上海隔離・7日目

夜7時頃に、部屋に電話が有り、翌日10時にピックアップのバスが来るので、荷物を整理しておくよう言われる。感情をうまくコントロールしていたので、ひどく辛い訳でもなかったが、具体的な出発時間の連絡というのは吉報だ。とはいえ、(これも感情をコントロールしている作用か)嬉しさがこみあげてくるとか、そういうのもない。ともあれ、淡々とした気持ち、

電話が有った直後、電子マネーで、ホテル代を払わねばならない。クレジットカードはどうかと聞くが、ホテルの人間は、隔離場所に入れないのでダメとの由。電話での説明(結局、友達になってから、ウィチャットペイで振り替えるだけだったようだが)が、いまひとつ理解できず、部下に電話して。代わりに払ってもらった上で、ウィチャットで返金した。通常の中国語会話は、概ね支障ないとはいえ、QRコードやら、何とか記号だとか、そう言った感じの用語が出てくると、途端に、分からなくなる事がある。
ともあれ、「電子マネーをやっていないと、隔離ホテルの支払いができない等の問題があるので、新規赴任の方などは、中国内に、代理でやってくれる人を確保しておくのが肝要だ。

因みに、このごみ袋は2日に一回支給され、ゴミ出しは、毎日、指定時間にできる(ドアの外に出しておけばよい)。しかし、このごみ袋からは、「あなたの触ったものは危険品です」オーラがすごい。

上海隔離・6日目

上海での集中隔離も6日目。先週金曜日(23日)に、このホテルに入ったので、今週金曜日(30日)に出られるのかと思ったら、土曜日(31日)になるそうだ。一日損した気もするが、誤差の範囲内で、特に問題はない。
暗さを克服してみると、この部屋も、(隔離場所としては)そう悪くはなかったな、と思う。おまけに、強制的に禁酒、カロリー制限ができるので、鏡に映る自分の顔が、日に日にすっきりしている。1泊360元で7泊なので、2,520元(約4万円)。この金額で、ダイエット道場やら断酒道場やらに入ったと思えば、得した気分さえする。

500mlの水を10本買い足した。水分摂取は多い方だし、毎食、ドライフードや麺を食べるので、結構水がいる。十分あるのは、嬉しい事だ。酒好きなので、皆様より、酒が飲めないと大変では、というご心配を頂いたのだが、酒は、飲めなければ、別に飲まなくても我慢できるので、それほど問題ではない。心配は、水だった。旧正月明けの頃(居留許可を元に再入国で来た頃)、隔離施設に人があふれ、十分な飲料水の準備がされていなかったので、苦情が多く、中には、喧嘩となり、警察が出動したケースも有ったようだ。そういう先人のおかげで、自分が苦労を回避できているということだろう。

上海隔離・5日目

集中隔離環境に、完全に慣れる。ちょっと意外ではあるが、気の持ちよう、というのは大きい。という事で、開き直って、持参した食材を食べている。写真だと、不味そうに映っているが、本人は大変満足だ。

これは、アルファ米おにぎり。握らず、袋を20回振るだけでおにぎりになる、という売り文句だが、ならない。とは言え、そんな事は、どうでも良い。

そして、コーヒーに、ブルーベリー味のクッキーを食べる。酒を飲んでいない事もあろうが、甘いものが嬉しい。ストレスを抑えててくれる。もう少し持ってくるべきだったと後悔。

昼は、1個だけ持ってきた、カップ焼きそばUFOのミニカップ。胃が小さくなってきている様で、ミニカップでも、ちょっと胃がもたれる。そして、夜は、ビーフストロガノフライス(これも、アマノドライフーズ。米は、尾西のアルファ米)。

上海隔離・4日目

集中隔離4日目。前日、開き直った通り、無理はやめる。という事で、3食とも、持参した即席食品。ささやかな幸せを感じる。
特に、アルファ米にレトルトカレーをかけたものは幸せだった。平常時だったら、絶対感動しないものでも、環境が変わると嬉しい。しかしながら、日本の即席食品は素晴らしい。技術開発に携わった方々に、心から感謝したい気分だ。

上海隔離・3日目

集中隔離3日目の夕方、隔離環境に慣れてきた。
自分の心(感情)の動きが、自分でも読み切れず、不思議な気もするが、ともあれ、発想を変えたことが大きい。
厳しい環境にいる時は、無理するのはやめ。眠たければ、何時でも寝ていればいいし、本を読んでいても良い。配給弁当が食べたくなければ、無理して食べなくていい。「あまり厳しく目標設定をするのではなく、だらだらしても良しとしよう」と考えたら、ふと楽になった。
という事で、夕食は、旅行用ラーメンポットで、サッポロ一番味噌ラーメンを食べる。
このラーメンポットは、1989年の福州研修に持ってゆき大活躍したので(普通のホテルの一室で1年暮らしたので、台所が無かった)、今回、早速、同じものを買った。こうしてラーメンを茹でていると、昔が懐かしい。

因みに、いつも思っている事だが、海外で生活することの適性とは、身の回りにある、ささやかなことに、喜び、感謝できるかだと思う。この環境に当てはめると、バスルームのお湯が、(隔離施設なのに)ちゃんと出るので有難いとか、こういう、ポジティブな点を見つけて、有難いと思えるかどうかだ。
嘆いても1日、楽しんでも1日。それができれば、海外で仕事ができる(逆も真なり)。

ただ、ちょっと話は変わるが、海外経験豊富な自分だが、1988年の台湾研修開始時に、軽いパニックになった。「あんな暢気な環境でなぜ?」と思われるだろうが、事実だ。
2017年に、サッカーの柴崎選手が、テネリフェに到着したての時、メンタルを崩したことが有った。その時、あんな便利な場所で耐えられないのは甘い、というコメントを出す人間も少なからずいたが、自分自身が、同じ経験(便利な場所だが、メンタルを崩す)をしているだけに、状況が良く理解できた。
メンタルの動きは、自分でも読めない。何がストレスとなって、襲ってくるか分からない。だから、海外赴任直後の人、環境が変わりたての人には、一般論・根性論を押し付けず、周りが、温かく支えるべきだと、何時でも思っている。これも、自分の経験あってこそだ。

上海隔離・2日目

集中隔離2日目。4食目にして、米の匂いが鼻について、食べ難くなる。中国で、安い弁当を連続で食べた方は分かると思うが、(最初のうちは、別に問題ないのだけれど)連続で食べると、米とか油のにおいで、うっとなる。
とは言え、持参した食品が十分あるので焦りはない。備えあれば憂いなしだ。取りあえず、食べられる間は、配給(?)弁当を食べようとしているが、その折には、持参した梅干しを添えている。今までの半生で、これだけ、梅干しを食べた事は無かった。いま、非常に、梅干しの有難さを感じている。

集団隔離が始まったばかりだが、予想通り、暗さがプレッシャーになっている。2004年(丸紅勤務時代)仕事のプレッシャーで、電気を消して眠れなくなった。その後、リンパが腫れ、最後は、ドアを閉めても寝れなくなった。最終的に、(ドアは、比較的早く閉めれるようになったが)電気を消して眠れるようになったのは、2019年。15年間も、暗闇に対する恐怖が有った訳だ。ともあれ、こういう時は、あまり感情を解放せず、内に込めることで耐え忍ぼうと思う。

ちょっと、話は変わるが、生き馬の目を抜く総合商社で、21年間、それなりの暴れ方をした自負はあるが、ただ、その代償で、メンタル面で追い詰められる事もあった。表面的には、平然と戦っている風を装っていたが。ただ、土俵際まで追い込まれても、そこで踏ん張って闘ったので今がある。また、自分は、土俵際に強いなと自信も持った。
こんな感じで、人は誰しも、各々の戦いが有り、それに打ち勝って生きているんだなと思うことが、よくある。

集中隔離場所に移動

長寧区の集合場所に行くと、ほどなくバスが来て、それに乗り込む。11時50分頃に、飛行機が駐機場に到着し、外に出たのが12時丁度。それで、13時にバスに乗り込んでいたので、それまでの行程は、迅速であったと言えよう。
バスはこんな感じで、のんびりと移動。

ホテルの部屋はこんな感じで、標準的なビジネスホテル水準だが、問題は、室内が暗い点。電気が暗く、窓の前に高い建物が建っているので、眺望が無く、全く日が射さない。また、通気の為、窓が開いたまま固定されているし、空調機は止められているので、防寒のために、厚いカーテンを閉めておかねばならず、窓のない部屋に近いイメージ。

初日の食事は、こんな感じ。食べられないものではない。昔、良く経験した弁当。

そして、外はこんな感じだ。1日、午前と午後に、防護服を着た人が検温が来る。食事は、6時、11時、17時を目途に、ベルが鳴らされ、外の机に置かれるので、5分以上経過してから(係員がいなくなってから)ドアを開けて取るようにとのこと。ごみは、14時頃に、1日1枚渡される黄色い袋に入れて、外に出す。隔離期間、掃除は無いし、タオルの交換もない。

デリバリーは、原則頼んではいけない。生活必需品のみ、やむを得ない場合は、1日1回、2品以内限定、指定時間内で可能。当然、酒や食べ物の出前を頼むことはできない。疫病と酒は関係ないのになぜ?というと、その趣旨は、「ここは隔離施設であって、ホテルではないから、係員に手間をかけさせるな」ということ。この隔離区域には、一般人は入れず、防護服で身を固めた係員だけなので、デリバリー配達者は、ホテルフロントまでしか入れない。それをドアまで持ってくるのが係員なので、手間をかけるようなことをしてはダメという趣旨。
何事も発想の転換で、そういうものだと思えば理解できる。これは、数日後に感じた事だが、結果、強制的に禁酒、カロリーセーブになるので、体調が日に日によくなった。その意味では、隔離健康法という感じだ。棚から牡丹餅。

上海到着後の手続の流れ

上海での入国について、忘れないうちに書いておこうと思う。
一部の情報は、香港から上海に移動する方に限定したものとなるが、その部分はニッチな情報という事で。

1.健康宣誓
まず、中国入国前24時間以内に、健康宣誓をする必要があるが、これは、香港入境時と、概ね同じ要領で、スマホで、QRコードを読み込み、出てきたフォーマットに情報を入力する形。
このQRコードは、例えば、キャセイの場合は、搭乗便の案内EmailにURLが有るので、ここをクリックすれば、出てくる。

僕は、まず、ウィチャット(英語版)でやろうとしたが、入国直前14日間に滞在した国・地域という部分に、香港が無い。中国(China)はどうか、People’s Republic of Chinaはどうか等、探したもののやはりない。全く進まず、時間切れになりそうで焦ったが、ウィチャット経由を止めて、税関サイトで申告したら、あっさり登録できた。ウィチャット設計ミスかと思われるが、(将来修正されるかもしれないが)香港から中国本土に移動する方は、税関サイトを使用した方が良い。

2.上海到着後
上海に到着すると、「サンプル取得の承諾書に署名」⇒「PCR検査」⇒「入国審査」⇒「バゲッジクレーム」⇒「(リニアの乗り場付近で)居住情報インプットとQRコード取得」⇒「行先(何区か)表示場所に集合」⇒「バス乗車」⇒「ホテル」と、流れるように進む。
ホテルも、区単位なので、選択の余地はない。少なくとも、長寧区の場合は、部屋も同様、選択肢無し。3食付きで、1泊360元の自己負担。

3.PCR検査
上海のPCRは、鼻の粘膜での検査であった。両鼻を、ひとつづつ。
丁寧にやってくれたため、痛さはなかったが、両鼻の奥まで綿棒が入り、ゆっくり入念に回転されるので(次は、逆回転)、喩えるならば、直腸検査の様な微妙な辛さが有る。

ここらの手続は、状況変化とともに、刻一刻と変わるであろうが、取りあえず、自分の経験(2020年10月23日時点)は、この様なもの。

香港出発、いざ上海へ

10月23日、朝7時半に香港空港到着。人は少ないが、ガラガラというほどでもない。1ヶ月前の朝の成田空港よりは、人が多い。

人が少ないため、搭乗手続、出境手続はスムーズだ。

キャセイラウンジに直行する。平常時なら、それなりの人がいるが、食事スペースは僕一人(後で、2~3人入ってきた)。一人に対して、3~4人がサービスしてくれるので、手厚いことこの上ないが、少々緊張する。何しろ、四方から見られていて、紅茶を一口飲むと、すすっと人が来て、継ぎ足してくれる感じ。

中国粥が欲しいというと、麺もどうですか?と他の係員の方が来て言うので、では、とワンタンメンを頼む。ところが、注文後に、中国入国時の健康宣誓をスマホでインプットしようとすると、これがうまく行かず、焦りに焦る。結果、(幾つかのやり方があるうちウィチャットサイトの設計ミスの様で、税関サイトを使用したら、あっさり終了)無事に終わって、麺が食べられるようになった時には、搭乗時間ぎりぎり。

31番搭乗口に向かう。向かう最中、熱心な呼び込みの人がいたので、ビッテルウォーターを4本買う。

無事搭乗。ファーストクラス1名、ビジネスクラスは僕1名。エコノミーは、おそらく15人程度。

前日、前々日共に、1日2時間程度しか寝ていないので、機中では目を閉じて休息する。着陸30分前ののアナウンスが有った直後に、食事はどうするか聞かれたので(寝ているので、待ってくれていた様だ)、和食を食べる。夜まで食事ができないので、一応、腹に入れておく。

そして、8か月半ぶりの上海に到着した。

引越し後、空港ホテルに移動

10月22日の9時半に引っ越し会社到着。香港の部屋を引き払う。1997年から23年間、香港の住居を維持してきたので、引き払うのは寂しいが、やむを得ない。今年は、特殊事情で香港に戻れず、8か月間、住まない部屋に家賃を払った。香港の高い家賃相場を考えると、これは痛い。状況が収束しない状況(自由に移動ができない状況)を前提にすると、香港に閉じこもるよりも、上海に行けば、北京、広州等、中国本土内を移動でき、活動範囲が広がる。経営上は、それが正解だと判断した。状況収束したら、また、上海、香港双方に居を構えるなどを考えればいい。


香港では、8か所のマンションに住んだが、このロイヤルペニンシュラが、一番居心地が良かった。また、借りる時はここにしたい。引っ越しを繰り返したので、部屋の中の荷物は最低限になっていたのは確かだが、何時もながら、引っ越し業者の方はてきぱきと効率が良い。これだけ面倒くさい事を、瞬時に片づける技能は、尊敬に値するなと思う。

引越しが終わり、港安醫院でPCR陰性証明を取得すると、オフィスに移動。但し、その前に、近所の三田製麺所でラーメンを食べることにする。一度も行っていなかったので、出発前にと思った次第。オフィスで16時まで仕事をすると、予約してあったリーガルエアポートホテルに移動。ここで1泊して、翌朝上海便に乗る。元々、朝8時便だったが、21日に、突如、キャセイドラゴン航空の即日営業停止と搭乗便のキャンセル通知が有り、出発できるか、不安に駆られたが(出発時期が遅れると、ホテル代もかかるし、再度、PCR検査を受けなくてはならない)、結局、親会社のキャセイが、同日9:20に便を出す事となり、事なきを得た。

当然の事ながら、エアポートホテルはガラガラ。同一料金で、空港ビューの部屋に替えてくれたのは嬉しかったが、全く飛行機が飛ばないので、あまり面白くなかった。

ホテル内のレストラン・カフェは、このpubが一か所だけ開いている。夕食にチーズバーガーを食べ、生ビールを飲む。本来は、7~8種類の生ビールがあるようだが、状況により、青島とアサヒのみ。香港の地ビールが飲みたかったので残念だが、やむを得ない。両方、一杯づつのみ部屋に戻る。

空港居酒屋という店が気になったが、残念ながら開いていない。