柔道の鬼と呼ばれた木村政彦の伝記(木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか)を読んでいる。
つくづく思うのであるが、この練習量、意志の強さは逆立ちしてもまねできない。
人間の種類が違うのだろうなと思う。
ただ、木村政彦だけでなく、高専柔道の練習のくだりを読んで、当時の柔道部員が軒並みすさまじい意志で練習をしている。
また、昔の武道家は、真剣を使って、死と隣り合わせの練習をしている訳だから、確かに強くなるはずだ。
僕も大学時代は、大学の練習以外に町道場二つとジムに通っており、多いときには1日7時間くらい練習したが、密度が全く違う。
当時の僕の7時間の練習は、昔の武道家の30分程度の密度しかなかったのではないか。
また、戦後の日本経済の成長を支えたビジネスマンたちも、昔の武道家と同じ気概と覚悟で仕事をした故に、日本は短期間で驚異の復興を果たしたのではないかと思う。
僕が大学を卒業して会社に入った時、大学時代の合気道の練習で、努力していると(自分では)言いながら、無意識に自分を甘やかし、結果として強くなりきれなかった事を、非常に強く自覚していた。
だから、社会人になったら、大学時代の失敗を繰り返さぬよう、嫌だと思う事を自分に課して、実力を付けたいと考えていた。
新入社員研修時に提出した配属希望には、「中国関連で、忙しい部署を希望する」と書いたし、実際に配属されたのは、終電帰宅、週末出勤は当たり前というところだった。
それだけでなく、自分自身も通勤電車では英語教材のテープを聞き、寮では仕事関連の本を読み、職場では人が持っている手作りの業務マニュアルを盗み読みして仕事を憶えた。
少なくとも、入社数年は、寝ているとき以外は、仕事の事ばかり考えていた。
更に、新人時代の部署は、失敗すると坊主頭にさせられるような厳しいところで(さすがに、今そんな部署はない筈なので安心されたい)、かなり厳しく鍛えられたのが、今の自分の肥やしになっている。
そんな感じで育ってきた僕ではあるが、では、それと同じことを部下に課すかと言えば、それはしない。
時代が違うと言えばそうだし、正しい方法で興味を持たせれば、人は自発的に努力するはずだという期待もある。
社長になって(前の会社の時を含めれば)、既に5年以上。
部下との関係に付いては、試行錯誤を繰り返してきたが、今では、かなり部下を信頼して、必要以上に口を出さない社長であると思う。
それに部下も応えてくれているし。
強制的に仕事をさせられ力を発揮する人間もいるかもしれないが、大部分の人間は、そうされれば心に何らかの傷を残す。
やはり、モチベーションを持って仕事に臨むのが基本だ。
そして、仕事に対してモチベーションを持つかは自分次第であり、上司は強制する事はできないのではないかなと思う。
であれば、誘導すべきというのが、現時点での僕の結論である。