忙しい中本を読む

忙しい一週間だったが、溜まっていた仕事はほとんど片づいたので、精神的には余裕がある。
これから、7月の講演会4件、8月の講演会3件のレジュメ作りをしなければいけないので、引き続き仕事には追われそうだ。
その中で、「震える牛(相場英雄)」と「悪意(東野圭吾)」を読んだ。
前にも書いたが、僕は活字中毒なので、ただボーっとしている事ができない。
疲労困憊してソファやベッドに横たわっている時も、本が無いとくつろげないので、忙しくても基本的には本を読んでいる。
勿論、肩の凝らない本、というのが条件だが。
この点、学生の頃の方が、よっぽど面倒な本を読んでいた。
小学校6年~中学生の頃には、カフカやカミュを読んでいたくらいなので(よく理解できていたかどうかは別の話)。

震える牛は、ストーリー展開がしっかりしており、推理小説としては面白かったが、大手スーパーのとらえ方は、ステレオタイプ。
悪い強者(大手企業)と弱者(個人商店)のコントラストは、読者に分かりやすいのは確かだし、弱者保護の必要性は理解できるが、表現に偏りがあるのが気になる。
特に、記者が大手スーパーを憎む理由は、言いがかりに近い。
最後には、大手の不正が出てくるので、結果的に整合性が取れるのだが、あの理由で、企業のネガティブ部分を執拗に追いかける記者には感情移入ができない。

悪意は面白かった。
WHYダニットに、これだけこだわった推理小説を初めて読んだし、動機だけでこれだけの展開ができるのは新鮮な驚きだった。
推理小説で、「これはやられた!」と感じたのは、中学生時代に読んだ、アガサクリスティの「そして誰もいなくなった」と「アクロイド殺害事件」。
アクロイドは、フェアかどうかの議論が付きまとう作品だが、それでも最後の一行のインパクトはすごかった。
そして、数年前に読んだ、東野圭吾の「容疑者Xの献身」。
「悪意」は、これらに比べるとインパクトは弱いが、こんな感じで、実験的な試みを続ける東野圭吾は、たいした推理作家だと思う。

結局相手も同じように見ている

上海で元同僚と話していたら、先日、駐在員向けに異文化理解に関する講習があり、講師が、「日本人と中国人(他の国でも同じ)に、相手の悪い点に関するアンケートを取ると、トップ10の大部分が同じ結果になる」という説明をしたと言っていた。
つまり、日本人の中国人に対するネガティブ評価の高順位に「中国人は働かない」という内容が有ったとすると、中国人側のアンケートでも「日本人は働かない」という評価が高順位にくるという事だ。
これは大変興味深く、また、納得できる話であった。
同じ日本人でも、駐在員、現地採用、バイト、業務委託など、置かれた立場や条件が異なれば、発想は変わってくる。
文化・民族が違えば、その差はより鮮明になる。

僕の身の回りには、非常によく働く中国人が多数いる。
弁護士、提携先のコンサルティング会社、僕の会社の総経理クラスなど、毎日夜まで働いているし、こちらの質問には、夜10時になっても11時になっても、その日のうちに返信しようと努力してくれる。
一方で、日系企業で働いている社員の中には、ほとんど働く意欲が見られないような社員がいる事実も理解している(意欲にあふれている社員もいるが逆もいるという事)。

どの様に働くか、何をモチベーションとするかは個人差があるので一概には言えないが、総じて、頑張りによって報酬・ポジションが大きく変わる条件では、中国人は良く働く。
一方、頑張っても報酬にあまり差が出ない、責任あるポジションに付けないと分かると、中国人は途端にやる気をなくす。
頑張ってどんなに業績を上げても、副課長、副部長、社長補佐にしかなれない(ライン長になれない)。更に、報酬も標準と10%くらいしか違わないという環境では、どの国民でもやる気は出なかろうが、日本人は、その状況でも、それなりに良く働くので、平均値は日本人に分がある。
ただ、「これは真似できない」という、凄まじい馬力・貪欲さを発揮する人間の比率は、僕が出会った中では、中国人に分がある気がする。
この様な違いがあるのだが、人間というのは、相手の悪い部分ばかりが目につくので、その結果、お互い「こいつら働かないな」と感じる結果となるのであろう。


また、終身雇用が前提になっており、任期が終われば日本への帰任を前提とした駐在員と、期間限定契約を前提として働く現地採用社員とでは、価値観や働き方が異なるのは当たり前だ。
親会社組織の中での出世を前提に働く事を駐在員は考えざるを得ないので、親会社に対する報告業務が重要なウェイトを占めるが、現地雇用の立場から見れば、それは仕事とは評価できない。
現地雇用の前提に立てば、終身雇用が保障されない以上、短期的な経験・報酬の引き上げを重視せざるを得ないが、その姿は駐在員からは身勝手だと映る。

ただ、確実な事は、立場の違いが有っても、日本人、中国人、更には、雇用形態を問わず、モチベーションを持って働く環境を作らないと、組織は良くならない事だ。
そのために、自分の基準ありきで見るのではなく、お互いの置かれた立場、条件の違い、価値観を客観的に分析し、システムを作っていく必要がある。
立場、雇用形態が異なれば、価値観が違ってくるのは必然で、まずは、価値観の相違を冷静に分析する。
その上で、相手の価値観を否定するのではなく、理解した上で、モチベーションを引き出すシステムを作る事が必要だ。
重要なのは、偏見(負の先入観)を捨てる事から始めなければいけないという事。
偏見は良い組織を作る上で、最大の障害になる。
加えて言えば、僕は偏見ほど嫌いなものはない。
人間である以上、完全に偏見から解放されているとは言えないが・・・

深圳での会社設立は便利になった?

現在、深圳に新会社(水野企業管理深圳有限公司)を設立中で、来週月曜日に営業許可証取得予定。
その関係で、一昨日に深圳に日帰り出張。
深圳では、今年3月1日から、深圳商事登記改革、つまり会社登記の規制緩和措置が実施されていて、インターネット申請なども含めた利便化が図られている。
どの程度便利になったかを、自分で確認できる良い機会だと喜んだのだが・・・

今回、僕が深圳に出張したのは、法定代表人として、市場監督局(他地域の工商行政管理局)に出向き、パスポート原本の提示、写真撮影と、その場での署名が必要になったからである。
予約を取るに当たっては、インターネット予約ができ、更に、深圳市内のどの区でも申請ができる(今回は、羅湖区での設立だが、手続をしたのは福田区の市場監督局)という点は、簡便措置の効果を感じる。
ただ、法定代表人自ら工商行政管理局に出向いて、これらの手続が義務付けられるというのは、上海、広州で法人を作った時は不要であったし、来週の月曜日(営業許可証受領日)以降1か月以内に、再度、法定代表人のパスポート原本を複数の政府機関に提示して、登記を行わなければいけないのは、他地域以上に面倒だ(次のステップは、本人が出向く必要はないが、パスポート原本が必要)。
僕は香港居住だから良いようなものだが、出資者が日本居住しており(米国だったらもっと大変)、社長、取締役等の高役職者の場合、こんなタイミングで深圳に滞在、出張してくれというのは、まず無理であろう。
法定代表人は、会社法で、董事長・執行董事だけでなく、総経理が務める事ができるので、法定代表人を現地責任者(予定者)にする事で、この点は実務的に解決できるのであるが。
確かに、審査ステップ等が簡便かされた部分もある。
ただ、審査・登記手続が大きく変わっているのは確かであり、利便性の向上が実現したか言うと、疑問を感じざるを得ない。

実務手続きは、この様な感じであるが、取りあえず、新法人設立は順調に進行中。
5周年記念の9月1日には営業は問題なく開始できよう。

因みに、その日は、18:30~23:15まで、延々焼酎を飲んで話していたので、危うく電車に乗り損ねるところであった。
幸い、タクシーがすぐつかまり、親切で効率的な運転手だったので(福田ボーダーはもうしまってるから駄目。羅湖ならギリギリだけど行ってみるよ!と方向性をテキパキ決めてくれた)、駆け込みセーフ。
0:30に帰宅。

15年の昼食事情の変化

昨日は、広州東駅到着が11時半。
午後一の面談で時間的な余裕がなかったので、オフィス近くのセブンイレブンで、13.5元の弁当を買った。
1997~98年頃は、5元程度で、3種のおかずがぎっしり詰まった弁当が買えたので、思えば高くなったものだ。
しかし、上海でも広州でも、コンビニ弁当が大流行り。
会社員と思しき中国人の若者が、争うように弁当を確保している。
1990年代の中国は、良い意味でも悪い意味でものんびりしていたので、コンビニ弁当で昼を済まそうという雰囲気はなく、もっと昼食を重視していた。
この点、日本の事情と随分似通ってきている。
経済成長と共に、皆な忙しくなり、余裕がなくなってきているのであろうか。

因みに昨日食べた弁当は、いつも上海で食べているローソン、ファミリーマートの弁当と比べると、味は落ちる(特に野菜)。
僕としては、もうひと頑張り期待したいところだが、売れ行きは良さそうなので、大きなお世話と言われそうだ。

講演会で嬉しかった事

昨日(返還記念祝日)は、結局、午後6時まで仕事をしていた。
予定していた休暇は、実質的には取れなかったが、終日家にいたため、風邪は8割方回復した。
現在、朝9時半の電車で広州に移動中。
午後に面談2件。

昨日のブログで書いた通り、講演会続きで体力的にはしんどかったが、成果は有った。
特に、NNAの講演会(3連続)は、懇親会付だったので、飲みながらざっくばらんな声が聴けたのは有益だった。
「中国の面倒な法律・運用を、あれだけ明瞭に解説してくれる人がいるのは驚きだ」と言ってくれた方が数名いらしたし、総じて、分かりやすいという評価を頂いた。
僕が講演会で話す素材(法制度と実務運用)は、確かに面倒な内容ではあるが、できる限り咀嚼し、分かりやすく解説する事を心掛けているので、そういって頂けるのは、素直に嬉しい。

昨年9月の日中関係の悪化から、エキセントリック、若しくは、一時の風潮に流されたような講演会が随分開催され、主流を占めていた感がある。
そうなると、しっかりした分析や法律・実務の理解が軽視され、感情論が先行する。
その風潮下、真面目な法律解釈、実務解説を行う事に、無力感を感じていた時期があるが、そんな中でも、真面目に、そして実直に業務を遂行している方々と出会え、声が聴けた事で、僕自身も力をもらった気がする。

今月は、講演会4回とクライアント様向け講習会が4回。
まずはレジュメ作りに追われるが、講演会で、どんな方々と出会えるかが楽しみでもある。

返還記念の休日

今日は7月1日。
返還記念日で香港は祝日だ。

ここ2週間で、日本・香港・上海を飛び回り、8回講演会(内6回は先週)を開催したら、移動と講演の疲労がどっと出て、風邪をひいてしまった。
経験から、一週間に3回以上講演会をすると体調を崩しがちになるので、その都度無理なスケジュールは組むのをやめようと思うのだが、喉元過ぎればで、すぐに過密スケジュールを組んでしまう。
我ながら困ったものだ。
先週土曜日は移動日。
昨日(日曜)は、体調を崩して寝ていた。
今日も、香港の祝日を利用して、休養しようと考えていたのだが、せめて、昨日時点までに頂いたE-mailに返信してから、と考えていたら、いまだに終わらない(14時)。
軽い頭痛を我慢しながらの業務。

明日は広州日帰り。
明後日は深圳日帰りなので、あと1時間くらい仕事をしたら、少し休もう。

思い起こせば、僕が赴任したのは1997年(返還の年)の4月。
赴任以降の3ヶ月、全速力で仕事を飛ばしていたら(酒もだが)、返還記念休暇には、緊張の糸が切れて、どっと疲れが出て動けなくなった。
返還記念式典は、前の会社のオフィスの前で開かれていたので、会社に行けば、式典・花火を特等席から鑑賞できた。
歴史的な光景を目にすべきだ、とは思ったのだが、体力的にその余裕がなく、TVで記念式典を見ながら、近所のユニーで買った持ち帰り寿司を食べ、シャンパンを飲んでいた。
あれから16年が経過したが、僕の仕事の仕方はあまり変わっていない様だ。

講演続きで喉が痛い

NNAさんに主催してもらい、3日連続でミニ講演をしている最中。
今週は、短い講演ばかりだけれど(1 or 1.5時間)、一週間に6回の講演。
先週日本で、みずほ総研の7時間(講演時間は6時間)をこなした事もあり、喉が大変。
昨日聴講頂いた方は、若干、声がかすれて聞き苦しかったのではないかと思い、申し訳ない気分になる。

尚、ミニ講演会には懇親会が付いているのだが、何人かの方から、ブログを毎日読んでいます、と言って頂き、有りがたいと思う。
これまた、昨今、超多忙にしている事で、我ながら、面白いブログが書けていない様な気がして、毎日訪問頂く方には申し訳ない。

何やら、申し訳なく感じてばかりだが、講演会は必死に頑張っていますのでご容赦のほどを。
今日がすんだら、7月中旬までは講演会は無し。
これから、気合を入れて話してきます。

台風シーズンの飛行機

昨日は、午後5時半発の便であったが、上海の悪天候で2.5時間遅れ。
機内に乗り込み、一眠りして起きたら、まだ飛んでいなかったので驚いた。
ただ、締め切りが過ぎている、三井住友銀行の会報を機内で完成し、送信できたので、その意味ではほっと一息ついての移動となったが。

台風シーズンになったので、移動スケジュールを決める際に気を遣う。
幸い、今のところ(講演会を始めた過去12年間)で講演会に間に合わなかった事はないが、肝を冷やした事は数回ある。
最低、前々日の移動は必要なので、時間のロスが生じるのが困るところ。

因みに、東方航空格安チケットの利用は、しばらくやめようと思っていたのだが(特に、便に乱れが生じやすい台風シーズン)、再来週からの上海・日本移動は、またもや東方航空となった。
ハイシーズンになるので、ワンワールド(JAL、キャセイ、ドラゴン)で上海、日本に移動すると(4回搭乗)、HK$9,000くらいになる(税サは別途必要)。
東方航空ならHK$ 2,500だ(やはり、税サ別)。
この価格差を突きつけられると、どうしても東方によろめく。
夏のハイシーズンの味方と言える。

我慢比べの様な

今日の夕方の飛行機で上海に移動する。
先週、日本で講演会(7時間)1回、クライアント様限定の講習会1回。
昨日、香港でクライアント様限定の講習会2回。
明日から3連続で、NNAさんに企画してもらったミニ講演会3回、クライアント様向け講習会1回。
という事で、2週間で8回講演、講習をやるという、我慢比べ大会の様な生活になっている。
ちょっと疲れが溜まった。
上海でマッサージ。
あと2ヶ月飛ばして、起業5周年の9月1日になったら、数日間休みを取ろう。

どこに行きたいかと考えているのだが、まだ、中国本土から台湾への直行便に乗った事がない。
三通実現からずいぶん時間が経ったのに残念だ。
また、厦門から金門島のフェリーというのも魅力的。
僕が台湾で語学研修をしていた時は、民間人の金門島訪問は(台湾人であっても)制限されていたので、特に、本土側の厦門から行けるというのも夢の様だ。
いま、一番やりたいのはこれなので、旅費は安くて済みそうだ。

ただ、一人で行くのもさびしい。
とは言え、このマニアックなプランに興味を持ってくれそうな人も思いつかない。
どうしようか。

貨物代金決済改革と輸出統計の関係

最近、中国の輸出統計が水膨れしている、という報道がされている。
報道を見てみると、それなりに法律を調べている様に見受けられるが、背景、経緯、何故そのような問題が発生したかという点。
更には、他国の事象との比較が、十分行われていない(状況が十分咀嚼されていない)、若しくは、論調が誘導的だったりする。
公平を期すために、歴史的な経緯を踏まえた上で、解説してみたいと思う。

中国の輸出統計(特に対香港出)に異常が見られた事により、今年5月5日、外貨管理局の一斉調査が行われた(外貨資金流入管理の強化に関する問題の通知、匯発[2013]20号)。
何故、この様な問題が生じたかを理解するためには、2012年8月1日に実施された、貨物代金決済改革(匯発[2012]38号)を理解する必要がある。

この制度改定により、それ以前の、輸出入通関証明を提示しない限り、貨物代金決済が認められないという、非常に厳格な貨物代金決済制度が緩和された。
現在では、輸出代金の受領は、銀行に入金申請書を提示すれば入金が認められるし、輸入代金の支払は、契約書、インボイス、輸入通関証明(何れも原本)の何れか一つで決済が認められる。
ただ、通関と決済一致の原則は不変との方針を外貨管理局は取っているため、通関データと決済データのかい離が著しい場合、外貨管理局の立入調査が実施され、懲罰的対応が取られる(外貨管理ランクの降格による、外貨管理の自由度の剥奪)。
この様に、企業に自主管理を促す制度となっている。

今回の問題は、中国本土の企業が香港企業に対して、カラ輸出を行う事で、資金を香港から中国本土に流入させる。
この資金を中国本土で一定期間運用した上で、反対取引(香港からのカラ輸入)を行い、資金を香港に戻す、というオペレーションが行われている可能性が高いというものだ。
以前の貨物代金決済制度では、通関証明が無い限り、外貨の受払いができなかったが、現在では、決済時の通関単提示が不要なため、この様な決済が実務上は可能である。
相手側の香港は、もとより外貨管理自由で、仮払金形式で資金移動ができる。

では、中国政府が意図的にこの様な事をやらせているか(ねつ造しているか)だが、この様な事はあり得まい。
2008年より、日本のバブル崩壊時のシュミレーションから、中国政府は執拗な資金供給規制を行っている。
輸入ユーザンス形態の資金調達の総量規制、資本金・借入金の換金(外貨⇒人民元)の証憑確認の厳格化等の措置を取り、投機資金の流入を躍起になって規制している。
あまりに厳格なので、企業の健全な活動すらも損なわれると、以前、ブログで中国の外貨政策を憤ったことがあるのだが、この様な厳しい為替政策を取る一方で、カラ取引による統計数字の引き上げを実施するというのは、どう考えてもあり得ない。

今回の外貨管理局の一斉調査の日本企業に対する影響だが、日本企業の場合は、懲罰的な対応で健全な企業運営が阻害される事を危惧するため、昨年の規制緩和後も、通関実績に基づく決済を行っている所が殆どである(優等生的な対応をしている)。
それゆえ、今回の一斉調査でも、問題になった企業は聞いていない。
どこの国の企業かは現段階では特定できないが、今後のリスクを考えず、儲かればよいという事で荒っぽい取引をするところが少なからず有る様で、これが今回の問題を引き起こしている訳だ。

今回カラ取引が行われた(とすれば、その)背景は中国内の高金利で、これは、景気の引き締めに対する、全国共通の手法である。
その様な措置により生じたギャップ(金利・為替差額)を利用して儲けようという動きは、過去にも、色々な国で行われてきた。
日本のバブルの頃、金の所有権売買を名目として、資金を日本・欧州・香港に移動させ、利ザヤを稼ぐ取引(金定期預金取引)を、各企業(商社等)が何兆円も行っていた事がある。
これも、名目上の売買により国際間の資金移動を行い(金の売却と再購入の名目で、日本で集めた資金を国外に移動させ、一定期間経過後に戻す)、ユーロ円と日本内の円の金利差で儲ける様な取引であった。
違いは、日本の外貨管理制度ではそれが合法であり(そのような資金移動を合法的に実現させる方法が有り)、中国の制度では違法、というか、管理が厳格であるため合法的な手法が無く、違法手段に走った企業があるという事だ。
こんな感じで、ギャップが有れば、それを利用して儲けようとするのが金融の世界で、その様な人の欲が、欧米のヘッジファンドによるアジア金融危機や、リーマンショックを引き起こした。

中国の外貨管理は、規制緩和されたとはいえ、日本に比べれば格段に厳しい。
為替の自由化は先進国化の過程で当然行われるものであり、それは総論で言えば必要と考えているが、少し緩和が行われると、こういう問題が生じる。
規制緩和はかくも難しく、それは、人間の欲との戦いであると言える。

中国ビジネスコンサルタント水野真澄のブログ