撤退手続の誤解と正解

撤退報道がなぜ誇張されるか、というと、「苦労話は、誇張して話したがる人間が多い」こと。更には、「極端な例を挙げた方が、報道しやすい」というのが理由であろう。
ただ、相談時に、撤退認可がとれない、優遇税制を返却しなければいけない、退職金を払わなくてはならない、解雇ができない、残余金が支払えない、という様な事を言われる方には、以下の通り回答している。
① 撤退認可
経営期限満了前の解散は、原設立認可機関の許可を要するが、外資企業が少なかった数十年前ならいざ知らず、現段階で、撤退認可が取れないという例はまずない。
② 優遇税制の返却
二免三減などのタックスホリデーは、旧税法(外商投資企業及び外国企業所得税法)により、経営期限が10年以上の外資企業に対して認められる制度。
よって、撤退が経営開始後10年未満の場合、そもそもの優遇条件を満たさなくなるので、返却が必要(法律通り)。10年以上の経営実績があれば、返却は不要。
但し、地方財政による助成金の交付を受けている場合は、この様な明確な期限が無いので、個別交渉となり、これが、撤退時の障害となる事もある。
③ 退職金(経済補償金)
従業員の自己都合退職であれば支払い義務はないが、撤退の場合は、会社都合で解雇する訳なので、支払が必要となる。
ただ、退職金の支払いは、日本での解雇でも同様に必要なものであり、これが理不尽とは言えまい。
④ 解雇の可否
労働契約法によれば、雇用主の消滅の場合は、労働契約の自動的な終了の要件となるので解雇可能。
ただ、これは、会社の解散許可を取得した段階であり、それ以前の大量解雇は、リストラ解雇になってしまうので、手続が異なる。トラブルが発生するのは主に、リストラ解雇の告知のタイミング。
⑤ 残余金の回収
全ての清算手続が終了すれば、残余金は回収できる。

こまかなノウハウは多々あるのだが、実情は、この様な感じだ。
撤退に関して一番難しいのは、前回も書いたが、合弁会社の場合は、経営期限満了前に解散する事に関する共同出資者との意思調整。更には、従業員解雇の部分である。
これは、相手側の「裏切られた」という感情。解雇される従業員の(収入が途絶える事に対する)不安、更には、積年の恨み、という部分が、積もり積もって爆発するためである。
暴力行為などはもっての他だが、撤退のサポートをしていると、双方(企業側と従業員側)のお互いの気持ちが分って、切ない気持ちになる事もあるし、稀には、企業側の方がひどいな、と思う場合もある。
つまるところは、人間の心に繋がる部分が、撤退作業で一番難しい訳であり、これは、世界共通な事と言えるであろう。

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