物流園区は、第一号の上海外高橋が批准されたのが2003年12月(稼動は2004年4月)。
その他の7箇所(青島・寧波・張家港・大連・廈門・深セン)は、2004年8月の批准となっているが、稼動時期はまちまちで、早い場所では2005年中盤。遅いところでは、まだ正式稼動が始まっていない(深センの塩田物流園区は、2005年12月30日に検収を終えたが、まだ正式稼動には到っていない状態)。
よって、実際のオペレーション状況(使い勝手)が判断できるのは、外高橋物流園区程度で、それ以外の物流園区は、まだ運用実例に乏しく、状況判断が難しい。
物流園区が新しく設置された際に、注目された機能は以下の様なもの。
?(保税区と違って)区内に国内貨物を搬入した段階で増値税の輸出還付が受けられる。
?物流園区経由で輸入する貨物に関して、税関の認可を受ければ集中通関(1ヶ月単位の事後通関)が適用できる。
特に、?の点が一番注目されているが、これは、加工貿易品の再輸入の為の経由地(香港の代替)としての機能が期待されたもの。
この点、関連規定には可否は明記されていないが、物流園区の管理委員会は、肯定的な回答を行っており、その様な機能(加工貿易品に関する香港の代替機能)は、物流園区の機能の一つであるとヒアリングに答えている。
但し、これが、税関に聞くと状況が変わってくる。
つまり、物流園区に搬入した国内品は、実際に輸出する事が大前提であり、再輸入は原則として認めないという回答が、外高橋物流園区の所管税関から返ってきた。
物流園区は、一種の(巨大な)輸出管監倉庫とも言えるが、輸出管監倉庫の管理規定では、そこに搬入した国内品は、実際に輸出しなくてはならない事が明記されているし、国家税務総局も、それをバックアップする様な通達を出している。
つまり、増値税の輸出還付を受けた上で、それを再度中国内に輸入する様な行為は、原則から外れる行為という訳である。
この点、加工貿易品に関しては、微妙なところがあるが、少なくとも(増値税免税が明記された来料加工品とは違い)進料加工は、輸出時に免税・控除・還付措置の適用を受ける為、上記規定に準じるのが筋と言えるであろう。
中国の物流業者、経験豊富な日系物流業者の方(共に、外高橋物流園区で実際のオペレーションに携わっている方々)にヒアリングしたところでも、「加工貿易品の再輸入は、不可能とは言い切らないし、実例も有るが、原則論から言えば不可。その前提に立った上で、税関に対して個々に必然性を立証し、納得してもらって、はじめて再輸入が可能になる」という、共通した見解が有った。
もう少し調査を進める必要が有るが、少なくとも、「加工貿易品の物流園区搬入⇒再輸入は、自動的に認められるものではなく、一定の難度を伴う行為である」という点は認識しておく必要がありそうだ。
あと、考慮が必要なのは、物流園区に搬入時と搬出時の価格差の問題。
保税区では、「区内に搬入した段階と搬出する段階では価格は同一でなければならない」という基本概念がある。
つまり、区内で価格差をつけてはいけないという事であり、結果として、区内でついた価格差部分が外貨送金できない事例も少なくない。
物流園区も、原則として同様の概念が適用される。
加工貿易品の再輸入スキームを行うにあたっては、物流園区に一時非居住者在庫(加工貿易委託者)を置く必要が出てくるが、進料加工の場合は、再輸入時に価格差をつけ、ここで加工委託者が利益を確保する必要がでてくる。
これがスムーズに行われない可能性が有るという事である。
勿論、これに付いても、保税区の対応はCase by caseであり、(減額はさておき)特に、保税区企業に利益が残る形であれば、合理的な範囲で増額が認められるケースも少なくない。
僕自身の経験では、昔、丸紅廈門会社の社長だった頃、保税区経由の輸入に際して、一定の利益を載せた上で一般区に出した事が有る。
ともあれ、重要なのは、実際にスキームを行うに当たっては、規定・管理委員会の説明・報道記事を鵜呑みにせず、実地の検証(特に、税関)を行うべきという事である。
本件は、もう少し継続調査を行う予定。