中国の企業所得税の改正が香港・タックスヘイブン国に与える影響

ここのところ、全然、ビジネスネタを書いていなかったので久しぶりに。
企業所得税法改正の話などしてみよう。

最近は、ブログでしか僕の文章を読んだ事がない、という方もいる様なので、お気楽文章しか書かない人間だと思われないように・・・
まあ、それはそれでいいけど。


3月16日に、全人代で企業所得税法改正が採択されると、すぐに新企業所得税法が公布された。
内容はかねてから言われていた通り。
●標準税率を内・外資25%に統合(ハイテク企業、中小企業、インフラ・環境保護企業などには一定の優遇あり)。
●「二免三減等のタックスホリデー」や「地域による優遇税率」は廃止
などなど。

ちょっと注意する点として、経過措置は税法「施行」後5年と推測されていたのが、「公布後」5年になったという点。
施行後ならば、新税法が公布されてから施行されるまでは、駆け込み進出が予想される。
そうすれば、僕の元にも案件が駆け込むだろう。
「かき入れ時だ!」と皮算用していたが、残念ながらもう手遅れ。
ちょっとがっかり。

それはさておき。

税制改正の内容は、概ね、ここ数年いわれていた通りのものなので、良い部分も悪い部分も、ある意味想定内。
WTO加盟前(2000年頃)から、近々税法が変って、外資優遇は打ち切られると言われ続けていたので、もう慣らされたと言うか、覚悟はできていたと言うか・・・
という感じ。

一方、ちょっと嫌なのが、源泉徴収税率の引き上げ。

どう引き上げられたかと言うと・・・
税法自体は、今も新税法も源泉徴収税率20%と変らない。
但し、2000年の通達により、現在は対外送金に関する源泉徴収が10%に軽減されているので、この通達が税制改正に伴い失効したとすれば、10%の引き上げを意味する。
また、外資企業が外国出資者に対して支払う配当は、現時点では源泉徴収免除となっているが、これがしっかり取られそうな気配で、そうすれば配当に付いては20%の税コスト増加である。

勿論、租税条約締結には、一般的に源泉徴収税率軽減が規定されているので(日中租税条約の場合は、配当・利子・使用料とも10%)影響も緩和されるが、非締結国は苦しかろう。

特に、ケイマン、英領バージンアイランド(香港・台湾企業はここ経由の出資が多い)等のタックスヘイブン国経由の間接出資をしている場合で、中国からの配当=事業収益となる場合は、税制改正によりいきなり20%の採算悪化となってしまう。


一方、香港は、今年から本土との租税協定を改定し、旧租税条約では規定がなかった配当・利子・使用料の源泉徴収に関する軽減税率をしっかりと規定している(以下参照)。
まさに、中国の企業所得税改正に合わせたような(!?)タイミングである。

<中国本土から香港に対する送金に対する源泉徴収税率>
● 配 当:10%以内(但し、25%以上の持分を所有している場合は5%)
● 利 子: 7%以内
● 使用料: 7%以内

香港も、ケイマン・バージンアイランド等と同じように、軽課税(特に、配当・株式譲渡収入に対する課税なし)、外貨管理自由という特徴を備えた重要な投資経由地の一つ。
但し、この本土との租税協定の整備により、対中投資に関しては、香港活用の優位(ケイマン・バージン等に比較して)が明らかになった。

今後、対中投資のルートを、(軽課税国経由が前提となるものに付いては)香港経由に切り替える大きなうねりが出てくるかもしれない。


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