来料加工廠のコンプライアンス

久々のビジネスネタを。

広東省は、2012年末までに、省内の来料加工廠を法人転換する事を目指している(粤府[2008]69号)。
実際に、どこまで徹底されるかは、現時点では推測する余地もないが、何故、来料加工廠形態を無くしたいかと言えば、コンプライアンス面であろう。

珠江デルタの来料加工廠は、殆どの場合、適切な納税・会計記帳が行われていない、従業員の一部が正規に登録されていない、工業用地転換されていない土地が使用されている等の問題点を抱える。
つまり、大部分の来料加工廠にコンプライアンス上の問題がある訳だ。
ただ、これは、企業が自発的に行ったというよりも、地方政府が書いたシナリオの上で行動したら、そんな状況になっていたという事で、企業の問題というよりも、地域全体としての問題となっている。
来料加工廠の形態転換上の問題点として、「歴史的な遺物」という言葉で表現されている問題は、この様な不適切なオペレーションの総称である。

これを、「問題を抱えたオペレーションは即刻やめるべし。それで運営できないなら工場を閉鎖すべし!」と言って終わりでは、評論家の仕事になってしまう。


当事者としては、現状を踏まえた上で、如何にオペレーションを適切化していくか、というシナリオを書かなくてはいけない訳であるが、歴史的な遺物を、なるべく必然性・全体性を持った形で解決していきたいというのが、来料加工廠法人転換の動きであろう。
法人転換すれば、雇用、会計記帳、税務申告等を、ガラス張りにせざるを得なくなる。
コンプライアンス上の問題は、閉鎖する来料加工廠と共に葬ろう(その形で解決しよう)という事であり、これは、地方政府の過去の間違いを解消する動きでもある訳だ。
現存する来料加工廠の中には、独資転換すれば、採算が苦しくなるという悩みを抱えているところもある。
この採算の悪化が、来料と進料の税コストの差、等であればよいのであるが、不適切なオペレーションができなくなるので採算が悪化する(立ち行かなくなる)という事であれば、その理由で独資化を思いとどまっても、今後、種々の規制が実施され、却って苦しい状況に追い込まれる事もあるだろう。
つまり、過去を解消するという、地方政府の意思に逆らっている事になるからで、報復措置が有るかもしれないからである。

勿論、予測は極めて難しく、そのまま、来料加工廠が継続できてしまう可能性も無い訳ではないが、いま行われている独資転換はな、この様などろどろとした問題を抱えての動きなので、その対応は、慎重に行うべきであろう。
その意味では、2012年末という、広東省の打ちだした転換達成目標は、意識して動かざるを得ないのである。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です