来料加工制度の今後

加工貿易制度に関する規制は、2005年末より本格化し、現時点では一時休止という形になっている。
これは、2008年の米国発金融危機の影響による輸出停滞を背景として、過去の公告(特に、商務部・税関総署令[2007]44号)をサスペンドする決定がなされたためだ(商務部・税関総署[2008]97号)。

2005年以降実施された規制としては、時事通信の連載で詳しく書いたが、
● 禁止分類品目・制限分類品目の増加
● 貿易権の無い加工貿易企業の制限分類加工貿易禁止
● 制限分類取り扱い企業の沿海部での新規加工貿易取り組み不可
● 香港企業が経営、加工に参画する来料加工のP/E認定を可能とする通知の公布
● 企業所得税を納付していない来料加工廠に対する企業所得税課税
等があげられる。

これにより、来料加工に対する不安感が生じ、来料加工制度が廃止されるのではないか、という観測に繋がっている。

ただ、ここ数年で実施された規制をもう一度確認してみると、来料加工制度に限定した規制は行われていない事が分かる。

実施されているのは、「加工貿易制度全体」と、「珠江デルタ型来料加工」に対する規制だけだ。

この趣旨は、前者については、加工貿易制度は、一般区(税関が封鎖管理する保税区域以外の場所)でも保税取引が認められているため、「優遇制度である(一般的な貿易制度ではない)」というように、政府内での位置付けが変わってきた為だと思われる。
その結果、この制度を適用できる企業を限定しようという動きにでたものだが、ここでは、来料・進料は規制強化の過程では分類されていない。

また、珠江デルタ型来料加工は、僕の著書でも解説してきたけれど、「本来、税収となる部分が、地方政府に諸手数料の形で徴収されてしまう」、「違法換金を伴うケースがある」等の、オペレーションの不透明性を伴いがちな取引であり、上部政府機関からは、かねてより規制の意思がみられている。
よって、コンプライアンス確保のために、制度を廃止したいという本音があるのは確かで、昨日のブログにも書いたが、「ほぼ、深圳特区外、東莞に限定された取引であるにも関わらず(珠江デルタ一帯では他の場所の実例もあるが、件数的ま重要性では両地域に特化される)、国家が形態転換の公告を出して、2~3年を目処に転換作業を進めようとしている事からも、それが伺える。

ただ、今年、10月15日付の東莞市の通知で、「鎮外経貿の許可を得れば、独資転換後も来料加工ができる」と規定しているのは、時代の流れというものだろう。


ここ数年、「来料加工制度はどうなるのか」という質問をよく頂く。

それに対しては、「国内取引重視の方向に政府の政策、企業の経済実態が推移していく中、長い目で見れば、来料から進料へのシフトは必然的な動きともいえる。但し、来料加工制度の廃止はないであろう」と回答していた。

ただ、講演会でその発表をしたら(レジュメにもそう書いてあるのだが)、来料加工廃止されると受け取った方がいた。
何故、そういう誤解が生じたのか分からないが、先入感があると、聞く内容に拘わらずそれに引きずられるという事であろう。

その時は、
セミナー参加者の方が、僕の会員企業の方に、「先日講演会に出たら、来料加工制度が廃止されると言っていたが本当か」と質問(僕の会員様であることを知らずに、偶然質問した模様)。
 ↓
会員企業の方が、真偽を僕に質問。
 ↓
僕が、「誰です、そんな適当な講演会を開く人間は!参考の為に講演会の発表者を教えて下さい!」と言って詳細を聞いたら、僕の講演会だった。

という事があり、大変驚いた。

ただ、これは、来料加工制度がなくなるのではないかという観測が、非常に根強く流れている査証ではないかと思う。

そんな訳で、僕の観測を言うと、
● 少なくとも、中期的なスパンでは、来料加工制度の規制は、今後も行われない。
 行われるとすれば、(来料・進料一体となった)加工貿易制度の制限となるであろう。
● ただし、珠江デルタ型来料加工は、数年の時間をかけて廃止の方向に動くであろう。

という事である。


では、タイミングはどうかという点であるが、商務部・税関総署[2009]62号の記載、
つまり、2011年までに現物出資申請をする(必然的に、作業完了は、2011年末か2012年早々になる)というのが一つの目安であろう。
勿論、ここで記載されているのは、5年未経過の無償提供設備移管に伴う関税・増値税の免除であり、新規輸入の無償提供設備が無い場合は、直接的な関係はない。
ただし、政府機関が想定する時間軸、と言う意味では重要な意味を持つ。

また、注意すべきは、現在施行がサスペンドされている、商務部・税関総署[2007]44号だ。
ここには、制限分類品目を取り扱う場合、新規では沿海部での進出が禁止されている。
景気回復とともに、この規制が再開され、独資転換自体が制限される事がないように、少なくとも制限分類取り扱い企業は、62号公告の時間軸を守った方がよいであろう。

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