金は使わないが気は遣う元上司

以前書いたが新入社員の時の課長代理は、金は使わないが気は遣うというのを信条にしていた。

毎日、(朝一番出社が義務付けられていた新人の僕を除けば)部で一番に出社するので、すごいなと思っていたが、最寄りの駅から上司とタクシーを相乗りして出社するので、それに合わせている。更に、タクシーを捉まえて待っているという事だった。
タクシーといっても1~2メーターの距離だし、地下鉄駅前の行列ができる場所。更には、バブルの頃で、苦労がありそうな役割だ。
たまに、ならいいが、1日も欠かさずにそれを続けていた訳だから恐れ入る。
当時僕は新入社員だったので、随分年配に見えたが、今から思えば40才前後だったのではあるまいか(まだ飲み会に繰り出し、深酒をする事もある年齢だ)。
どこの駅だかわすれたが、何れにしても大手町付近で、朝早くにタクシーを捉まえるべく待機している。
それを、数年間、1日も欠かさず続けた訳だから、この忍耐力はすごい。
僕には真似できない。

また、実家が造り酒屋という事で、年に一回、酒粕を取り寄せて、部門内の部課長席以上に配っていた。
もらった方は、嬉しくもないと思うのだが。
酒粕を均等に切って袋詰めする為に、課員が会議室にこもって、残業時間(18時以降)に作業をする訳だが、「不公平が無い様に!」という指示で(誰も気にしないと思うが)、秤で二度計りしてから袋詰めするので、2~3時間がかりの作業であった。
作業のお礼は酒粕だ。
因みに、僕は帰りに駅のごみ箱に捨てた。

まあ、そんな感じの上司であったが、僕が研修に出る時は、研修経験者にアポを取って、一緒に食事をしつつ話を聞いてくれたり(社員食堂で割り勘だが)、丸紅台湾の知人にテレックスを打って、僕の世話を頼んだりとか、親切なところもあって、その意味では感謝している。

変わり者であったが、あれだけ極めれば真似できない。
そうなれば、一つの才能だ。

因みに、研修が決まった時の昼休み、課長代理と二人で会議室に入って話をしている時に、僕が居眠りをしてしまった事がある。
課長代理は僕の事を、大物、と読んでいたが、彼の眼には僕が変わりものに見えたことだろう。

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