要だと認識している。

おかげで、今の会社の雰囲気は、前とは見違えるようだし、起業約4年が経過して、若手社員も成長してきている。
これで、僕も少し楽ができるようになってきた。

4年前、退職に際して、前の会社を売ってほしいと交渉していた。
これが認められなかった時は、かなりショックを受け、憤慨もしたが、今となってみると、以前の会社を買えなかった事が、起業がスムーズにいった最大の要因かもしれない。
買えていたら、過去の僕の失敗から生じた負の遺物も、そのまま引き継がねばならなかったからだ。
その意味でも、本当に運が良かったと感謝している。
同時に、経営にも経験と訓練が必要だというのがよくわかり、経営者としては、少し成長できた気もする。