10月10日に日本から上海に移動。機内に好きな上喜元があったので、これを飲みながら。
今週13日掲載の日経新聞連載コラム(ビジネスの流儀)は、アクセス自体は何時もより少なかったものの、前職である丸紅の方数名をはじめとして、何名かの方から直接Emailを頂くなど、嬉しい反響があった。
それに付随して、報道と計数の関係に付いてちょっと思った事を・・・
ジェトロの「2015年アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」では、中国の日系企業の短中期的な活動方針は以下の通りとなっている。
2015年:
拡大 38.1% 現状維持 51.3% 縮小 8.8% 撤退 1.7%
2014年:
拡大 46.5% 現状維持 46.0% 縮小 6.5% 撤退 1.0%
これの計数を使用して、どの様な報道が行われる可能性があるかであるが、数日前にインターネットを見ていたら、「ジェトロ調査では、中国の日系企業の縮小・撤退は10.5%と前年度3%増加する等、撤退縮小を検討する企業が増加している」という記事が有った(拡大・現状維持に付いては計数が記載されておらず)。
内容自体は間違ってはいないが、これを「ジェトロ調査では、中国の日系企業の今後数年の方針は、拡大・現状維持が約90%と大部分をしめており、縮小・撤退を選択した企業は10%程度にとどまっている」と書いても正しい。
まあ、一番客観的な書き方は、「拡大・現状維持を選択した企業は89.4%と大部分を占めているが、前年度比で拡大は8.4%減少、縮小・撤退は3%の増加となっており、様子見ムードが強まっている」というものだと個人的には思うが。
つまり、計数の使用が必ずしも公平・客観的な報道になる訳ではなく、書き手の主観がそこに表れる。読者は、報道の文章・ニュアンスは記憶に残るが、計数部分はすぐ忘れてしまう(それ以前に読み飛ばされる場合が多い)ので、書き手の主観(誘導)のみが記憶に残る。ここ数年の日本の報道は中国関係ではネガティブなニュアンスが主流となっている。日本人の多くの「そう思いたい」という感情が反映されているのかもしれないが。
上記は極めて簡単な例であるが、かくも左様に計数を正しく報道する事を前提としても、ポジティブ・ネガティブ正反対の印象を与える事ができる。重要性が無い事に付いてはともあれ、企業の今後の発展に直接関係する重要事項であれば、報道の文章を一旦取り払い、更に、多角的な計数・情報を集め、自分の目と頭で咀嚼する事が必要だ。連載で書いた、他人目線で見れば違う景色が見えてくる、というのはそういう事だ。