1.諸勘定
売掛金だと、しっかり与信管理ができている場合が多いのだが、立替金、処預け金、未収金等の諸勘定は、管理基準が明確化されておらず、管理が甘くなっている場合が多い。
こういった諸勘定に、問題が含まれている場合が多いので注意すべきだ。
金額が若干大きくなってきた段階で、諸勘定の内容(何ための立替・諸預けで、いつ回収できるのか)を、個別に把握する努力が必要になる。
2.買掛金
帳簿をチェックする時、つい資産勘定ばかりに目が行きがちだが、負債のマイナスは、資産勘定と同じ。
仕入れずに代金を払えば、買掛金はマイナスになる。
よって、資産勘定と同様の注意を要する。
また、直送取引(仕入先から顧客に、商品が直送され、仕入売上だけ計上する取引)の場合は、商品受け渡しに関与できないので、管理が難しくなる。
顧客の受領書が偽造されれば、商品の受け渡しがない状態で(架空取引)、仕入代金の支払が生じてしまう。
そのまま、仕入先の会社を倒産させて逃げる、という手口がある。
与信管理だけではなく、仕入先の管理も必要。特に、直送取引の場合は注意を要する。
3.売掛金
売掛金の適切さは、地道な残高確認をしないと、なかなか確認できない。
この理由は多々あるが、販売先と、商品の送付先が、必ずしも一致しないというのは一つの理由。
例えば、契約上は、A社に販売するものの、その後、A社からB社に再販売される場合、会社の販売先(売掛金の計上先)はA社であるにも拘らず、商品送付先がB社となる場合がある。
つまり、財経部としては、商品の送付先がB社である事を理由に、A社向け売上を拒否する事はできないのである。
この様な取引の場合、点検すべきは、契約書と自社が作ったインボイス等となる。
国際取引等の場合は、L/C条件に織り込まれたりもするが。
この為、契約書を偽造し、優良取引先A社に販売した事にして、実際には不正規のB社に商品を引き渡すという手口も考えられる。
契約書の偽造は、見破るのが難しい。
また、別の手口。
出納管理をする際に、支払の場合は入念に点検する一方、入金の場合は、管理が甘くなるケースがある。
仮に、優良取引先A社には、100の与信限度があるとする。
この場合、A社に50販売し、その代金を、非正規の相手先B社からの入金として処理し、50の商品をB社に横流しする。
A社に50の売掛金が残る事になるが、A社との取引が継続すれば、古い残高を消していけるので、Over Dueを回避し、問題を先延ばしする、という手口がある。
この様に、社内に悪意の人間がいて、契約書、商品受領書が偽造されると、財経部としては、問題の発見は困難だ。
問題が起こると、「何故、偽造が見破れなかったんだ」と言う議論が起きるが、大規模の会社であれば、毎月、数百、数千の取引がある中で、社印や署名が本物かを確認する事は不可能に近い。
書類を見るだけでは、真偽は判別できないし、相手に聞くにしても、口裏を合わせられればおしまいだ。
その意味で、問題が小さい内に、悪い芽を切り取る作業が、残高確認という、地道な作業という事になる。
最近は、香港、中国でも、残高確認が浸透してきた。
残高確認は、営業部でも面倒な作業なので、10年以上前は、「中国企業に残高確認書を送っても返してもらえない(習慣が無い)」と、開き直られるケースもあったが、随分改善したものだ。
また、本当に問題を発見しようとすれば、帳簿点検、残高確認だけではなく、取引先・仕入先の実地訪問(人物チェック)、社員の人物チェック(というと変だが、つまるところは、嘘をつく人間でないかどうかの、付き合いを通した確認)等を併用せざるを得ない。
こうなってくると、管理部門業務というのは、随分、職人的な面があるというのを分かって頂けるであろう。