当事者意識

先日、とある総合商社の方と酒を飲んでいて、在庫の実地棚卸の話になった。
僕が経理部長をやっていた丸紅香港時代は、実地棚卸は経理の役割ではなかった。
その商社では、実地棚卸は経理の役目という事で、「実地棚卸やらないと、何も分からないじゃないですか!」と言われたが、その通りだと思う。

僕も、自発的に実地棚卸に同行したりしたのだが、そこに行くと思わぬ事態に遭遇する事もある。
夏に数万足の靴を数えて、卒倒しそうになったり(その時は、倉庫の冷房が不備だったのが発覚し、即刻冷房の整備をしてもらった)、思わぬ含み損が表面化したり。

結局、会計基準で、測定・減損等を論じるのも経理の一部だし、現場でそれを実際に確認するのも経理だ。
営業と経理が共同で在庫の管理体制に責任を負うのがあるべき姿だと思うし、その一環に実地棚卸もある。

ここらの業務の線引きが変われば、仕事の立ち位置も変わる。
この線引きは、会社によって色々違う。
どちらがいいか、というのは、今まで尽きない議論が交わされてきたのであろうから、ここでとやかく言わないが、僕は、理論と実務が一体化して、初めて知識は完成されるという考えの持ち主だ。
現場を知らない経理にはなりたくなかった。

管理部門、職能部門、若しくは、その他の英文名等、名称を変えて、管理部門の官僚的な雰囲気を変えようという試みは、どの会社でもあるようだ。
ただ、それでは小手先だ。
名称変更では人のマインドは変わらない。
当事者意識を変える事。
それは、業務の線引きを変える事。

それが、業務改善の一番の手法だろう。