新型肺炎関連速報第3回(上海市の隔離措置)

新型肺炎関連速報第3回。上海市の隔離措置について、上海市衛生健康委員会のヒアリングを踏まえて解説しています。

<引用>
2020年1月29日および31日の会員様向け速報で、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大防止措置の施行解釈、同措置に伴う人事・労務関連事項について解説しました。
今回は、上海市の各行政機関から連日公布されている、「14日間の隔離措置」に関する通知について、上海市衛生健康委員会にヒアリングした結果を踏まえて解説します。

1.上海市新型コロナウイルスによる肺炎の感染防止・コントロール業務指導室の通告

上海市新型コロナウイルスによる肺炎の感染防止・コントロール業務指導室からの通告が2月4日に公布・施行されています。
本通告には、湖北などの重点地区から上海に来る者や上海に戻って来る者については、上海到着日から14日間の自宅隔離もしくは集中隔離観察を厳格に実施したうえ、自発的に居住地の居民管理委員会(中国語:居委会)に報告し、その管理を受けること、および特殊な事情がなければ、隔離期間後に出勤することが要求されています。
また、その他の地区から上海に来る者や上海に戻って来る者については、上海到着日から体温測定、「健康状況情報登記表」への記載を行い、異常があれば、会社もしくは居住地の居民管理委員会に報告することが要求されています。
原文:http://wsjkw.sh.gov.cn/xwfb/20200204/7b86d6cb7add4e17a3e7ce616d9c230d.html

2.上海市衛生監督委員会の解釈説明

上海市衛生監督委員会の解釈説明によると、次の三つの条件を満たし、且つ上海市で固定居住場所を有し、その場所が自宅隔離観察の要件を満たす場合は、自宅隔離を実施する必要があります。
条件1(以下の何れかに合致する者)
・湖北省から来た者、あるいは湖北省経由で上海に戻った者、あるいは湖北省等に滞在していた者
・湖北省から来た発熱・呼吸器症状のある者と近距離接触した者
・コロナウイルス肺炎感染者、同疑似感染者と近距離接触した者
・その他特定状況の場合(疫病拡散状況によって隔離対象者範囲を調整する場合がある)
条件2 発熱等の症状がない
条件3 以上の状況が上海到着前の14日間で発生した者
上記の条件1にある湖北省等の「等」の解釈を上海市衛生健康委員会にヒアリングしたところ、現時点では、当該「等」は感染状況が厳しい温州市を指すとの回答がありましたので、温州市から来た者についても自宅隔離もしくは集中隔離を要求される可能性が高いと思われます。
上記対象外の者は、規定上では14日の隔離の対象となりませんが、実務上では、居住地の居住管理委員会や会社、会社所在地のビル管理会社等が、重点地区以外から来た者に対しても14日間の自宅隔離を要求したケースもあるようですので、詳細は居住地のアパート管理会社、勤務会社所在ビルの管理部門等にもご確認されることをお勧めします。
原文:http://wsjkw.sh.gov.cn/xwfb/20200204/db01b711b12040c4bbba663289ea00f7.html

3.上海市公安局の通告

上海市公安局が2月3日に公布した、「新型コロナウイルスによる肺炎の防止・コントロール期間の違法犯罪行為を法に従い厳格に処罰し、社会安定を維持する事に関する通告」の主な内容は以下の通りです。
疫病重点地区からもしくは重点地区を経由して上海市に来る者、及びこれらの者や感染者、疑似感染者と密接な接触があった者は、自発的な体温測定、「健康状況登記表」の記入、14日間の自宅隔離もしくは集中隔離医学観察へ協力する必要があります。もしこれらの措置を拒否した場合、関連規定通りに処理することとなり、治安管理違法行為あるいは犯罪行為に該当する場合、公安機関から法律責任を追及されることとなります(通告第二条)。
原文:http://wsjkw.sh.gov.cn/xwfb/20200203/cde7ed50818d43b2825f6881e63b58ba.html

4.その他

2月4日に上海市衛生監督委員会から次の要求が出されています。
(1)上海に来る(戻る)全ての者は、その交通の各地点(中国語:口岸、道口)において、体温測定の実施、「健康状況登記表」の記入をしなければならない。
(2)上海に来る(戻る)全ての者は、上海到着後に、居住地の居住管理委員会、会社、ホテル等の居住地へ届け出を行い、毎日体温を測定し、できる限り外出は控えなければならない。
(3)湖北等の重点地区への滞在歴がある、かつて重点地区の発熱または呼吸器症状を持つ者との接触歴がある、新型コロナウイルス感染肺炎患者との接触歴がある場合、14日間の自宅隔離もしくは集中隔離観察をしなければならない。
(4)(5)(6)省略
原文:http://wsjkw.sh.gov.cn/xwfb/20200204/4921bb5d37734801837360656d015b32.html
また上海市宝山区も同様の措置を2月1日に公布しております。
原文:https://mp.weixin.qq.com/s/WYIse0xEBR7UeuDU_ldyEA

経験はあらまほしきものなり

新型肺炎流行の話でもちきりの昨今で、中国本土では、2月9日まではオフィスも開けられない状況。
それはそれで難儀だが、自分自身は、SARSの渦中に香港で過ごした経験が有るのが、精神面では役立っている。
あの時は、病気の怖さはあるのだが、それ以前に、順調に動き出したコンサルティング活動ができない焦りの方が大きく、色々とあがいたものだった。
例えば、NNAさんに共同企画を持ちかけて、SARS期間限定(とは書かなかったけど)無料面談受付。人と会うのがはばかられる状況なら、逆に来てもらおうという発想であった。

そして今回。精神的には、ずいぶん落ち着いている。何れにしても、病気は落ち着くであろうから(どんなに遅くても、暖かくなれば終息する)、今のうちに、出来る事をやっておこうという気持ち。行政機関に特別期間中の対応をヒアリングして、その情報をオンタイムで提供するというのも一つだし、本を書くのもその一つ。また、2015年に手を打っておいたベトナムも最近忙しく、こういう時に気がまぎれる。

ピンチだと思った時の対応が、長い目で見れば、却ってよい結果を生んだこと(信頼が得られた。チャンスにつながった等)は少なくない。これは、長い経験で検証済だ。
ビジネスには波がつきもの。いま出来る事を、しっかりやるのが重要だし、雑音に惑わされずに、じっくり(でも、少しは焦りながら)、自分にできる事をやっていくのが重要だろう。

新型肺炎対策の旧正月延期措置に関する人事労務Q&A

新型肺炎対策の旧正月延期措置(企業操業延期措置)に関する、当社会員様向け会報続報です。人事労務面でのご質問に関し、1月31日時点の上海市人力資源社会保障局での確認結果を、1問1頭形式で記載しています。

<引用>
いつもお世話になっております。
春節休暇延長措置に関する速報第2弾をお送りします。

2020年1月29日の会員様向け速報で、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大防止措置(国務院決定による2月2日までの 春節休暇延長、及び、上海市・広東省の2月9日までの企業操業再開延期)と、その施行解釈について解説しました。
今回は、同措置に伴う人事・労務関連事項に付いての、1月30日付、弊社上海と上海市人力資源社会保障局の質疑応答を、一問一答形式で下記します。

Q1.上海市の通知では、「2月9日24時前に操業を開始しないものとする」と規定されているが、この起点は、当該通知が公布された28日からか、あるいは一般的な春節明けの2月1日からか?
A.現在の特殊環境下においては、通常の春節休暇中(~1/30)に従業員を出勤させる場合も、原則的には、会社所在地所管の疫病防止・コントロール指揮部、若しくは、所管区に報告する必要がある。よって、当該通知による規制の起点は、通知公布日からと理解すべき。

Q2.休日延長期間(1/31~2/9)の給与計算上の扱いは、通常の出勤日扱いではなく、会社の普通休日(土日)と同様と理解してよいか?
A.2月9日まで従業員を出勤させず、且つ、在宅勤務もさせない場合は、通常の出勤日として扱い、給与を支払う必要がある。
休日延長期間中(1/31~2/9)に、所管部門の審査を経て従業員を出勤させる場合、及び、従業員に在宅勤務させる場合、通常の出勤日扱いではなく、土日における出勤に基づき、残業代を支払うか、代休を与える必要がある。

Q3.派遣社員(月給ではなく、時給制)の場合、休日延長期間(1/31~2/9)の給与計算上の扱いは、通常の出勤日扱いとする必要があるか?
A.Q2の回答と同様に、出勤させず、また在宅勤務もさせない場合でも、理論上は、通常の出勤日扱いとする必要がある。但し、派遣社員の場合、具体的にどのような賃金基準に基づき給与を支払えばよいかについては、明確な規定はない。
尚、弊社の意見として、今回の特殊状況下では、当該従業員と相談の上、まず現地の最低賃金基準に基づき支払い、今後関連実施細則が公布された後に改めて補足支給する。もしくは、過去の月平均収入に基づき支払うといった方法が検討可能と思われます。何れにしても、時給形態の派遣社員の場合は、派遣元である派遣会社と協議すべきと考えられます。

Q4.2月10日直後に給料支給が必要な場合、その支払いを遅滞なく行うべく、2月10日以前に、関連社員(人事部・経理部の社員等)を出社させる事は可能か?
A. 企業操業再開延長期間中に社員を出社させる場合、所管疫病防止・コントロール指揮部、あるいは所管区に、説明資料を提示した上で申請し、審査を受ける必要がある。審査を経ずに、出社させることはできない。
※但し、弊社が1月29日に所管疫病防止・コントロール指揮部のひとつである、浦東新区陸家嘴街道疫情防控弁公室に確認したところ、具体的な申請手続きは上級管理部門に確認中とのことであり、実際には出社させることは難しいと思われます。