サービスに対する増値税の相談

最近、サービスに対する増値税課税(一部サービス項目の営業税課税から増値税課税への切り替え)のご質問が多い。
上海では、2012年1月1日より既に切り替えが実施されているが、財税「2012」73号により、北京市は2012年9月1日より、江蘇省、安徽省は2012年10月1日より、福建省・広東省は2012年11月1日より、天津市・浙江省・湖北省は2012年12月1日より切り替えが実施される事が決定した事が要因であろう。
上海以外の企業も、他人事という訳にはいかなくなってきたもの。
この様な形で拡大してきているという事は、数年後に、流通税は増値税に一本化(営業税は廃止)される方向にあると考えてよいのであろう。

二重課税を排除すべく、流通税の一本化をすること自体は良い事であるが、現状を見てみると、
・ 物流業の税率が、3⇒11%に大きく切りあがった。
・ ゼロ税率、免税という、輸出の特例に関する対応が、現時点では有効に機能しているとは思えない(物流業は、国際物流では増値税の輸出還付が受けられるため、税率が高くなっても損をしないとう前提であろうから、これが有効に機能しなければ大問題だ)。

という問題がある。

また、税務理論から言えば、営業税はフィーの受領者が納付する税金。増値税は、顧客に転嫁する税金であるが、実際のビジネスはそんなに簡単に割り切れるものではなく、
・ 今までの利益をベースにして価格調整や、税金の負担者の再取決めが行われる。
・ 税制変更のメリットがある場合、そのメリットをどの様に分け合うか、という企業間の交渉が始まる。
という状況となる。

制度が変われば、この様な泥臭い問題が必ず発生する。
上海地域は、既に半年以上が経過しているので、議論がひと段落した状況であろうが、今後は、他地域でこの様な議論が開始される。
その為の準備(議論をするための制度理解)が行われているという事であろうか。

ビジネス文化の違い

ビジネス感覚の違いを言えば、中国は、「知らない人間に対しては、性悪説でとことん疑う文化」、欧米は、「信じたふりをしながら、心の中では疑う(自分もすきあらば相手をだまそうとする)文化」、日本は、「疑いながらも性善説を捨てきれない(というより、捨てない)文化」という感じであろうか。

中国では、会計担当が現金を受け取ったら、客の前で偽札かどうか確認するのは基本動作だし、(不渡制度が確立されていない事もあり)企業が振り出した約束手形は、普通の企業は受け取らない。
銀行が支払い保証をして、初めて受け取ってもらえる。
銀行も企業を信用しないので、100%の現金担保を積んで、初めて手形の引き受けに応じる。
税務の発票制度というのも、その文化の象徴的な存在だ。
人は脱税をする、という大前提があるため、税務局にデータがつながっている領収証(発票)しか、証憑としか認めない。
日本式の領収書、つまり文房具屋で買ってきた用紙に社印を押した領収書は、中国では不正領収書扱いで、誰にも受け取ってもらえない。
中国で、収据といえば、悪・不正の象徴という目で見られるが、何のことない、日本式領収書の事だ。
因みに、中国では、社印も作成してすぐ公安局に届け出が必要だ。

そんな文化の違いがあるが、それが常識だと思えば、不思議と腹も立たないし、当たり前だと思う。
払ったお金を偽札でないか、目の前で確かめられるのは、当たり前の話だし、掛け売りなんか普通はしてくれないと割り切れる。

会計上の収益認識基準に関する、発生基準との齟齬(中国流発票基準と呼ばれる基準)も、基本的には、人をどこまで信じるかの文化の違いに起因する面が大きく、これは、解消が難しいであろう。
欧米の発想が、人を信じたふりをして(決して信じていない筈だが)、開示義務の強化で縛っていくという、事後規制を原則としているのに対し、中国の発想は、どうせ人はだますのだから、だませない様、取引(計上)段階で縛ろうという、事前規制を原則とするからだ。

ビジネスの国際化のなかで、ここらの会計上の考え方は、今後、更に問題となっていくだろうが、上記の理由で、融和はなかなか難しいのではないか。

ただ、実務レベルでいうのであれば、中国でビジネスをするのなら、中国の文化に従わなくてはならない(欧米なら欧米流だ)。日本の感覚で掛け売りをすれば、不良債権を抱える懸念が高い。
郷に入っては郷に従え。
中国で成功したいのであれば、中国流のやり方を理解しなくてはならない。
これは、善悪や好き嫌いの問題ではなく、生き残るための必然だ。

巨大リラックマ

先日チムサッツイを歩いていると、路上に人だかりが。
みんな、上を見て写真を撮っていた。
何かと思えば、ウェディングドレスの展示などの隣に、巨大リラックマ人形が有った。
僕も取りあえず撮影。

豚王に行く

10~12時にかけて、BSジャパン「アジアの風」の収録。
その後、深圳に移動する前に、オフィスの近所にできたという豚王に行く。
評判は聞いていたのだが、オフィスの付近にできているのは知らなかった。
昨夜のスナフキンの会で、幹事の佐藤さんが教えてくれ、それをちらっと秘書の水嶋さんに話したところ、「今日行かねばなりません!」と色めき立っているで、並ぶことが嫌いな僕ではあるが、一緒に行く事になったもの。
時間が早かったためか(香港の昼食時間は、13~14時が主流)、ほとんど並ばずにすんだのでラッキーだ。

それが終わると、深圳行きの電車の中でひたすら仕事。
ただ、一心不乱にPCを打っていたら、とんこつが効いてきてちょっと気持ち悪くなってしまった(乗り物酔いという意味で、豚王が悪い訳ではない)。
移動前のとんこつラーメンは控えた方が良いかも。

今日は、深圳行き帰りの電車(片道40分)の中で仕事。
昨日も、広州往復の電車(片道2時間)の中で仕事。
どこでもインターネットが使用できて、仕事ができるのは有りがたいのだが、息抜きができなくなってきたのは悲しい。

お知らせいろいろ

朝便で広州。
広州で4件(JETRO広州相談会)面談して、香港に戻る電車の中。
香港到着後、スナフキンの会・香港に出席予定。
先日は、スナフキン・日本を開催したが、上海、香港から帰任された方々で、異様に盛り上がった(というより、異様に盛り上がっている方が数名いた)。
普通は、海外に出ると暴れ出す(自我が開花する)人が多い中、先日のメンバーは、帰国した事で、よりパワーアップした感じであった。
たくましい。

若干のお知らせ。
先日、取材を受けた、月刊プレジデントの発売は8月末(5~6ページの掲載)。
明日収録するアジアの風(BSジャパン)の放映日は、まだ聞いていないので追って報告します。
また、先日受けたアエラ(AERA)の取材が記事になるのは、8月20日発売の8月27日号(但し、これは若干のコメントと名前が載るだけ)。
というのがメディア関連。

また、8月28日には、今月から開始されている、貨物代金決済改革に関するセミナーを開催します。
共同講演者は、前から一度共演してみたかった、中国外貨管理研究の第一人者で、先駆者的な位置付けの、みずほ総研・桑田良望理事。
更には、国家外貨管理局の顧問を務める、金杜弁護士事務所の劉新宇パートナー弁護士。
それに僕の3人で、「貨物代金決済は、どの様な内容か。何が変わるのか」、「改革により、ビジネスオペレーションはどの様な影響があるのか(できるようになる事、できなくなる事は何か)」、更には、「今後の外貨管理政策は、どの様な方向に向かうのか」という点を、各々の立場から分析・発表する予定です。
今回の制度変更は、過去数十年で最大の改革となりますので、是非、実務にお役立てください。

<講演内容>
2012年8月28日(火) 13時30分~16時30分 (受付開始13時15分
T’s渋谷フラッグ7階 ROOM 7M 
東京都渋谷区宇田川町33番6号 TEL: 03-5457-7881
一般:(税込)15,000円/1名
優待:(税込)8,000円/1名 ※下記該当者様に限定
・チェイス・チャイナ会員様
・MCH会員様
・講演者紹介の方
・過去のチェイス・チャイナ主催セミナーに参加された方
第一部 劉新宇 北京金杜法律事務所 パートナー弁護士
「経常項目決済の外貨管理法令・政策と、今後の外貨管理の方向性」
第二部 桑田良望 みずほ総合研究所(株) 理事
「貨物代金決済改革の概要と従来の制度の違い」
第三部 水野真澄 Mizuno Consultancy Holdings Ltd. 代表取締役社長
「貨物代金決済の実務上の影響と今後可能となるビジネスモデル」

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疲労が噴き出す週末

BSジャパン「アジアの風」の収録が7日(火)に決まったので、その準備中。
こういう番組に出ていると、スーパー等でも品揃えや価格をよく見るようになる。
面白いものだ。

ここしばらくの過密スケジュールの為、昨日(土)は、疲労のあまり、歩くどころか、座っているのも辛いという状況。
しばらく働き過ぎだったので、仕事をしないと決めてひたすら寝る。
夜はクライアントの方と会食だったが、親しい方なので楽しく食事。
おかげで、今日は比較的体調が良い。
番組から依頼された資料提出(製品に関するスコアシート)も無事提出したので、自炊して今日は早く寝よう。

明日は、日帰り広州出張。
朝便で広州に出発し、JETROの相談会をこなし、夜便で帰任。
明後日は、午前中にアジアの風の収録をして、昼から深圳日帰り出張。

引き続きハードではあるが、週末のんびりできたので大丈夫であろう。

外高橋保税区との講演会

7月31日に日本で4時間の講演会(企業研究会主催)を終わらせると、8月1日に上海に移動。
2日は外高橋保税区との共同講演会。
約400人の方に参加頂いた、大規模なものになった。

外高橋保税区管理委員会の主任、税関・検疫局の局長クラスも講演者として参加したが、僕は最後30分のQ&Aを担当。
実は、僕が何を発表するかというのが、講演の直前まで決まらず不安な状況であったが、結局、10個頂いている事前質問に対する税関・検疫局等の回答を代理発表し、更に僕が解説を加える事になった。
事前準備をする時間がなかったので、当日10時から、講演会場で外高橋保税区関係者と、回答の趣旨確認と認識の祖語の有無に関してすり合わせ、ぎりぎりセーフのタイミングで発表にこぎつけた。

こんな感じで慌ただしい状況ではあったが、外高橋保税区からは、VIP待遇で接してもらったし、僕の紹介の際には、ずいぶん持ち上げてもらったのでその点は素直に感謝。
外高橋保税区と講演を行うのは4回目。
外高橋保税区は、3年前の、水野(上海)商務諮詢有限公司の開業記念講演会の時は、応援に駆け付けてくれたり(応援講演をしてくれた)、優秀パートナーに2回選んでくれたり(特に、僕の起業直後に選んでくれたのは嬉しかった)など、随分、親身になって接してくれた。

思い起こせば、1992年。
丸紅の外高橋保税区法人設立準備で、初めて外高橋保税区を訪問したのが、僕と外高橋の関係の始まり。
その時は、浦東地区自体が未開発の状況で(浦東に行ったらタクシーが拾えなかった)、保税区はまさに原っぱの様だった。
そこから十数年で、浦東は高層ビルが密集する先端地域となり、外高橋保税区も巨大な存在となった。
いま、改めて20年の変化に驚くと共に、初めて浦東・外高橋保税区を見た時の、20代の僕を思い出す。
「中国の会計税務を勉強しても、誰も評価してくれないだろうし(20年前はそんな状況だった)、将来日の目が当たらないかもしれないけど、これを研究する事は面白いし、夢がある。だから、中国の会計税務を研究するし、丸紅上海(保税区法人)の経理規則・マニュアルを僕が作ってみる」と決めて、上司に指示もされていないのに(誰からも求められていなかったのに)」、黙々と会計規則を読にみながら、ワープロに向かっていた。
20年後に、こんな状況(中国のプレゼンス、僕の仕事、etc.)になるとは、予想すらできなかった。
だから、これは先見性ではなく、純粋な運である。
ただ、何かに興味を持って、ひたすらやり続ければ、十数年後に、何らかの形で認められ、花が咲くのは確かだと思う。
花の大きさまでは分からないが。
僕も、20年間、興味を持ち続けた事で、こんな形で日の目を見た。
改めて、よかったと思う。


尚、今回のおぜん立てをしてくれたのは、昔僕の会社(丸紅の子会社時代)で働いていた蘆さん。
改めてお礼がしたい。

これから上海で講演

昨日、日本から上海に移動。
今日は、これから外高橋保税区との共同講演会で、出番待ちの準備中。
380名様の申し込みとか。
満員御礼。
今回は、税関、検疫局に対する質問(10個頂いている)に対して、税関・検疫局の回答案をベースに、僕が回答する事になっている。
外高橋の税関・検疫局幹部も参加する中、彼らを代理して僕が回答するというのは不思議な気もするが、久々の機会で面白い。

因みに、日本は忙しかった。
講演会2回。
更に、面談も多かったので、灼熱地獄の中を、スーツを着て歩き回るのは拷問の様であった。
更に、朝の通勤ラッシュ。
ぎっしり詰まった電車の中には、本を目の前に掲げているものの、視線は虚ろでぶつぶつつぶやき続ける男性、荒んだ目で周りを見回している女性、ホームには倒れている人間、そしてそれに目もくれず通り過ぎる人々等。
この光景は怖い。
この光景を初めて見る外国人は、胆が縮み上がるに違いない。

そんな事を久々に感じた日本滞在であった。