返還50年後香港はどうなるか

香港が中国に返還されたのは1997年の事。
一国二制度の下、50年間の資本主義の継続が認められる事が、香港特別行政区基本法に規定されており、現時点でも中国本土とは全く異なる経済システムにより運営されている。
ただ、返還時には、50年といえば、永遠とも錯覚してしまいそうなほど先の事に思えたのだが、既に、15年半が経過して、あと35年弱で期限到来となる。
50年というのは、その間に、中国と香港の社会制度・個々人の所得格差が小さくなり、ソフトランディングできるという意味での移行期間かと思うのだが、実際、この15年でも随分大きな変化があった。
返還後、アジア金融危機やSARSで疲弊した香港の経済を復活させたのは、中国本土との自由貿易協定(同一国であり協定という名称は使われていないが、実質的な協定。租税協定も同じ)であるCEPAであり、中国からの旅行者が落とす観光収入であった。
最近でも、オフショア人民元マーケットとしてのポジションを打ち出すなど、中国に対する経済的な依存度は、年々増している様に思える。
あと35年経てば、格差は随分小さくなるだろう。
ただ、計数的な格差がなくなったとしても(若しくは、逆転したとしても)、ソフトの違いは解消する事はないと思うし、その違いは何からくるかというと、社会システムの自由度の違いだ。
香港には、英国統治時代に構築された社会システム、外貨管理・金融をはじめとする、極めて自由な制度、言論・報道の自由等が維持されており、これが、市場の信用を構築している。
インターネットひとつとっても、中国本土では、検閲によるE-mailやインターネット接続の遅さにイラつく事が多いが、香港では、この様なストレスはない。
これが、50年経過後、どうなるのであろうか。
私見にはなるが、返還後、50年が経過したとしても、香港が中国本土と同一の制度になる可能性は低いと思う。

これは、香港の経済の自由度を保つことで、他の軽課税国(BVI、ケイマン、シンガポール等)に向かう投資を、手の内に呼び込むことができ、中国として、最も有利な香港の活用方法であるからだ。
香港返還後、CEPAや租税協定を結ぶことで、香港の自由な経済制度をバックアップしたり、同じく一国二制度下のマカオで、カジノを容認するだけでなく、米国、豪州等の資本の呼び込み、自由競争を助長する事で発展させている動きは、50年経過後の特例措置の継続を想定している様に思える。
また、物流・通関制度などの面で、香港はもっとも完成された保税区域(自由貿易区)であるが、中国は、改革開放当時から、経済特区、保税区、その他の特別区域を設置し、税制、外貨管理、通関管理等の特例を認める政策を取っており、地域を限定した特例的措置を実施する事に付いては、ノウハウもあり、抵抗も少ないと思える。
最近打ち出された、全土の保税区域を、総合保税区として自由度を高めていく方針や、珠海横琴新区、深圳前海湾、海南島での、税制、金融、免税商店関連の措置を見ても、別格の自由貿易区である香港との格差を埋めるテスト措置を打ち出している様に思える。

この様に、経済制度自体の自由度の維持に付いては、個人的にはあまり心配していないのだが、言論・報道の自由などに付いては心配だ。
50年経過後、この様な面での統制が強まれば、間接的に、金融・商流などにネガティブな影響を与える懸念がある。
この点を、中国政府がどう判断するかが、懸念されるところだ。

50年が経過する頃、僕は既に80才を越えている。
返還3か月前に香港に赴任し、返還は香港で迎えた僕である。
50年経過の瞬間も、何が起こるかを、是非、自分の目で確かめたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です