これから日本(日経新聞・みずほ総研主催講演)

先週は、月~土と6晩連続自炊。
自炊が続くと、孤独感で夜寝られなくなる場合があるので、基本的には、連続するのは避けているのだが、仕事に追われていたのと、冗費節減を自分に課すことにしたので、その関係で。
冷蔵庫の中が随分片付いた。
一人暮らしも長くなると、炊き込みご飯を作ったり、余ったご飯をラップでくるんで冷凍したりなど、我ながら芸が随分細かくなってきた。
必要に迫られると、人間変わるものだ。

厦門保税物園区

これから日本に移動。
29日の日経新聞主催講演会が主目的。
苦しいレジュメ作りが終わったと思ったら、昨日から、みずほ総研主催講演会(12月11日)のレジュメ作り。
こちらも7時間の講演会なので、レジュメがかなりのボリュームになりそうだ。
今回は、ビジネスモデルごとに、税務、外貨管理等をパターン化して簡潔に(一問一答形式で)解説する予定。
また、図、写真も多めに使う予定。
やはり、「保税物流園区というところがあって、ここで、一日遊が行われているのだが・・・」という解説をしても、見た事が無い方にはピンとこない。
ただ、こういう写真を使えば(本当は、中にトラックが停まっている写真があればベスト)、一瞬で分る訳だ。
こんな感じで、分りやすく解説していきたいと思う次第。

因みに、みずほ総研の講演会のテーマは、
(図解と事例満載でわかりやすい)ビジネスモデルが理解する中国外貨・通関管理と利益回収、税コスト)
副題:送金手続や決済、通関手続、利益回収、注意したい法制度や税務上の問題について実践解説

詳細・申し込みはこちらです。

経費節減も方法を間違えると

一週間ほど前に、上海で鉄板焼きを食べに行った。
一時期はよく行った店だが、4年程足が遠ざかっていたので、久々の訪問だ。
当時は、結構流行っていたが、客がほとんどいない。
僕達の他は一組だけだ。
不思議に思いつつ、アワビ、ハマグリ、タコ、ホルモン等の料理を頼んでみる。
ぬるい。
出てきた品は、湯気も立っていない。
これをテーブルの鉄板に置いた途端、じゅっ!となればよいのだが、料理が出てきたのは、店員さんが、鉄板のスイッチを全開にしてから20分経過後。
それでも、鉄板は手で触れる。
「何とかなりませんか?」
というと、「スイッチは全開にしたので、もう少ししたら熱くなります」との回答。
これは中国語での交渉に限る、と考える。
「20分たって温まらないものが、これ以上たっても温まらないでしょう。壊れてるなら場所を変わるし、全ての鉄板が壊れてるなら(熱くならないなら)奥で熱くして持ってくるなど、何らかの方法を講じてください」と、中国語で交渉する事15分。
最初の2回は「無理だ、待ってくれ」と言われたが、それでもあきらめずに、3回に分けての交渉。
3回目の交渉後、下がった店員さんが、店の奥にいる人間と、大声でやりあっている声が聞こえ、その後、いきなり鉄板が熱くなる。
中央管理か!元で電気かガスの供給をコントロールしているのか!?
と驚く。
ただ、喜んだのは束の間で、少しするとまた熱が下がり、アワビやハマグリは冷たいままだ。
これ以上交渉するのも疲れるので、食べたかったステーキやそば飯は断念して店を出る。
ぬるい鉄板焼き。
寒々しい気持ちになった一夜であった。
味はそれほど変わっていなかったので、燃料費をケチらないのであれば、また行っても良いが、このままならもう行くまい。

収入減による経費削減を講じるのは、組織として当たり前だが、メインのサービスの質を落とすと、負のスパイラスに落ち込む。
鉄板焼きの最大の魅力の一つは熱。
これを削っては、客が遠のくのは自明の理。
料理店だけでなく、会社経営も同じ。
組織を運営していれば、苦しい時もあるが、そんな時でも、サービスの質を落とさないように努力するのが、経営者の手腕だ。
この方法を間違えると、弱った組織に、自ら止めを刺す事になってしまう。
こんな事例は、料理店だけではない。

中国で会社移転が難しい理由

前回の続き。
中国で、何故、住所移転が難しいかというと、通常の会社は、市単位で会社登記がされている事や、生産型企業で免税・保税設備がある場合、税関所管が異なると、その状態での移管(設備転廠)が出来ない事(課税処理して移転しなければいけない)。
そして、前回簡単に触れた、税収面での問題が生じる事が、主な要因である。
シリアスな度合いで行くと、税収面が一番重要だ。
税務登記は、そのままの状態で移転できる訳ではなく、既存の税務登記を抹消し、その後、移転先で新たに税務登記をしなければいけない。
登記抹消に伴い、税務調査が行われるし、既存の登記抹消申請から新規の登記ができるまで、発票の起票ができない。
よって、税務調査が長引けば、最悪、数ケ月発票が発行できない期間が生じる。
中国のビジネス制度は、発票をベースに組み立てられている面があるため、発票起票ができないという事は、実質的な営業停止を意味するのである。
更に、増値税の控除・還付待ちが有る場合、登記抹消と共に、権利をはく奪されてしまう。
これに、移転元・移転先の税収確保をベースとした綱引き、という泥臭い話があるので、市を跨ぐ移転というのは、まず無理と思った方がよい訳だ。
2年ほど前、省を跨ぐ移転を検討された企業があったが、日系、中国系問わず、約10社のコンサルティング会社に請負を断られ、結局断念した、という出来があった。
市・省を跨ぐ移転は、これほどやっかいなのである。

因みに、市内であれば、移転実例はそれなりにあるのだが、区が一つの税収管理単位(言い方は悪いが縄張り)となっているので、それなりに手続が面倒だ。
先に既存の税務登記を抹消し、その後、新規の税務登記というのは、市を跨ぐ場合でも同じで、基本的には、市内であれば、許可が得られる(嫌がらせをされない)ケースが多い、という、運用面での違い。
ただ、これを改善する動きはあって、上海では、上海市国税・地税局2012年第1号という、区を跨ぐ移転を迅速に行う事を指示する公告が出されている。
ここでは、移転を希望する納税者に、税金未納などの状況がない限りは、所管税務局は速やかに受理し、約1か月以内に、税務登記抹消手続きを行わなければいけない事が規定されている。
法律通りに手続が行われれば、営業空白期間(発票が起票できない期間)は、1か月程度で済むことになり、移転手続きも容易になる。
ただ、実務論から言えば、所管税務局が「過去の納税状況に疑義がある」と言えば、受理しない事も出来る訳で、本当に、容易な移転手続きが可能となるかには、僕個人としては疑問がある。
とは言え、問題の存在を認識し、改善努力をしている点は、評価すべきと言えるであろう。

ただ、中国では、(区内移転ならさして難しくはないが)オフィス移転ひとつをとっても、こんな感じで煩雑な手続きが要求されるのである。

中国のオフィス管理と移転手続

11月の講演会は1回だけなので、前半は比較的のんびりできた。
ただ、11月29日に日経新聞主催(7時間)、12月7日に恵州(広東省)日本人会主催、11日にみずほ総研主催(7時間)と、短期間に3つの講演会が集中するので、レジュメ作りがちょっと大変な状況だ。

昨日は、夕方に、日経新聞主催講演会のレジュメ作成が終了。
70ページのレジュメと図・写真が20個以上あるので、結構骨が折れた。
その後、三井住友銀行月報と、三井住友コンサルティング会報の原稿に取り掛かり、夜10時までかかって書上げた。
三井住友銀行は、今後の保税区域政策。
NNAに先日書いた原稿と、テーマは同じだが、違う視点から完全に書き直した。

三井住友コンサルティング会報は、ネタに困り、新しいネタではないけれど、中国の登記管理、というか、会社の実態管理と、住所の移転に付いて、3000字程度で書いてみた。
日本では当たり前にできる事が、中国では認められないという典型的な事例で、知らないと、思わぬトラブルに発展する可能性がある事項。
紹介したのは以下の3点。

①中国ではペーパーカンパニーが禁止されている。
そのため、会社設立申請時に、実態がある運営をする意思がある事を証明するため、設立予定の会社が使用する不動産を購入・賃借し、その契約書を提示しないといけない。
(より正確に言えば、契約書を不動産管理部門に登記した登記証の提示)。
では、会社がまだできていない状況で、誰がどうやって契約を結ぶのか。

②制度はその通りだが、実際には、登記住所のみ(バーチャルオフィス)を受け入れている地域が有る。
この様な地域に登記すれば、オフィスなしで会社を運営する事ができる。
若しくは、本店登記地をバーチャルとして、実質的なオフィスを支店・弁事処形態としている事例が有る。
この様な形態のメリットは、市内であれば、支店の移転手続は容易であり、状況(顧客事情・オフィス家賃の変動等)に応じて、オフィスを移動させることが可能な点。
では、リスクは何か。

③中国では、本店登記住所の移転が難しい。
市を跨いだ移転は極めて困難で、先ず、できないと考えた方が確実。
市内移転は可能であるが、それでも、区を跨ぐと、徴税管理の観点から、移転元と移転先の綱引きが生じるので、面倒なことが多々ある。
では、区を跨ぐ移転で生じる問題は何か。解
決方法はあるのか。

詳細は、同社の会報で読んで欲しいのだが、③の点に付いては、次回のブログで簡単に紹介してみよう。

生兵法は怪我のもと

かなり前になるけれど、新聞で格闘系のエクササイズ(格闘技の動きを取り入れたエクササイズ)が流行っているという記事が有った。
これ自体は良い事だ。
格闘技の動き(パンチ、キック)等を習うのは楽しいし、効果的にカロリー消費もできる。
更に、一人の時でもシャドーボクシングの形で、手軽に運動できる。
ただ、習っている女性のコメントとして、「強くなったと実感している」、「試してみたいので、襲われるのがちょっと楽しみ」などというのが有ったが、これは大きな誤解だ。

僕が大学で合気道をしていた時、1年間は乱取りをさせてもらえず、2年生で初めて上級生と練習試合をした。
その時、思い知ったのは、如何に自分の技がかからないか。上級者の技を逃げられないかだ。
ボクシングも同じ。
格闘技をやるなら、殴られる痛み、関節を極められる痛み、そして恐怖。
それをしっかり体験しないと、自分が強くなった錯覚に陥ってしまう。

自分のイメージだけでやっている時は、簡単に相手を投げられる、殴れる気持になりがちだが、実際やってみると大違い。
格闘技をやるたびに、如何に自分が弱いかを認識する。
よって、街中で戦ってみたいなどとは思わない。
空手でも合気道でも、初段~二段程度では、街中では負ける可能性の方が高いし、相手が二人以上であれば、ほぼ負けると思っておいた方がよい。
よほど強くなるのでなければ違うが、そうでなければ、一番の護身術は、危険に近づかない事。早く逃げる事だ。
この意味で、中途半端に格闘技を習って、変な自信をつけるのであれば、却って習わない方が、良い護身術になると言えるであろう。

通信状況

昨夜、上海から香港に。
上海が10度、香港が25度と、温度差が辛い季節になってきた。

ここしばらく、上海では、E-mailの送受信状況が悪く、ちょっとストレスが溜まった。
(Googleは開くが)Gmailが開かない。
outlookも、書類を添付したものは送受信が遅く、連載原稿提出に手間取った。
この点、香港に移動すると、通信状況が良くほっとする。

僕が初めてemailを使ったのが、17年ほど前なので、遠い昔というほどではないが、既に、emailやインターネットがない生活は、想像もできなくなった。
便利さには、本当に早く慣れてしまうものである。
因みに、僕が最初にemailを使ったのは、前職の社内メール。
送信してしまえば、時差関係なしで仕事(個人対個人のコミュニケーション)ができるというのが驚きだったし、作業した文章や図を添付して送れば、相手に編集してもらえるというのも、当時としては驚異の出来事だった。

商社では、テレックス信仰が強かったので、email導入が比較的遅かった。
他業種の友人より、「まだテレックス使ってるとは、遅れてるな」と言われたが、そうではない。
戦乱時の中近東、アフリカ等で、電話線が使えなくなった時も、テレックス専用線は通じて、命綱となった、という実績を踏まえてのもの。
過酷な環境(戦乱の発生)が前提となっていたため、テレックスからE-mailへの切り替えが遅れた訳である。
そのため、1990年代中盤まで、新入社員には、テレックス用の略語集が配られた。
数えたことはないが、1千以上の略語はあったのではないか。
FYI(For Your Information)、PCI(Please Confirm Immediately)などは分かりやすいが、AAR(Anxiously Awaiting For Your Reply)とか、良く分からない略語の方が多かった。
通信費を節約するための略語なので、専用回線を持ってしまえば関係ないはずだが、みんな習慣的に略語を使っていたので、最初は、意味がさっぱりつかめず手間取った。、
今では、テレックスは廃止されてしまったが、当時の略語だらけのテレックスが、たまに懐かしくなる。勿論、あの略語だらけの交信を、もう一度やりたいとは思わないが・・・

因みに、1989年の福州研修生時代、通信手段が電話・ファックスしかなく(インターネットは当然なし)、料金は、今と比べると、信じられないほど高かった。
何しろ、一時期、個人で月15~20時間の電話をしたら、国際電話代を30万円請求された。
そのため、電話もかけられず、1年経過後は、孤独のあまり、日本との窓口であるテレックスが、友達の様に思えて、深夜・休日に、つい前に座り込んで、画面をのぞきこんでいた(インターネットではないので、当然、画面は真っ白で、何も見えない)。
あれは、絶望的な孤独だったが、当時、ハードシップが高い駐在員一人店(スーダン、リビア、シリアetc.)では、同じような事をしていた駐在員が、少なからずいたのだろうな。

どうした事か

ここ数日、急にブログのアクセスが増えたがどういう事だろう。
週末に、撤退関連の更新をしたら、TOPアクセスが1日700程度。
その後、2日連続で、1,000以上のアクセスがある。
数年前に、上海エクスプローラーの、大薗前社長から、アクセス操作を防ぐために、同一IDからのアクセスは、1日2回までしかカウントしないようにシステム修正した、と聞いたので、(今も同じかわからないが)特定の方のものではないと思うが、そうすると、却って不思議だ。
2008年の会社立ち上げから更新回数が落ちてしまい(特に、最近はさぼり気味だったので)、200アクセス位の状態が続いていたので。

それはさておき、僕がブログを始めたのは、2004年の11月から。
ライブドアの堀江前社長のブログが評判になっていた頃で、大薗SHEX前社長から、「うちもブログを始めようと思うので書いてください」と頼まれ、書き始めたもの。
とは言え、ブログという言葉を、1~2ヶ月前に知ったばかりの頃だったので、書いたら何が起きるのかも予測できず、不安が大きかったが、好奇心が勝って書く事にした。
「何で書き始めたのですか」と人から聞かれたら、「老後に読んで楽しむためです」と答えていたが、半分本心だった。
しかしながら、8年も書き続けたので、僕の状況も変わったし、大薗さんも、上海エクスプローラーの株式を売却して経営から降りてしまった。
大薗さんと知り合ったのは、2001年の事だが、僕と同い年で、話がしやすかっただけに、退陣で、上海エクスプローラーとの関係も、変わってしまっている。
また、僕の過去の記事を見てみると、以前は、結構勢いが良い文章を書いていた。
若かった頃と、今の様に、会社を守る立場ではなかった気楽さだろう。
文章自体は、あの頃の方が面白かったかもしれないが。

上海エクスプローラーブログは、大薗さんが第1号で、僕が第2号。
まだ、ブログを書く人が少なかったので、暫くは、2~3人のブログしかない状態が続いていた。
書き手は徐々に増えていったが、2008年くらいまでは、僕が1~3位という状態が続いていたが、その当時(2008年頃まで)は、週に2,000ちょっとのTOPアクセスがあれば、2位になれた時代だ。
それを考えれば、上海エクスプローラーブログも、8年間で随分成長したものだ。

まあ、だからどうした、という訳ではないが、ちょっと、昔を思い出して懐かしくなってしまった。
思い出話。

上海で湾岸署

上海の街角で、湾岸署(Tokyo Wangan)というステッカーを貼ってある車が停まっていたので、面白くなり撮影。
しばらく前の状況を考えれば、何やらほのぼのした雰囲気を感じる。
上海の街中は、この1~2ヶ月程度でも、結構な日本料理店が開店し、何事もなかったように営業している。
あの騒ぎはなんだったんだろうと思ってしまうくらいだ。

また、昨夜、売店に行ったら(日本人客はあまりいなさそう)、天真爛漫、という感じの若い中国人女性が笑顔で集まってきて、「あなたたち(日本人)は、私たちの事が大嫌いなのかい?」と無邪気に聞かれて、笑いながら、「嫌いだったら17年も中国に住んでないよ」と返しておいた。

日本であれ、中国であれ、報道なり政治なりが、こういった無邪気な交流(他国の人間に対する前向きな気持)を阻害しているとすれば、悲しい事だと思う。

不正防止の帳簿チェック方法(初級編)

前回予告した、不正防止を目的とした帳簿検査のポイント(初歩編)は、以下の通りである。

1.諸勘定
売掛金だと、しっかり与信管理ができている場合が多いのだが、立替金、処預け金、未収金等の諸勘定は、管理基準が明確化されておらず、管理が甘くなっている場合が多い。
こういった諸勘定に、問題が含まれている場合が多いので注意すべきだ。
金額が若干大きくなってきた段階で、諸勘定の内容(何ための立替・諸預けで、いつ回収できるのか)を、個別に把握する努力が必要になる。

2.買掛金
帳簿をチェックする時、つい資産勘定ばかりに目が行きがちだが、負債のマイナスは、資産勘定と同じ。
仕入れずに代金を払えば、買掛金はマイナスになる。
よって、資産勘定と同様の注意を要する。
また、直送取引(仕入先から顧客に、商品が直送され、仕入売上だけ計上する取引)の場合は、商品受け渡しに関与できないので、管理が難しくなる。
顧客の受領書が偽造されれば、商品の受け渡しがない状態で(架空取引)、仕入代金の支払が生じてしまう。
そのまま、仕入先の会社を倒産させて逃げる、という手口がある。
与信管理だけではなく、仕入先の管理も必要。特に、直送取引の場合は注意を要する。

3.売掛金
売掛金の適切さは、地道な残高確認をしないと、なかなか確認できない。
この理由は多々あるが、販売先と、商品の送付先が、必ずしも一致しないというのは一つの理由。
例えば、契約上は、A社に販売するものの、その後、A社からB社に再販売される場合、会社の販売先(売掛金の計上先)はA社であるにも拘らず、商品送付先がB社となる場合がある。
つまり、財経部としては、商品の送付先がB社である事を理由に、A社向け売上を拒否する事はできないのである。
この様な取引の場合、点検すべきは、契約書と自社が作ったインボイス等となる。
国際取引等の場合は、L/C条件に織り込まれたりもするが。
この為、契約書を偽造し、優良取引先A社に販売した事にして、実際には不正規のB社に商品を引き渡すという手口も考えられる。
契約書の偽造は、見破るのが難しい。

また、別の手口。
出納管理をする際に、支払の場合は入念に点検する一方、入金の場合は、管理が甘くなるケースがある。
仮に、優良取引先A社には、100の与信限度があるとする。
この場合、A社に50販売し、その代金を、非正規の相手先B社からの入金として処理し、50の商品をB社に横流しする。
A社に50の売掛金が残る事になるが、A社との取引が継続すれば、古い残高を消していけるので、Over Dueを回避し、問題を先延ばしする、という手口がある。


この様に、社内に悪意の人間がいて、契約書、商品受領書が偽造されると、財経部としては、問題の発見は困難だ。
問題が起こると、「何故、偽造が見破れなかったんだ」と言う議論が起きるが、大規模の会社であれば、毎月、数百、数千の取引がある中で、社印や署名が本物かを確認する事は不可能に近い。
書類を見るだけでは、真偽は判別できないし、相手に聞くにしても、口裏を合わせられればおしまいだ。
その意味で、問題が小さい内に、悪い芽を切り取る作業が、残高確認という、地道な作業という事になる。

最近は、香港、中国でも、残高確認が浸透してきた。
残高確認は、営業部でも面倒な作業なので、10年以上前は、「中国企業に残高確認書を送っても返してもらえない(習慣が無い)」と、開き直られるケースもあったが、随分改善したものだ。
また、本当に問題を発見しようとすれば、帳簿点検、残高確認だけではなく、取引先・仕入先の実地訪問(人物チェック)、社員の人物チェック(というと変だが、つまるところは、嘘をつく人間でないかどうかの、付き合いを通した確認)等を併用せざるを得ない。
こうなってくると、管理部門業務というのは、随分、職人的な面があるというのを分かって頂けるであろう。

推理小説

小学校の時、江戸川乱歩の少年向けのシリーズを親から買ってもらって以来、推理小説が好きになった。
その為、一度推理小説を書いてみたいと、学生の頃から考えているのだが、人には向き不向きというのがあるもので、トリックがさっぱり思いつかない。
ただ、会社に入ってから、経理畑が長かったので、不正(粉飾決算、資金の不正な引出し等)がどの様に行われるか、というのは、随分、理解できた。
手口を研究してこそ、不正防止のチェックポイントが整理できる訳で、その成果だ。
そんな訳で、企業小説風の推理物ならかけるな、と考え、何時か書きたいと思い続けてきたが、なかなか手が付かない。
一応、トリックとストーリー展開は、2004年頃に思いついた。
香港・広東省の来料加工廠関連取引に絡んだ不正を軸にした内容だが、最初の深圳のイミグレの場面を書き、暫く放っておいたら、深圳のイミグレの雰囲気がガラッと変わり(建物がきれいになり、税関の物腰が柔らかくなった)、描写部分が使えなくなってしまった。
修正して、徐々に書き進め、社内監査の人間が事故死する部分まで書いて、暫く放っておいた。
専門のビジネス書の執筆に追われていた訳だが、そうしたら、2008年から、来料加工廠廃止の運動が広東省で始まってしまい、時流に合わないと、書くのを躊躇し、結果、断念してしまった。
さっさと書かない方が悪いのだが、変化の激しい中国を舞台にして、小説を書くのは大変だ。
因みに、不正防止のための、経理上のチェックポイント(初級編)を、次回書いてみよう。

中国ビジネスコンサルタント水野真澄のブログ