香港のパラドクス

香港で、不動産関連でお世話になっている仲介会社(Frontier Real Estate Ltd)から送ってもらった月報を見て改めて感じたこと。
セントラル地区のA級オフィス物件の1squarefeet当たりの賃貸相場が、CEPA施行の2004年1月段階でHK$23程度。これが、2009年1月にはHK$105に上がり、リーマンショックの影響で一旦HK$60程度まで落ちるもすぐに戻し、2019年にはHK$140になっている。6倍の上昇だ。住居価格はそれほどではないが2倍程度となっている。
確かに、自分が2010年にホンハムで借りた住居の家賃が6年後には2倍になってしまったが、そういう動きも存在する。一方、物価指数の推移は、同一期間で1.5倍程度の変化だ。
日本で、数年間で給与が1~2割しか増えないのに、家賃が倍になったら、大変な騒ぎになるだろう。ましてや、不動産価格が高い(所得に占める家賃割合が高い)香港では、その影響は大きいし、所得が低い層ほど(中流でも)シリアスだ。

香港は、1997年のアジア通貨危機、2003年のSARS、2008年のリーマンショックによる経済危機を、中国のテコ入れで切り抜けてきた。その結果、中国マネーが流れ込み、経済は活性化された。今の香港は、中国無しでは生き残るのは困難だ。とはいえ、そのマネーが生み出した豊かさは、不動産価格の高騰と庶民の生活圧迫をも生み出すというパラドックスを生んでいる。
香港のデモは、香港の経済価値を毀損するという意味で、僕個人としては否定的ではあるが、こうした将来的な不安の発生を自分の身に置き換えてみれば、その気持ちも分かる気はする。

結局、経済の活性も停滞も中流層以下の困窮を生むという行き詰まり。広東省と一体化をすれば、不動産価格や雇用は安定するが(グレーターベイエリア構想は、この様な発想を織り込んでいる)、香港の市民感情が受け入れない。この状況で新型肺炎によるダメージが加わる。
いまの香港は、極めて厳しい状況にあるのは確かである。