中国プラスワン・ASEANシフトの現状と分析

以前、ベトナムに子会社を作る理由という記事で、以下の様な内容を記載した。
・中国の調達市場を活用する場合、中国活用のメリットは依然として大きい。
これは、物価自体は上昇しているが、産業集積により調達コストを下げられる(調達市 場の活用)、GDP世界2位の市場規模(日本の約2倍)を活用できる(販売市場の活用)という理由。
・一方、単純加工貿易モデル(輸入原材料を使用し、製品を輸出するモデル)の場合、中国の市場を活用しないため、中国の物価の上昇が採算に悪影響を及ぼし、生産拠点の見直しを迫られる状況も想定される。
ベトナムに子会社を設立する理由は、この様な動き(加工貿易企業のASEANシフト) に対応するためである。

上記は、中国プラスワンやASEANシフトに関する僕の考え方に基づくものであるので、計数根拠を踏まえて、もう少し具体的に解説したいと思う。

1.製造原価の中身
中国の人件費、コストが安いとは言えなくなっている点は、現場感覚も踏まえて既に記載した。
ただ、製造コスト、というと人件費がクローズアップされがちであり、これが重要な指標である事に異論はないが、製造原価に占める人件費の割合は18.5%に過ぎない(ジェトロ「在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年)」。調査対象2,194社)。それに比して、原材料費は60.2%、その他の原価は21.3%である。
注:
当該数値は、アジア・オセアニアの平均値。
中国の場合は18.7%が人件費。60.2%が原材料費。

人件費の管理が経営における重要課題の一つである事は確かだが、原価の中で一番大きなウェイトを占めるのは原材料費である。
製造拠点の移転により、人件費を数10%節減できても、原材料調達コストの上昇、若しくは、リードタイムの長期化が生じれば、製造コストの上昇、企業の安定稼働の阻害という問題につながり、大きなマイナスとなる。
結局、製造拠点の設立地は、サプライチェーンを前提とせざるを得ず(部材調達コストや調達の容易さを一義的に考えざるを得ない)、それを踏まえた上での人件費、その他コスト管理という事になる。
僕がよく、「部材がなければ製品は作れない」と発言するのは、そういう意味だ。

日本の製造原価を100とした場合の現地製造コストは、中国がタイ、インドネシア、インドよりも安いという結果となっているが、これは産業集積によるものである。
☆ ジェトロ2014年調査(カッコ内は2013年の計数)
日本の製造原価を100とした場合の現地製造原価
タイ 81(79.5)、インド 78.5(78.5)、インドネシア 78.5(76.5)、 中国 77.8(76.4)、マレーシア 77.2(78.7)、
ベトナム 73.2(73.2)、フィリピン71.8(71.5)

つまり、人件費、その他のコストの高さを産業集積が吸収している訳だが、それは現地調達率の高さを見れば分かる。
在アジア・オセアニア日系企業実態調査(ジェトロ)では、現地調達率の平均は48%であるのに対し、中国は64.2%と非常に高く、これが輸送費・関税等の税コスト・リードタイムの削減に貢献している。
因みに、その他の国の現地調達率は、以下の通り。
タイ(52.7%)、インド(43.4%)、マレーシア(42.3%)、インドネシア(40.8%)、 ベトナム(32.2%)、フィリピン(27.9%)

尚、同ジェトロ調査(2014年)で、経営上の問題点として、部材現地調達の難しさを挙げた企業は、カンボジア79%、ベトナム70.3%、インドネシア61.1%、フィリピン58.2%、インド56.7%、ミャンマー55.6%となっている(中国は33.4%)。

勿論、産業集積は時間の経過とともに変わっていくので、10年後も同じ結果が保証できる訳ではないが、少なくとも短期・中期的にはこの様な傾向は維持される筈である。
一方、単純加工貿易(原材料完全輸入・製品完全輸出)を前提とすれば、調達市場も販売市場も活用しない(国内部材を使わず、中国内で販売もしない)訳なので、当然、結果は変わってくる。
つまり、中国のコスト上昇が、直接的に製造原価に響くので、安いコストを求めて移転を検討せざるを得なくなる。
ただ、加工貿易と言っても、調達市場を活用するものとしないものがある。
華南地域は(世界的に見ても)電子産業の一大集積地になっており、ここでは、包括加工委託形式(外国企業が中国企業に包括的な加工委託を行う形式)である来料加工であっても、転廠(加工貿易企業間の保税移送)の形で調達市場を活用している。
この様な場合、当該加工貿易企業の生産・供給活動が、サプライチェーンに組み込まれているので、簡単には移転できなくなる。
この点は、2-③で解説する。

2.中国プラスワンとアセアンシフトの状況
財務省の国際収支統計を見ると、日本から中国への直接投資は2012年をピークに減少している。

2012年の対中投資金額は、対ASEAN合計金額とほぼ同じ水準であるのに対して、2013年は、対ASEAN向けの投資が、前年度より大きく増加した事により、対ASEAN投資の合計が、対中投資の2.6倍となっている。

① 対中投資の減退とASEAN投資拡大の理由
日本企業の対中投資が減退の要因として、僕自身は、以下の理由を考えている。
1)中国向けの生産型企業に対する投資は既に成熟しており、新規投資が前年比で拡大する状況ではなくなっている(出るところは既に出ている)。
2)中国が製造拠点から市場に転換している(世界の工場から世界の市場に、位置付けが急速に転換している)。
3)政治リスクを考慮すると、高額の設備投資伴う生産型企業の新規投資がやり難い環境となっている(意思決定がしにくい)。
4)税制、投資制度の変更により、日本からの直接投資ではなく、中国国内での再投資(既に、中国に作った外資企業からの投資)が増加している。

1)・2)に付いてであるが、日本銀行のサイトから対中直接投資金額(製造・非製造が分かれている)をピックアップすると、以下の通りとなっている(億円単位)。
2013年 製造業5,507 非製造業3,362 合計8,870 前年比△18%
2012年 製造業7,334 非製造業3,425 合計10,75 9前年比+7%
2011年 製造業6,948 非製造業3,097 合計10,046 前年比+60%
2010年 製造業3,896 非製造業2,388 合計6,284

この数字を見ても分かる通り、2013年に非製造業の直接投資は微減に留まっているが、製造業の直接投資は顕著に落ち込んでいる。

3)、4)に付いてであるが、最近、「既に設立した外資生産型企業(中国現法)より、中国内投資の形で生産型企業を新設したい」というご相談(国内再投資形式による新規設立)が多い。
中国内での再投資と言えば、投資性公司(傘型会社)が経営許可上、正規に再投資行為を認められたものだが、それ以外の外資企業でも、フリーキャッシュがあれば、国内投資を行い、子会社(日本の親会社から見れば孫会社)を設立する事ができる。
フリーキャッシュというのは、経常項目口座の中の資金であり、用途が経営範囲内の使用に限定されないものをいう(資本金口座・借入金口座内の資金は、経営範囲内の使用に限定され、投資・委託貸付などには使用できない)。
また、税制や投資制度の変更も、この投資形態を後押ししている。
というのは、投資性公司以外の外資企業が行う国内投資は、内国出資として扱われ、設立された会社は(他に25%以上の外国出資が無い限りは)内資企業となる。
2008年1月1日に企業所得税法が改定される前は、外資企業の方が内資企業に比べて、税制上は圧倒的に有利であり、内資企業となるデメリットが大きかったが、この差が無くなった。
更に、外国(日本)への配当は10%の企業所得税が源泉徴収されるのに対し、中国内の配当は非課税であるため、この面の税コストも軽減される。
この様な制度変更により、既存の外資企業からの投資が有効な選択肢になってきているし、更に、この形式であれば、中国内の資金の有効活用であり、日本からのフレッシュマネー投下に比べて抵抗感が少ない。
注;
上記の様なメリットはあるが、内資企業の場合は、国外からの借入枠が無い(投注差の範囲での外債登記枠が付与されない)、奨励分類企業の免税輸入制度が活用できない、というデメリットもあるので、この点を考慮の上、決定を行う必要がある。

② 中国プラスワン、ASEANシフトの現状
上記(①)の通り、製造業に関しては、日本企業の対外直接投資の対象国が、中国からASEANにシフトする傾向が顕著となっている。
但し、このシフトは日本からのASEANに対する新規投資の計数であり、中国撤退を伴うもの(中国からASEANへの拠点移転)には直結しない。
現在起きているのは、「中国の製造拠点を維持しつつ、リスク分散・コスト削減の一環として、ASEANの拠点を新規構築、若しくは、中国製造のウェイトを、既存のASEAN拠点に移していく(軸足バランスの変更)」というのが大部分と推測している。
これは、ジェトロの在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年)における、「在中国の日系企業の今後1~2年の事業展開方向性(有効回答数970社)」の回答が、拡大46.5%、現状維持46%、縮小6.5%、他国への移転1%という結果となっている事からも伺える。
<参考>他社調査
1)NNA調査(2014年9月・有効回答163社)・今後三年の中国事業方針
拡大41.1%、現状維持…50.9%、縮小・撤退…8%
2)週刊ダイヤモンド調査(2014年5月24日・有効回答上場企業277社)・2014年の事 業方針(2013年比)
拠点数;増加…12% 現状維持…80% 減少…8%

やはり、現在の中国の厚いサプライチェーンに組み込まれた状況で、他国への完全移転は難しい。とはいえ、リスク分散は必須であり、これらを考慮して、中国オペレーションを維持しながら、生産割合をASEANに移していく方針を取ろうとしている企業は多い。
僕自身「全世界の生産の8~9割を中国に依存している現状を、数年かけて5~6割に下げたい」という様なご相談をよく受ける。
つまり、中国オペレーションは縮小するものの、それは「中国偏重の状況を、適正なリスクバランスに持っていく」動きであり、企業のリスク対策(リスク分散)の観点からすると、極めて妥当な選択である。「有るべき流れ」の一環と捉えて差し支えなかろう。
この様な動きは、中国・ASEAN間の商流拡大として計数にも現れる。
つまり、シフト先となるASEAN各国では、部材調達に困難が生じる場合が多く、これが中国⇔ASEAN間の商流の拡大(中国よりの部材調達)に結びつくからだ。
この点は、④で解説する。

ともあれ、先のジェトロ・アンケートでは、今後の中国活動方針として、「拡大」を挙げた企業は中国全体で46.5%であったが、産業別に見ると、卸売・小売の場合は60%と比率が高い(卸売り・小売業の場合、拡大と現状維持を合算すると96.4%に及ぶ)。
ここからも、中国は「市場」という位置づけに変わってきている状況が伺える。

③ 加工貿易政策とASEANシフト
ASEANシフトの主要な動きの一つとなっている(そして、僕がベトナム法人開設を決断した主要因となっている)加工貿易に付いて、見ていきたい。
加工貿易とは、原材料を保税輸入し、加工後の製品を輸出する形態(製品輸出を前提として、原材料を保税輸入する形態)を指す。
この様な形態は、市場を活用しない様に思われるが、実際は、そう断定する事はできない。つまり、加工貿易には転廠(深加工結転)という制度が有るが、これを活用すれば、保税状態のまま、半製品が加工貿易工場間を移送される。
つまり、加工貿易でありながら調達市場を活用できる訳であり、特に、加工貿易の集積地である広東省では、この様な形式で、保税部材のサプライチェーンが構成されている。
この様なサプライチェーンに組み込まれた産業(電子・電機を中心とした産業)の場合、ASEAN完全移転により部材の調達に支障をきたす可能性が高いため、中国の撤収、ASEANへの移転という選択はしにくい(②で解説した軸足シフトは有りうる)。

一方、この様なサプライチェーンに組み込まれていない産業、中国の国内市場(販売市場)に向いていない企業であれば、より安価なコストを求めて、中国外に完全移転する事は有りうる。

それ以外に、特定の加工貿易企業に移転を決断せざるを得ない状況を作り出しているのが、2008年より広東省で実施されている、来料加工廠独資転換の動きである。
来料加工廠についての詳細説明は割愛するが、非法人型の組み立て加工場であり、資金調達・調達販売等の重要な機能は、香港に集約する保税加工貿易形態である。
この形態は、税コストの削減が可能であり(関税・増値税が課税されない)、中国内の組織(=来料加工廠)はコストカンパニー運営が可能という利便性があるため、1980~90年代に広東省の産業集積構築に大きく寄与した制度である。
ただ、付加価値の低さと、コンプライアンス上の理由により、税関総署・商務部等の政府機関は段階的な制度打ち切り方針を出しており、広東省は、2012年をその転換完了の目標期限としていた(期限完了後も、営業期限満了までは存続可能)。
結果として、来料加工廠は、経営期限の範囲内に、外資企業転換(法人転換)し、加工貿易形態も、来料加工から進料加工(売買形式の加工貿易であり、中国企業の機能が来料加工に比べて重い)に切り替えが求められる。
ただ、ここで、以下の様な問題が生じる企業がある。

1)外資企業転換に伴う資金投下が決定できない。
2)加工形態が進料加工に馴染まない。

1)の場合。
これは、中国での加工に関する採算が厳しくなってきており、現地法人転換のための資金投下に踏み切れない場合である。
この様な場合、中国撤退を余儀なくされる。
若しくは、撤退はしないものの、加工自体は他社に外注。自社は販売会社を設立して、技術指導と外注工場が生産した製品の取り扱いを行う形態に転換する事を選択する(製造業から流通業への転換)事例が少なからず存在する。

2)の場合。
これは、来料加工時代の加工実態が、「塗装、検査」等の様に、輸入原材料と製品のHSコードが同じ、若しくは、付加価値が殆どつかない様な場合である。
この場合、原材料の輸入と製品の輸出契約を基に加工貿易許可を取る進料加工には転換しにくい。
深圳は、独資転換後は来料を認めない方針であり(東莞は来料独資転換の場合に限定して、外資企業にも来料を容認)、来料加工がオペレーションの前提となる様な場合は、中国内陸部(来料加工が受け入れられる地域)、若しくは、ASEANに移転せざるを得ない。
この様に、広東省における来料加工廠の規制が、一部の企業のASEAN移転を後押ししている面はあると言えよう。

尚、加工貿易企業には限定されないが、環境要求の厳格化を理由にシフトを検討する企業もある。
中国の環境要求が年々厳格化しており、沿海部に関していえば、ASEANより環境要件が厳しいケースも多い。
環境汚染につながる産業の新設が困難である事、既存の企業も、将来的に、特定の設備(環境保全設備)が整った工業団地に移転が求められる不安がある事が、ASEAN移転の理由になる場合もある。
更に、中国の販売市場に向いている場合でも、中国には高級品を投入する事を方針付け、中国生産品は輸出専用、日本製造品は中国向け、と位置付けている場合がある。
ASEANシフトの理由は、コスト管理・リスク分散が大きな動機となっているのは確かだと思うが、企業の状況や戦略は、この様に千差万別である。

④ 中国・アセアンの商流拡大
「珠江デルタ進出日系企業の対ASEAN事業戦略(2014年7月)・拡大する部材供給、生産面で強まる相互補完関係(伊藤博敏・森路未央両氏執筆)」によれば、2013年の中国とASEANの貿易は前年度10.8%の増加。これを、広東省(深圳・黄浦・広州・拱北、江門港の通関合計)とASEANに限定すれば、2013年は前年度比18.08%の増加となっている。
広東省とASEANの商流を輸出入に分けると、広東省からASEANへの2013年の輸出は、前年比27.37%の増加。一方、同輸入は8.0%の増加にとどまっている。更には、広東省からASEANへの輸出品目の34.8%をHSコード84・85番台(電気・機械類及びその部材)が占めている(珠江デルタ進出日系企業の対ASEAN事業戦略)。
これらの計数からも、広東省の集積産業である電子機器関連のASEANシフト(それも、中国プラスワン形式での軸足移動)と、それに伴う中国からASEANへの部材供給増加の状況を垣間見る事ができる。

何れにしても、中国とASEANの貿易額は、2008年から2013年の5年間で約2倍に拡大している(World Trade Atlasを元にジェトロが取り纏め)。これは、中国・ASEANのFTA(関税免除措置)の要素も大きかろうが、中国企業のASEAN進出や、上述した産業の軸足シフトが総合的に絡み合った結果ではないかと推測している。
この様に、中国とASEANは相互依存を深めているし、中国・ASEANの日系企業もそのうねりの中に組み込まれている(若しくは、その動きを形作っている一つの要素となっている)。
日本と中国、日本とASEANという単一な切り口だけでは、方向性を見誤る可能性がある。例えば、日本の対中投資、対中貿易が減少すると、日本の観点のみで見ると、中国のポジション低下と考えてしまうが、アジア全体でみると、逆に、中国は上記の通り存在感を増している。
更に、この様な存在感を形作っている構成要素の重要なパーツが、中国の日系企業であるのも事実である。
産業構造は、国際的に複雑さを増している。
世界の中の中国、世界の中のASEAN、そして、世界の中の日本という観点で現状をとらえて戦略を立てる事が、今後、ますます重要になっていく。

3.まとめ
製造業における中国プラスワンの動き、ASEANシフトの動きは、日本企業にとって、時代の大きな流れとなっている。
但し、それは中国撤退⇒ASEAN移転ではなく、中国とASEAN併存を前提とした、軸足のASEANシフト(過度の中国依存の適正化)という面が強い。
一方、販売業に付いては、中国市場を狙う動きは健在である。
この様な製造、販売に分かれた動きは、今後、しばらく継続していくであろう。
そして、産業集積と商流は、時間とともに変容する。
僕はベトナムに最初のASEAN拠点を作り、その後、他地域展開も検討を開始しているが、あくまでも主業務は中国であり、ASEANはその補完機能の位置付けだ。
つまり、中国とASEANの双方に拠点を持つ事で、(クライアント企業様の目的が、軸足シフトであれ拠点移転であれ)既存拠点と進出先の双方で、一貫したサービス提供ができると考えたためである。
その意味では、中国を主業務と位置付けた上でのASEAN展開であり、僕自身は中国プラスワンを志向していると言えようか。
これは、僕自身のノウハウの問題もあるのだが。

最後に、ジェトロ「在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年)」より、アジア・オセアニア地域の日系企業の営業状況(営業利益の状況)をピックアップする。
黒字(黒字+均衡)と赤字に分けると、全体平均(調査対象数4,711社)では、黒字78.6%・赤字21.3%となっている。
中国(964社)の黒字比率は78.7%と平均的な数字。
その他の国(以下、黒字比率)は、フィリピン(139社)87%、タイ(641社)81.3%、 マレーシア(286社)84.3%、ベトナム(454社)75.1%、インドネシア(460社)75.9%、 インド(417社)67.9%、バングラディッシュ(38社)55.3%、カンボジア(39社)53.8%、 ラオス(13社)30.8%、ミャンマー(50社)32%

バングラ、カンボジア、ラオス、ミャンマーは調査対象企業数がまだ少ない。
また、ラオス、ミャンマーは、稼働間が無い企業が多いためか(推測)採算路線にまだ乗っていない様子がうかがえる。
ただ、全体的に厳しい環境の中、日系企業は頑張っている、と言ってもよい数字ではなかろうか。

ビジネス環境は、絶えず姿を変えていく。
2014年12月12日の日経新聞朝刊第1面に、「東南アジアの賃金中国に迫る。進出企業の負担増」という記事が出ており、2010年比の賃金上昇が、インドネシア2.6倍、ベトナム2.3倍、タイ46%という数字が紹介されていた。
中国からのシフト候補先では、年々2桁の人件費上昇を続ける場合が多く(中国は1桁の上昇で推移している)、人件費削減を目的にASEANシフトをしても、逆転現象が起こり得る。
一般的に、発展途上過程にある国ほど物価の上昇率は高いため、企業はこのイタチごっこの中で、結果を出していかねばならない。
また、経済が成熟していない地域に行けば、人件費は下がっても、インフラ(ハード面・ソフト面共に)未整備により、企業の安定稼働に困難が伴う場合もある。
僕自身、ベトナム法人設立手続に際して、政府機関の対応の悪さ(中国と比べてもかなり悪い)に辟易している状況だが、更に、途上国に行けば、困難の度合いは増すであろう。

成功モデルを構築しても、数年後には変更を余儀なくされる。
ビジネスモデル・商流も、世界地図を前に、どこで製造し、どこで保管し、どこで売るかという地域戦略・機能分析を基として構築していかねばならない。
世界観(勿論、日本もその中の一部)を持った戦略が、年々重要になっていく。
その様な波を乗り越えていく日本企業を応援できる様に頑張りたいし、僕自身、新しいチャレンジを続けていく。
これは、好む好まざるに拘わらず、時代を読み、そして変わっていかないと、企業は存続していけないからである。