テーマは、来料加工工場は、加工委託をする香港企業のP/Eになるか。
2007年4月4日に、国家税務総局より「内地と香港特別行政区の所得に対する二重課税防止、徴税漏れを防止する事に関する取り扱い規定に関する条文解釈と執行問題についての通知(国税函[2007]403号)、以下、通達」が公布された。
これは、昨年8月21日に香港で調印された、新しい租税協定(本土では2007年1月1日より発効)の実務運用に関係するガイドラインを、結構、細かい点で取り決めたもの。
その中で、興味を引かれたのが、来料加工のP/E認定と言う部分。
この通達では、来料加工のP/E認定に付いて、以下の通り規定している。
● 内地企業が、香港企業から来料加工業務を請け負い、香港企業が内地で生産、監督、管理、若しくは販売に参画する場合、恒久的施設(P/E)に該当するものと見做し、当該P/Eに帰属する利益に対して納税を行なわなくてはならない。
では、全ての来料加工に関して、内地の来料加工工場が外国(香港)企業のP/Eとして認定されるのか、という疑問が生じると思うけどそうではない。
その理由は、租税協定第5条では、「香港企業が、中国内地で加工を行なう目的のためのみに、香港企業に所有権が帰属する商品を中国に保有する場合は、P/Eには該当しない」と規定している為。
つまり、単純に加工委託をしているだけ(加工のために、商品を預けている場合)は、P/Eには該当しないから、通常の来料加工、つまり、独立した中国内地企業に、通常の来料加工を委託する場合は、P/E認定は受けないと判断してよいであろう。
勿論、人材を派遣して、生産管理、品質管理、etc.をする場合は解釈の問題が生じると思うが。
ここで想定されている(上記の規定に該当する)のは、珠江デルタ式来料加工と見てよいのではないか。珠江デルタ式来料加工は、実質的には、香港企業が、内地の来料工場の管理運営を行っているので。
この通達よって、免罪符を受けたような感じになるので、今後、珠江デルタ式来料加工でP/E認定の問題が頻発するような予感がする。
では、P/Eに該当するとどうなるかという点であるが・・・
簡単にいうと、企業所得税が課税される。
そういうと、「数年前から、見なし利益方式で徴税されてる!」という声が上がるかもしれないが、これは、来料加工工場自体に対する課税であり、P/E認定とはなんら関係がない。
内地の来料加工工場が香港企業のP/Eとして認定された場合は、「この様な来料工場自体に対する課税は継続された上で、更に、香港企業に対しても、来料加工から生じた所得に対して、内地で納税義務が発生する」事になる。
通達に、「この規定(香港企業にも内地で納税義務が発生するという内容)により、現在、内地企業が取得する加工賃収入に対して企業所得税を徴収している事に関する取り扱いが変更される訳ではない」という記載があるのは、この理由。
ただ、P/E認定を受けた場合、どの様な算式で課税所得を算定するかと言うのは協議・交渉の余地が大きく、現時点では良く分からない。
対象となる所得が加工賃収入だけであれば、あまり影響を受けるとも考えられないし、中国からの輸出が除外されるのであれば、これまた、(来料加工は、原則として全量が輸出されるので)影響ない。
「来料加工は無償形態」、「来料加工は原則として全数量が輸出」という特殊性から、P/E認定された場合の実額としての影響が読みにくい。
通達で明らかにされているのは、「(P/E認定を受けた場合)当該来料加工に帰属する所得が課税対象となる事」、「所得の算定に当たっては、関連する販管費(内地で発生したものに限定されない)の控除が認められる事」、「状況に応じて、総利潤の割合に基づく計算などの簡便方法の採用が認められる事」、「課税所得算定方式は、継続使用が認められる事」という程度。
何れにしても、今後、華南では何らかの動きが予想されよう。