撤退に関わる嘘と真実

先日、「中国の事情がよくわかっていないのだが、中国では撤退が困難なので、夜逃げをせざるを得ない、という話をよく聞くが本当か」という質問を頂いたが、これは全くのデマである。
前にも書いたが、過去、20数年間で、直接間接合わせれば(間接というのは、実際の手続の代行はしていないけれど、助言の形で関与したという事)、100件以上の撤退に関与したが、撤退は必ずできるし、残余金があれば、必ず出資者に返金できる。
デマが横行するのは、経験者や専門家の誇張によるものであり、また、十分な検証も無く、報道・インターネットが、それを取り上げた結果であろう。
経験者の誇張は注目を引くため。専門家の誇張は、商売獲得目当てである。

破産というのは、債務履行を果たさずに会社を解散する行為であり、夜逃げというのは、解散手続もせずに逃げてしまう行為である。
中国の外資企業は、通常、有限責任会社であるため、出資者は出資金の範囲で責任を負う。
債務保証をしていない限り代理弁済義務は無いため、破産自体は法律に則った手続ではあるが、安易な選択肢として考えるべきではないと考えている(夜逃げは論外だが)。
破産という行為を、用語の適切性を忘れて平たくいえば、借金を踏み倒して逃げる事である。
踏み倒される先は、銀行、企業、従業員など様々であるが、いづれにしても、人の信用を裏切り、相手を傷つける行為である。
出資者自身が行き詰まり、連鎖的に子会社も破産するのであればやむを得ないが、日本では隆々としている企業が、安易に子会社を破産させれば、企業としての品格が問われる。
僕のクライアント様は、非常に真摯な方々であるので、僕が関係する案件で、破産という手法が取られる事は無い。ただ、担当者の方が、上司・関連部署から破産の可能性検証を求められる事があり、その際には、「破産の罰則行為自体は軽いが、風評リスクがあるので、中国での事業継続を検討するのであれば避けるべき、と回答されては如何でしょうか」とお答えしている。
オブラートに包まず表現すれば、「返せる金があるのに借金を踏み倒せば、必ずつけは回ってきます」という事になるのだろうか。


昨年、ある雑誌に、従業員の解雇に伴い経済補償金の支払いが必要となる事が、中国リスクの一つという様な事が書かれていたが、日本であっても従業員を解雇する際には、退職金を払わねばならない訳で、同じことだ。
撤退したいが経済補償金は払いたくない、という事を言われる方もいるようだが、自分が同じ事をされたら(退職金を踏み倒されたら)どう思うだろうか。
海の向こうであれば、人・企業が守るべき約束を果たさなくてもよい、という理屈にはならない。
困難な局面で、人の内面が表れる。
撤退は辛い作業であるが、担当者やその企業の人格・品位が問われるステップでもある。
苦しくても、襟元を正して対応すべきだと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です