2018年4月25日の国務院常務会議において決定された7種類の減税政策に付いては、既に、何度かNNAの連載原稿で解説したが、それに関して、クライアント様向け会報を書きあげた。この減税措置は、色々なメディアでも取り上げられていたが、元となる法律を知らないと、どの様な扱いが、どの様に変化するか(どの程度優遇が拡大されるのか)という点が分からない。よって、それを意識して解説した。その概要のみを、簡単に紹介したい。
1.研究設備の一次償却
新規で購入した研究器具・設備などの、単年度償却金額の上限が、100万元から500万元に引き上げられる。
これは、「固定資産加速度減価償却の改善に関する企業所得税政策の通知(財税[2014]75号)」の優遇条件の緩和で、2014年1月1日以降に購入した研究開発専用の設備・機器で、単体価格100万元以内の場合は、一括償却(初年度損金算入)できると定められているが、これが500万元に引き上げられる。
2.中小企業の適用税率
これは、恩恵を受けられる外資企業も多いのではないか。企業所得税法では、小規模で利益が少ない企業に対しては、(標準税率25%に対して)20%の税率を適用する事が認められている。これが、「小規模薄利企業所得税優遇政策範囲の拡大の通知(財税[2017]43号)」で(2019年度までの時限措置)、課税所得を半減した上で、20%で課税する事が認められている(結果、適用税率10%)。
この適用を享受できる小型企業は、規模的制限もあるのだが(人数・総資産)、課税所得の制限もある。この課税所得基準が、2020年度まで、年間100万元以内に引き上げられる。
小規模薄利企業に対する優遇は、all or nothingで、課税所得基準を満たせば10%だが、1元でも超えると、全所得に対して25%の税率適用となる。よって、100万元への引き上げは、恩恵が大きい。
中国内の企業規模が条件に合致していれば、たとえ日本の大企業の現地法人でも享受可能。特に、設立間がない期間(規模・利益がまだ小さい状況)に付いては、有難い優遇措置なのではないか。
3.国外に対する研究委託費用
「研究開発費用の税額調整の改善に関する通知(財税[2015]119号)」により、企業が外部機関・個人に研究開発活動を委託した場合、発生した研究費用の80%を委託者側で損金算入する事が認められている。119号通知では、国外機関に対する委託により発生した必要は、損金算入が認められていなかったが、この制限が廃止される。
4.ハイテク企業・科学技術中小企業の欠損繰り越し
企業所得税法第18条では、ある納税年度に発生した税務欠損は、5年間繰り越すことが認められており、その間に発生した課税所得と相殺する事が認められる。これは、全ての企業に適用される規定だが、今回の減税措置により、ハイテク企業、及び、科学技術系の中小企業の場合、繰越期間が10年に延長される。
5.従業員教育費
企業所得税法実施条例第42条には、企業において発生する従業員の教育経費支出の損金算入制限を、当該企業の給与賃金総額の2.5%以内と規定しているが(超過部分は繰り越し可能)、ハイテク企業に付いては、「高新技術企業の従業員教育費用の損金算入制作に関する通知(財税[2015]63号)」で8%まで可能と定められている。これが、全ての企業に対して適用されるもの。
6.資本金に対する印紙税(印花税)
2018年5月1日より、資本金帳簿に対する印紙税(印紙税法では、払込資本金・資本準備金の払込金額に対して0.05%の課税と規定)を半額とし、その他の帳簿(1冊5元)に対する印紙税が免除される。
7.ベンチャー投資企業
「ベンチャー投資企業とエンジェル投資者に関する税収試行政策の通知(財税[2017]38号)」では、法人型ベンチャー投資企業、及び、エンジェル投資家が、創業準備段階・初期創業期にある科学技術型企業へ出資した場合、満2 年(24 ヶ月)経過時に、投資額の70%を損金算入する事を認めている。この試行措置は、北京・天津・河北、上海、広東、安徽、四川、武漢、西安、瀋陽に設置される8か所の全面創新改革試験区、及び蘇州工業園区と規定されているが、この適用が全国に拡大される。