具体的な緩和措置は、以下の通り。
1.地域の拡大
上海、広東(広州・深圳・東莞・珠海の4市から全省に拡大)に加え、北京、天津、内蒙古、遼寧、吉林、黒竜江、江蘇、浙江、福建、山東、湖北、広西、海南、重慶、四川、雲南、西蔵、新彊が対象地域となった。
2.外国側地域の拡大
香港、マカオ、ASEANから、全世界に対象国が拡大した。
3.決済項目
貨物代金決済から、役務提供を含む経常項目全般に拡大した。
この内容は、既に、実務運用では規制緩和が実現しており、後付けで法規の改定を行った形となっている。
その意味では、意義が薄いと言えるかもしれないが、僕は、運用での緩和(法律の裏付けがない実務運用の先行)をもうしばらく実施して、弁法の改定は、その後に行うのではないかと思っていた。
人民元決済の施行措置が始まったのは、2009年7月の事であるので、1年未満で弁法の改定を行ったのは、僕の予想を上回るスピードだ。
規制が緩和されたとはいえ、まだ、「送金時に外貨に準じた管理が行われる事」、「経常項目に限定されている事(資本項目は適用外である事)」という原則は変わっておらず、その意味では、大幅な自由化が実現された訳ではない。
それでも、テンポよく法規の改正が行われている事実は無視できない。
僕は、人民元の自由化(ハードカレンシー化)を、5~10年後と観測しているが、もしかしたら、それより早いタイミングでの自由化が実現するかもしれない。
その意味では、人民元の環境変化は、暫く目が離せないとも言える。
同時に注目されるのは、外国企業の中国内人民元口座の開設が認められるようになってきている事だ。
従来、外国人個人は、パスポートさえ提示すれば、比較的自由に人民元口座を開設できたのに対して、外国企業の場合は、常駐代表処等の機構がない限りは、人民元口座の開設は認められなかった。
若しくは、外資企業設立前に準備口座を開く事は出来たが、これは、金額・使用共にかなり制限されたものだった。
これが、上海市、広東省で人民元口座の開設が認められるようになっている(非居住者外貨口座は、昨年より認められた)。
使用に際しては、諸般の注意事項がありそうだが、外国企業の口座開設に関する規制が緩和されているのは、環境変化としては大きい。
この意味でも、人民元管理は、徐々に緩和が実施されていると言える。