石の上にも三年だ

「今の仕事にやりがいが無い」とか、「こんな事をする為に会社に入ったんじゃない」というセリフを吐く若者は多いだろうが、それを嘆く年輩の人自身が、若い頃、そんなセリフを吐いた筈だ。
僕も言った。

気分は炎熱商人か不毛地帯、という感じで入社すると(当時、不毛地帯は読んでいなかったが)、待っていたのは、船積書類の間違い探しで、来る日も来る日も、膨大な書類のスペルミスのチェックやホチキス止めだ。
おまけに、当時の上司は癖が有り(もう転職したが)、失敗すると、坊主頭にさせられた。

経理に配属されると、役員会資料や部長説明資料作りで、売上や利益の一覧表を作って、増減説明やレイアウト、四捨五入にやっきになった。
隣の課の表は太線なのに、こっちが二重線だと、「なぜ合わせない!」と怒鳴られ、○○現地法人の利益が伸びたのは何故と聞かれ、食料部のジュースだと答えると、「何ジュースだ?」と質問され、答えられなくて青くなったりした。

その時、同僚とこぼした愚痴が、「会社の中で、誰かがやらなければいけない仕事なのは分かるが、何で自分が!?」というもので、こんな事やっていても、何も将来の知識が学べないという焦りだった。

ただ、振り返ってみると、そうした一見意味のない仕事の中で、仕事の進め方、意思疎通の仕方、組織の考えが体得できた。
また、仕事の中で興味を持って、本業の会計・税務は勿論の事、経済学、財務分析等の本を読んで、会社の中に溢れているサンプルで試して学ぶ事もできた。

こんな感じで、石の上にも三年というか、最低十年くらい我慢して続けることで、知らないうちに会得する事がある筈だ。
これは、スポーツ選手が、腕立て伏せや腹筋を続ける様なもの。

そんな訳で、今の仕事が面白くないと言って、転職を続けると、結局、何も身に付けられない可能性がある。
中国で人材採用をしていると、1年毎に転職を繰り返し、その豊富な職種を売りにしている若者を見かけるが、やはり、我慢から学ぶ事も必要だと思う。
古めかしい発言かもしれないが、人間我慢も必要だ。