ただ、僕は二十数年中国と関わっているが、今の中国は、さほど特殊だと意識していない。
勿論、法律や社会制度が違う以上、日本のやり方だけで仕事を進める事ができないのは確かだが、これは欧米でも同じことだ。
僕は、駐在経験(居住経験)は中国だけだが、商社時代は、米国、中南米、欧州、中近東も担当した。
中近東のビジネスの方が、中国よりもはるかに難しい(日本の常識と異なる)と思う。
語学を学ばなければ、文字は全く読めないし(数字まで読めない)、思想が経済を大きく縛っている。
金利の徴収が認められない、富める者から貧者への施しが、税制に姿を変えて存続している等、宗教概念の理解が無ければ、経済制度を把握する事も出来ないわけで、その世界は日本の常識とは大きく異なる。
また、当時の中南米は、ハイパーインフレ進行下で、インフレ会計の理解が不可欠であった。貸借対照表の項目(非貨幣性資産と自己資本の部)を掛け算していくので、払い込みをしなくても、資本金が増えていくし、活動しなくても大きな損益が発生するというのは、非インフレの状況下では、その意義を理解する事もできないであろう。
米国だって、いざ担当すれば、驚くことは結構あった。
そんな訳で、日本しか知らなければ、中国が難しいと思うかもしれないが、中南米や中近東の経験があると、中国ビジネスは、日本人の常識でも判断できる、非常にわかりやすい環境だと思えるようになる。
少なくとも、中国ビジネスに関して僕が信念にしているのは、まずは常識で判断する事だ。
100%ではないが、中国ビジネスにおいても、日本の常識で考えておかしい事は、やはりおかしい(間違っている)場合が多い。
その意味で、人の説明を聞いたり、法律を読んだりした時、感覚的に「おかしい」と思ったら、中国は日本とは違うからと、単純に割り切らずに、納得がいくまで調べなおすべきだ。
結果として、解釈が間違っている、説明を受けた事実が違っている場合が多い。
違って当然、という思い込みは危険だ。
海外で仕事をする際に、常識判断は大きな武器になる。
その意味で、常識力を磨く事は重要だ。