新しい事を始めようとすると

1年半ほど前から、とある縁で新規事業実現のお手伝いをしている。
原則として、僕は、パートナーマッチングや、商社的な動きはしないのであるが、ちょっと特殊で、個人的に興味がある分野なので、例外的に引き受けたもの。

まだ、詳細は話せないのであるが、中国に殆ど無いサービスという事で、実現まで結構時間がかかっている。
世の常として、今までにないサービスをやろうとすると、必ず、この国(例えば中国)は日本とは事情が違うので、その様なニーズはない。若しくは、定着しない、という事を、8割方の人が言う。
当事者となればなおさらだ。

ただ、僕の持論は、「アメリカにあって日本にないものは、必ず日本でも定着する。日本に有って中国にないものは、必ず中国でも定着する」というもの。
よって、この様な探し方をするのが、ビジネス開拓の早道だと考えている。

そんな事を考えるようになったきっかけは、1988年の台湾研修生時の家探しであった。
その時は、不動産仲介業者が少なく、部屋の貸し手が張った物件の張り紙を頼りに探すのが通常だった。
住む家を探すのに疲れて、同期の研修生に、「早く台湾でも不動産仲介業が普及すればいいのに」と言ったところ、彼の反応は、「台湾で不動産仲介なんて、普及する訳がない」というもの。
彼の理論は、台湾の人は合理的だから、不動産業者に手数料を払う訳がない。自分で連絡すれば、(貸し手も借り手も)安く契約成立するのだから、というものだ。
「そんな訳はあるまい。人間は便利さには勝てない。絶対、便利さに金を払うようになる」と思っていたら、それから2年ほどで、台北の街には不動産仲介業の看板が並ぶようになった。

新規事業を開始するには、慎重なリサーチも必要であるが、周りの意見を聞き過ぎると、(否定的見解が主流を占める事が多いので)なにもできなくなってしまう事が多い。
ただ、状況分析、消化できるリスク(金銭的、人的、その他)の範囲を限定した上で、自分が行くと決めたのであれば、それは意思を持って進めなければいけない。
ある意味では、人の意見を聞かない意思も必要だ。


また、事業を定着させる(売り出す)には、「自分の強みが何であるか」を分析し、「どう売るか(認知させるか)」を考える事が必要だ。

例えば、10年前に、僕が商社の中でコンサルティングを始めた時、周りの人は、ほぼ全員が無理だと言った。
その理由は、「世の中に、弁護士も会計士も溢れているのに、商社の管理部門に金を払ってものを聞く人間はいなかろう」というものだ。
ただ、僕は、弁護士・会計士と比べて(当然、有利不利が双方あるが)、「理論に加えて実務を知っている事」、「ユーザー側のニーズが分かる事」、「オペレーションの構築等に対応できる事」という強みを売りに出す、という作戦を立てた。
そして、差別化の為には個人名を定着させる事だと考え、本を出し、新聞・雑誌等に連載を受け持った。

これは一例であるが、つまるところは、どんなものでもやりようがある。
人が反対意見を言うのであれば、それを分析した上で、反対の論拠を突き崩すように行動していけばよいという事だ。

素直な人は、開始時点で殆どの人からネガティブな意見を言われると、納得してやめてしまうのであるが、僕はそれほど素直ではないのか(?)、これ!と決めた事は、人が反対を言ったとしても、ふふんと聞き流しながら、自分が正しいと思った道を歩いている。
これは、良し悪しの問題ではなく、性格の問題だが。

そんな訳で、今お手伝いしている事も、時間軸はさておいて(これはちょっと読めない部分がある)、何れは実現できるだろうと、比較的楽観している。
関係者に、前向きに動く気持と、実現させようという意思さえあればであるが。

前向きな気持は、人の心を動かしていくのだから。