陳浩基を読んで香港を思う

陳浩基の「網内人」を読んだ。この作家は、昨年「13・67」を読んで興味を惹かれ、次に「世界を売った男」。これが3作目。
なかなか創作が上手い(読ませる)作家であるが、この作品は、香港内の貧困がテーマとなっているので、息苦しさを感じさせる作品(とは言いつつ、最初の部分を過ぎると、謎解きのテーマに移行するのだが)。
僕自身が1985年に初めて香港を訪問し、その活気に惹かれ、その後、1997年から香港駐在を始めたので(1997~2020年迄の居住)、香港に対する思いは多々ある。香港ドリームの実現すべく、野心を持って這い上がっていくバイタリティに魅力を感じていたが、一度、貧困に身を置いてしまうと、這い上がるのが至難であること。中流以下の立場では、上がり続ける物価(元から高い不動産価格が、過去15年で3.5~5倍になっている)で、日々の最低限の生活すら苦しい事が、臨場感を持って書かれている。

これに対する打開策が、中国本土が立案している大湾区計画であり、理屈からすれば、この推進(広東省と香港の一体化)により、雇用や住宅問題が大きく改善されるのは確実である。ただ、そうであっても、本土との関係を望まない層が少なからずおり、これが、香港の貧富の差と貧困をさらに複雑にしている。「難しい」とういうのが、正直な感想。
さて、そんな話はさておき、香港を舞台にした小説を読むと、出前一丁が食べたくなるのが必然だ。香港の茶餐庁では、出前一丁に目玉焼きとハムを乗せた朝食をよく食べた。吉野家では、牛のせ出前一丁も有ったな。

そんなことで出前一丁を茹で、過去の写真を眺めてみる。