撤退報道に付いて

日中関係が緊迫し、精神的にもプレッシャーのかかる約2ヶ月であった。
時節柄、撤退がらみの取材依頼は多く、雑誌、新聞、その他の取材に答え、原稿も執筆した。
ただ、撤退に関するサポートをしている場面を取材させて欲しいというTV局のご依頼は、2件お断りさせて頂いた。
やはり、撤退に関わる場面を放送するというのは、クライアント様のためにならないと思うし、僕としては、それ(取材)の可否を打診する事も避けるべきだと考えている。
僕のコメントだけなら、まったく問題ないのだが。
では、実際、僕の会社で撤退関連のご依頼は多いのかと言えば、この2ヶ月間で頂いた案件は5件。一方、新規設立が6件なので、確かに撤退関連のご相談は、平常より多いが、撤退がトレンドになっている訳ではない。
更に、撤退の5件も、確定は2件で、他は方針の決定に関わる調査の段階なので、具体的なアクションには至らない可能性が高かろう。
企業は利益を上げる事が絶対条件であり、絶えず、その方法を模索しているものなのである。


話変わって、先週の日本で、撤退がらみのご相談を受けた時、報道が若干歪んでいる(誇張されている)のを感じた。
中国からの撤退では、政府機関から嫌がらせをされ、従業員からは暴力行為が有り、残余金の拐取も難しいのではないか、という認識ができつつある。
ただ、僕自身は、過去15年程度で、何十件も撤退のお手伝いをさせて頂いたが(更には、自分が当事者となった撤退も経験あり)、基本的には法律に基づいて作業は進められる。
勿論、中外合弁企業の場合は、経営期限満了前の撤退は、董事会の満場一致の決議が必要なため、意思決定に困難が生じたり、損失の分配で衝突が起きる事もある。
更には、従業員解雇では、感情的なトラブルが発生する事もある。
これは、人間の心の問題なので、中国以外でも同じ事であろう。
では、撤退に関して、どの様な誤解が有り、事実はどの様なものか、という点に付いては、次回記載しよう。
これから、上海行きの飛行機に搭乗だ。