随分遅くなったが、インドネシアの投資環境に付いて、僕の意見を記載したい。
まず、最初に立ち位置を表明しておくと、今回のインドネシア訪問で、同国に非常に興味を持ち、何か真剣にビジネスモデルを考えてみたいと思った。つまり、可能性を感じた訳である。
可能性を感じた理由は、
・2.5億人の人口と、US$ 3.5千の一人当たりGDP
・自動車・4輪を始めとする日本製品の占有率の高さ
・(これは極めて感覚的な理由であるが)15年前の中国を思わせるインフラと雰囲気
という点。
ただ、可能性がある反面、問題も多い点は、認識する必要がある。
例えば、多発する労働争議と人件費の高騰、インフラ整備の立ち遅れ、汚職などである。
これを踏まえると、日本企業(製造業)の進出に関して言えば、加工貿易モデルには適さない。
インドネシア市場を狙った進出(一定割合の国内販売を想定したケース)を想定すべきと言えよう。
以下、インドネシアの視察で感じた点。
① 人件費・労働争議
JETROの調査では、2012年の中国の人件費水準がUS$ 328/月。インドネシアがUS$ 229/月となっており、これに基づけば中国の7割程度の人件費水準である。
ただ、人件費上昇率(2013年)が、中国では9.4%であるのに対して、インドネシアは17%とベトナム(17.5%)とならんで高い。
インドネシア訪問先で、どの企業の方も口を揃えて言っていたのが(ベトナムでも同様の声を多々聴くが)、多発する労働争議と、3年で給料が2倍になる(なった)という、人件費伸び率の高さである。
インドネシアに行くと、出会う人々が非常に穏やかに思えるが、「集団になると全く違う」との事(駐在員の方の発言)。訪問した現地法人社長の方は、就任半年でデモに遭い、逃げ遅れた部下数名が2日間工場に軟禁されたので、数日間は過ごせる用意(食品・水など)は会社に常備していると言われていた。
尚、机上論に過ぎないが(単純化した仮定による計算)だが、2013年の人件費の上昇率が双方で続くと仮定すれば、計算上は2017年には、インドネシアの人件費は中国と並び、2018年には追い越す事になる。
実際には、これほど単純な問題ではないが、何れにしても、成長過程にある国のコスト上昇率は高いのが通常で、現状のコストのみを前提として、計画を立てるできではない。
② インフラ
スハルト退任後の民主化で、土地接収が難しくなった事も有る様で、工業団地、道路、港湾の整備がなかなか進まない。
交通渋滞は非常に深刻で、全く動かない交通渋滞がジャカルタ名物と言われるほど。
港はキャパ一杯の状況で、通関に極めて時間がかかる(2022年の完成を目標として、新港建設計画あり)。
工業用地の価格も平米US$ 200程度であり、中国沿海部の倍近い状況。
この様に、インフラの整備に問題が有る事より、納期がタイトなビジネスモデルにはなかなか向かない。
因みに、ベトナムを訪問した時の印象は、インフラ整備の立ち遅れ。
インドネシアも類似した点があるが、相対比較すれば、過去の蓄積が有る分、インドネシアの方が整備されている印象。
③ その他、
話題にのぼったのが汚職。そして、(中国と相対比較した際の)部材調達の難しさである。
また、税務調査も比較的厳しく、日本への利益還元も重要な調査対象となっている(例えば、ロイヤルティの対外送金に関しては、1~2%の水準を超えると税務調査が厳しくなる)。
この点は、ASEANに共通する問題と言えるかもしれない。
以上、問題となる点を列記したので、投資環境が悪いという印象を持たれるかもしれないが、個人的な見解としては、上述した通り、他のASEAN地域に比べるとバランスがよく、興味ある投資先、というものである。
この1~2年、政治リスクを理由として、中国からASEANに目が向く傾向があるが、どの国にも固有の問題点があり(特に、インフラ整備、労働争議、部材調達の困難、汚職など)、この国に行けば理想が実現する、という様な場所はないと考えた方がよい。
なんだかんだ言っても、中国の投資環境は、インフラ、産業集積、人的水準、市場等の各方面から考えて、やはり条件が良い。まず、これを認識する必要がある。
その上で、多国展開をする際には、市場、コスト、産業集積、輸送等の各方面を分析した上で、ビジネスプランを立てる必要があると言えよう。