ビジネス文化の違い

ビジネス感覚の違いを言えば、中国は、「知らない人間に対しては、性悪説でとことん疑う文化」、欧米は、「信じたふりをしながら、心の中では疑う(自分もすきあらば相手をだまそうとする)文化」、日本は、「疑いながらも性善説を捨てきれない(というより、捨てない)文化」という感じであろうか。

中国では、会計担当が現金を受け取ったら、客の前で偽札かどうか確認するのは基本動作だし、(不渡制度が確立されていない事もあり)企業が振り出した約束手形は、普通の企業は受け取らない。
銀行が支払い保証をして、初めて受け取ってもらえる。
銀行も企業を信用しないので、100%の現金担保を積んで、初めて手形の引き受けに応じる。
税務の発票制度というのも、その文化の象徴的な存在だ。
人は脱税をする、という大前提があるため、税務局にデータがつながっている領収証(発票)しか、証憑としか認めない。
日本式の領収書、つまり文房具屋で買ってきた用紙に社印を押した領収書は、中国では不正領収書扱いで、誰にも受け取ってもらえない。
中国で、収据といえば、悪・不正の象徴という目で見られるが、何のことない、日本式領収書の事だ。
因みに、中国では、社印も作成してすぐ公安局に届け出が必要だ。

そんな文化の違いがあるが、それが常識だと思えば、不思議と腹も立たないし、当たり前だと思う。
払ったお金を偽札でないか、目の前で確かめられるのは、当たり前の話だし、掛け売りなんか普通はしてくれないと割り切れる。

会計上の収益認識基準に関する、発生基準との齟齬(中国流発票基準と呼ばれる基準)も、基本的には、人をどこまで信じるかの文化の違いに起因する面が大きく、これは、解消が難しいであろう。
欧米の発想が、人を信じたふりをして(決して信じていない筈だが)、開示義務の強化で縛っていくという、事後規制を原則としているのに対し、中国の発想は、どうせ人はだますのだから、だませない様、取引(計上)段階で縛ろうという、事前規制を原則とするからだ。

ビジネスの国際化のなかで、ここらの会計上の考え方は、今後、更に問題となっていくだろうが、上記の理由で、融和はなかなか難しいのではないか。

ただ、実務レベルでいうのであれば、中国でビジネスをするのなら、中国の文化に従わなくてはならない(欧米なら欧米流だ)。日本の感覚で掛け売りをすれば、不良債権を抱える懸念が高い。
郷に入っては郷に従え。
中国で成功したいのであれば、中国流のやり方を理解しなくてはならない。
これは、善悪や好き嫌いの問題ではなく、生き残るための必然だ。