海南自由貿易港の続き

6月7日のブログが、海南自由貿易港は、「この様な意味では、香港のようで香港ではない位置付けとして伸ばしていくのではないか」という終わり方をしているのだが、その続き。

海南島に、香港代替機能を持たせるかどうか、という点であるが、これは状況次第だろう。香港の機能(治安)が維持され、米国との対立が極端に深刻化しない様であれば、当然、香港を今のまま活用した方が便利だ。ただ、そうはならない場合のシナリオも想定はされているだろう。

5月30日のブログで書いたが、米国の香港優遇廃止というのは、大義名分とは異なり、香港を追い詰める効果しかない(結局、米国は、香港を交渉の材料に使っているだけではないかと思うのはこの部分)。米国の香港政策法に規定された、米ドルと香港ドルの自由兌換が廃止され、それに留まらず、中国・香港系銀行の米ドル取扱いに大きな制限が加えられた場合、中国としては、人民元の国際化を実施せざるを得ず、それは、人民元自由化(外貨管理自由化)を必要とする。
人民元の自由兌換が実現すると、香港の金融機能は喪失する。つまり、中国本土(上海、深圳など)でも、その機能は果たせるためだ。では、香港の機能をどこに移すかについて、香港の報道・経済界は、多分に海南島を意識した発言をしているが、まだ、産業が十分発展していない海南島よりも、金融・ITを中心に発展し、既に(2018年)、香港のGDPを抜かした深圳とするのが自然かと思う(上海は独立した地位があるため、香港の代替ではない)。
証券取引所時価総額ランクは、1位ニューヨーク、2位ナスダック、3位日本、4位上海、5位香港、6位ユーロネクスト、7位ロンドン、8位深圳という順番。
香港証券市場は、上海よりも下位だが、深圳よりは上位。とはいえ、香港の躍進は、中国本土企業の上場によるものであるので、環境が変われば、深圳市場がこの機能を代替できよう。
海南自由貿易港の位置付けはというと、既に書いた通り、全島保税区域化による、保税物流機能、貿易中継機能、保税加工機能が強力な武器になる。九州よりやや小さい程度の地域が、全て保税区域になるのは、やはり影響が大きい。
ここに香港の物流機能をシフトするという方向はあり得る様に思う。
更に、ASEANに近い立地であり、持株会社を誘致・育成する方向性も出てくるのではないか。
この様な形で、香港の機能を、深圳と海南島に割り振るというのが現実的なシナリオかと思う。

勿論、これは、米国の出方次第という面が大きく、おそらく、現在の様な過激なやり取りは、大統領選以降は沈静化するのではないかと思う故、上記の方向に突き進む可能性は、極めて低いとは思う。ただ、中国は、各種の可能性を想定し、数十年前から対策を進める国なので、最悪の事態が起きた場合の保険という位置付けも有ろうし、そうならなくても、海南島が発展すれば、それはそれで損にはならない。
海南島自由貿易港総体方案を読んで、そんなことを考えた次第である。