中国工商銀行の口座を開設した。12年前に中国銀行の口座を作り、不満がありながらも、それ一本で通してきた。
ところが、先日、中国銀行のシステムが一時的にダウンしたことが有り、折悪しく、仲間と一緒に飲んでいた。代表して電子マネー払いしようとしたが払えない。仲間も中国銀行の口座しか持っておらず、やはり払えない。泣く泣く、香港のクレジットカードで支払った結果、手数料と悪い交換レートのため、1500元の損を被った。腹立たしい事、この上ない。結果、複数口座を持つ必要性を感じた次第。
1.外国人の口座開設
昨今、世界的に、非居住者口座の管理が厳しくなっている。中国のの場合、過去には、パスポートを見せれば、外国人(居住者・非居住者問わず)でも簡単に口座を開けたが、2017年7月1日より、非居住者に対する銀行口座管理が厳格化した。
これは、「非居民金融账户涉税信息尽职调查管理办法、以下、14号公告」の影響だ。
14号公告は、非居住者の口座開設を直接的に禁止してはいないが、銀行の運用実務上、居留許可がない外国人は開設不可になっている。ここら辺の徹底は、銀行、更に、支店によって違ったが、2018年後半には、概ね、全ての銀行が、居住許可がない外国人には、口座開設をしなくなった。
2.今回の開設
14号公告は世界的なマネーロンダリング規制の一環なので、非居住者には、居住国の納税番号提示を要求している。
日本人の場合は、マイナンバーだ。とは言え、マイナンバー制度ができた時、僕は、既に香港居住者になっていたので、番号を持っていない。香港の納税はID番号に連動しているから、それを使ったらどうかと、香港IDカードを渡すが、銀行担当者は、「うーん(日本人だからなあ)」と考え込んでいる。「運転免許証はあるか?番号が分かれば、免許証の写真でも良い」といわれる。
そう聞くと、「適当だなあ」と思われるかもしれないが、そうではない。。
14号公告第18条に、「本弁法でいう証明資料とは、以下を指す。
(1)政府が発行する租税居住者身分証明、(2)政府が発行する個人の姓名を含み、かつ身分識別に常用する有効な身分証明」と規定されている。
つまり、マイナンバーが望ましいが、運転免許証でも、(2)の要件は満たすので、この点は、解釈の範囲内。
とは言え、運転免許証は、写真を含めて持参していない。なんだかんだで、納税番号無しで行けることになった。
これまた、「適当だなあ」と思われるかもしれないが、さにあらず。元々、14号は、タイトル通り、非居住者の口座開設に当たっての公告だ。
居住許可を取った外国人は、一応、居住者扱いなので、これを準用するかどうかは、これも解釈の範囲内。そんな過程で、OKになったということ。元となる法律を知らないと、テンでバラバラの対応に見えるが、根拠法を知っていると、解釈の範囲内で動いていることが良く分かる。ということで、いつも僕が言っている、「最低法律は知らなければいけない。その上で、実務運用のブレを確認しなくてはいけない。それも、可能な限り多地域。それを行って、初めて中国の制度を語れる」という話になる訳だ。
3.中国銀行との違い
中国銀行の場合は、パスポート番号だけでなく、居留許可情報も登録する。よって、居留許可期限までしか、自由な利用が認められず、これを超過すると、延長手続きが必要になる(それをしないと使用制限がかかる)。当然、日本帰国後(居留許可失効後)は、口座使用に支障が生じることになる。一方、工商銀行は、開設時に居留許可は確認するが、情報登録はしないので、パスポートが変わらない限りは、手続不要との事。そんなこんなを考えると、工商銀行の方が、外国人にとっては、使い勝手が良い。まあ、上海以外だと、どうかは分からないので、この点は、個別で確認頂きたい。また、中国の制度や実務管理は、目まぐるしく変わるので、「現時点では」という前提は付くが。
ともあれ、窓口対応も親切だったし、満足して手続終了した。