撤退サポートはリスクと隣り合わせ

最近、組織再編、効率的なビジネスモデル構築等のご相談が多いし、進出も、ここ数カ月またご依頼が増えてきた。

ただ、撤退のサポートも、現段階で数件請負っている。

その関係で、(あるクライアントさんの撤退作業が大詰めになったので)28日には、上海のとある地域の政府機関(労働関係部門等)と解雇条件の打合せ。

講演会前日には、数百名の従業員の前での解雇通告及び解雇条件の提示の場に立ち会う。
本来は、副総経理の胡さんと、提携先の弁護士のみが現場に立ち会う筈であったが、このステップで、工場に監禁された、工場の経営者が殴られた(僕の経験では、殴られた被害者は中国人で、日本人は被害なし。監禁事例は日本人だが)等の暴力行為を受けた事例が、過去に請負った案件でも数件ある。
部下だけに行かせるのは気が引けるので、僕も参加する事に。


30日朝9時に工場に到着すると、門は施錠され、出入り口には警備員が十数名待機。
物々しい雰囲気ではあるが、幸い、地方政府関係者が立ち会ってくれた(会場には入ってこない。工場の敷地内で待機)ので、警察も数名立ち会い。
法律に基づく支払いを行う、という回答なので、余分の補償を要求する従業員側が軽い騒ぎになりかけたが、警備員が誘導する中、無事、工場から出て、業務に戻れた。

ただ、その後(夕刻)工場内にクライアントの方が残っている状態で、従業員が工場を取り巻き、クライアントの方が監禁されてしまった。
工場から、クライアントが、中方パートナー経由で警察の派遣を要請したが、パートナー側に却下される。

この様な経緯を経て、当社に救助要請があったのが夜8時近く。
胡さんが、弁護士と共に所管の警察に行き出動要請。
僕も、夜の11時半にタクシーを捉まえ(車で1時間の場所)、警察に。


出動の基本的な了解は貰ったが、タイミングを明朝にして欲しいと言われる。
この時点で、破壊行為、暴力が発生していない為(数日前に、窓の破壊などは行なわれたが)出動が難しい。
労働関係部門等に同行を依頼し、説得の後、工員がこれを聞かない事を理由に救助するというステップを取りたいというのが警察の立場。
この時間では、関係政府の担当者に連絡を取れない。
工場前に数名警察を派遣し、暴力行為が行われた段階で、直ぐに出動できる状況を整えてくれたので、その意見を受け入れる事に。

僕が工場の様子を見に行くと言うと、「お前も監禁されるからやめてくれ」と警察に止められる。
そんな訳で、「今は動きようがないので、自分だけが残るから帰ってくれ」という胡さんの意見を聞いて、僕は明け方帰宅。
胡さんと弁護士は、警察で夜を明かす事に。


朝の8時から、警察の胡さん、工場内のクライアントと連絡を取り合う。
救助方法に、幾つか協議、検討が行われたが、最終方針が12時頃決定し、午後に出動。
無事、救助が行われた。

僕の講演(持ち場)が終わった段階で、胡さんより無事救助の連絡あり。
心よりほっとした。

僕も講演前2夜連続で睡眠不足(実は、解雇通告の前夜も緊張して寝付けなかった)。
胡さんは、警察で夜通し交渉していたので、不眠不休。

出動のタイミングに付いては、意見の相違があったものの、警察、政府関係者の協力も貰い、無事救助が完了したのは感謝。

本来の請負業務内容にはない仕事だが、撤退はリスクと隣り合わせ。
突発事項が有れば、解決しなくてはならない。

コンサルタントも弁護士も、問題を解決する手段が有って、初めてでできる商売。
デスクの上だけで仕事をしている訳ではないのである。
まあ、怖いけど・・・