僕の修業時代

新入社員で配属されたのは外国為替部輸出為替課だった。
ディーリングをやりそうな組織名だが、輸出荷為替手形の担当で、書類と格闘する、まさに泥臭い作業の毎日だった。
課員が40人程度という、ちょっとした部よりも大きな組織で、同期は僕を含めて5人(総合職が2人、担当職が3人)。

新入社員の配属は、担当職はすぐ。
総合職は1ヶ月の集合研修を終わらせたあと、と時期が違っていたので、僕が配属された時、担当職の3人は、既に1か月弱の業務の経験があり、当然、配属初日の僕よりも仕事ができる。
「これはまずい!」と焦ったものだ。
配属早々、生意気な同期からは、「水野君こんなことも分らないの」という顔つきで見られるし、年上の担当職の中には、同期の担当職をかわいがって、総合職の新人二人に冷ややかに接する人もいて、「いきなり試練だ!会社は辛いわぁ」と思ったものだ。

総合職の先輩からは、「端末の操作とか、そんな事はいいから、もっと財務・為替の理論を憶えて大きな人間になれ」とか言われたが、最初の数か月は、まさに、端末操作とホチキス留めが僕の仕事なので、これができないというのは、まさに仕事ができないという事だ。
困ったことに、こんな内部ノウハウは本を買っても分らない。
悔しいので、他人が作った自分用のマニュアルを、残業中に盗み読みして覚えた。
そこから徐々に、いろんな仕事が回ってきて、L/C, D/P, D/A等荷為替手形のノウハウと、貿易実務を身に付けた。
新人の1年は、こんな感じの生活だったので、「単純作業ばかりやって、何か意味があるのだろう」と悩んだが、不思議なもので、事務作業を繰り返す事で、本では学べないノウハウが身に付いた。

経理部海外経理課時代もそうだった。
資料の作成、特に、計数の足し算引き算、四捨五入に、作表。
最初の2~3年は、そんな仕事ばかりだったので、同僚と酒を飲むたびに、「誰かがやらなければいけない仕事だというのは分る。でも何で僕が!と思うよね」と言い合っていた。
ただ、その当時は何の役にも立たないと思っていた事が、思った以上に役に立っている。
昔の徒弟制度の名残という感じだが、体で覚えるというのは、今から思えば重要な修行方法だ。
その後、本や専門学校(TACなど)で覚えた知識も当然あるが、現場から学ぶこと、実務で体に覚えこませる事の重要性は、今になるとよくわかる。
新入社員の頃は、コピーを取り、ホチキス止めをし、過去ファイルを読み(どこに配属されても課の過去ファイルは全部読んだ)。
つまらない事ばかりで、理屈好きの社員なら、「こんな仕事をして、どんな意味があるんですか」とか言うであろう。
その気持も分るが、答えは数年後にでるものだ。
無駄になる経験はない。

実務は腕立て伏せ。
それが事務作業であっても同じこと。
華やかなプレーのためには、地道な筋トレが必要なのと同じだ。

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