講演会後に回収したら、百数十人の参加者の中で、3名だけ、(ミスタイプした)質問を手書き修正した上で、回答を書いている方がいた。
その3名が、全員丸紅の社員だったので、主催者の方が面白がっていた。
何しろ、何十社という企業の中で、丸紅社員だけだ。
丸紅というと、伊藤忠に続いて大酒のみという、世間的なイメージがあろうが(これはこれで正しいが)、こういう実務面の細かさもある。
これは、良し悪しの問題ではなく、傾向の問題だが。
面白いものだ。
ともあれ、僕は、コンサルティングという、ノウハウを売り物にするビジネスをしている訳だが、その基礎、つまり、考え方、仕事の進め方、意思疎通の仕方などは、(自分で学んだ部分もあるのだが)基本的には丸紅という会社で身に付けた。
大企業で仕事をする事と、中小企業で仕事をする事、はたまた自分で会社を興して仕事をする事の良し悪しは、色々あって一概には言えない。
ただ、少なくとも大企業の場合、組織に歴史的に蓄積されたノウハウがあるので、それが学べる事、電話の取り方、報告書の書き方、挨拶の仕方から始まるビジネスマナーを学べる事(叩き込まれる、と言った方がよい)等が良い事だ。
あと、コンサルティングの場合に圧倒的に良かったのは、場数を踏める事。
医者でも弁護士でも、経験がある人間(それで、且つ評価を得ている人間)が信頼される。
ただ、信頼される様になるまでは、数々の失敗が有った事であろう。
よって、誰しも新米に担当されたくないものである。
この様な場数が、組織の中で踏め、且つ、失敗しそうになると、組織(上司・同僚)が牽制してくれる。
そんな訳で、大きな失敗に到る事なく、たくさんの場数が踏めたこと(影響の無い失敗をさせてくれた事、と言った方がよいか)が、いまの肥やしになっている。
考えてみれば、22年間、丸紅という会社が、ノウハウを身に付けさせてくれ、いろんな経験もさせてくれ、語学も学ばせてくれ、比較的自由に行動させてくれ、少なからぬお金(給料)までくれたわけだ。
更に、今では、顧客になってくれるだけでなく、新規の顧客・提携先を紹介してくれたり、はたまた行く先々で、ホテルを取ってくれたり、飲み相手にもなってくれる。
深く考えた事は無かったが、改めて考えると、僕自身は、損得勘定において、かなりの得をしている事になる。
そう考えると大感謝だなあ、と今更ながらに思った次第。