起業前夜

「起業前夜(高任和夫)」という本を、2~3年ぶりに読み返した。
上場を仕掛ける証券マンの主人公(40代)が、会社を退職するまでの過程を描いた本で、僕も、退職前に、2~3度読み直した事がある。
上場云々は僕のノウハウとは違うが、企業管理とか、ビジネスの構築等、主人公と僕で、共通した仕事をしている部分があり、この点、自分の境遇を投影しながら読んだものだ。

ただ、久々に読み直してみると、随分、気持の変化が生じていているのに気付いた。
それほど強い共感を覚えなくなったのである。

その理由は、
・小説で描かれている状況よりも、自分の経験の方がリアルなので(本を読むのと実体験する
のでは、実体験の方がリアルなのは当たり前だ)、それほどの臨場感を感じなくなった。

・自分の共感が、会社員の主人公よりオーナー社長に向かう様になった。

というのが主要因であろう。
自分自身で意識していなかった変化なので、ちょっと驚いた。
この作者は好きなので、継続して作品は読んでいるのだが。

実体験を経る事で、人の感性も随分変わるものだ。
改めて気付いた次第。

税務の国際化に付いて思うのは

中国で最近恒久的施設(P/E)認定の話題で持ちきりだ。
10年前までは、「中国でみなしP/E認定なんて」という感じであったが、時代は変わったものである。

僕が日本で経理部員だった頃(1990~1997年)は、主に米国担当だった。
これは、当時の課長が米国駐在帰りで、「水野が中国が好きなのは分かるが、会計・税務では(良し悪しに拘わらず)米国が先進国な訳だから、まずは担当してみろ」と言って担当させてくれたものだ。

おかげで、P/E認定、移転価格文書化、過小資本税制、組織再編等が主業務の一つとなり、それらの動きが、まさに今中国の税務界で繰り広げられている。
それを考えると、当時の上司に感謝しなくてはならない。

中国では、会計・税務の世界でも、国際的な制度作りが進められている。
減損会計・税効果会計を義務付ける会計準則の導入や、上記の様な税務の動きがその一例だ。

国際課税の世界では、P/E課税・移転価格等、ある意味強引な徴税行為が展開されるので、国際化=良い事では必ずしもないと僕は思っている。

綺麗な理論で武装した凶器を平然と振り回す様な行為が正当化され得る事は、米国の歴史を見ればよく分かる。
ただ、良きに付け悪しきに付け、時代がこう流れるのであれば、その理論に合わせて、企業側も戦わなければならない。

勿論、中国は、中国なりの実務の特徴があり、それを踏まえて対応する必要がある。
ただ、これはどの国でも同じ事。
日本でも、日本なりの特殊性を織り込んだ運営が行われる訳だから。

中国の会計税務の国際化も、そんな形で急速に展開されている。
その慌ただしさの中に、昔の経験が繰り返される懐かしさと、次の攻め手に対する怖さ、そして、前面で戦える充実感を同時に感じる。

顔色も良くなったし

5月6日から16日まで、ずっと香港で残務整理をしていた。
面談も極力控えめにした。
おかげで体が随分楽になった。
移動続きの生活を繰り返していると、体にダメージがたまるのが良く分かる。
「移動続きで仕事が片付かない!」と焦る気持ちもメンタルに良くないし。

2006年に、香港と上海を往復する生活になり、毎月8~10回飛行機に乗っていた時期があるが、あれは本当に大変だった。
その生活が始まった時は、飛行機から降りると、必ず鼻血が出たものだ。
暫くして治ったので、「体が慣れたんだな」と思っていたが、やはり、ダメージは蓄積されていたのだろう。

会社の経営も安定した事もあり、最近、「顔色がいいですね」とか、「元気そうですね」と良く言われる。
体も楽になってきたし、いい感じだ。

今週~来週は、上海。

休養は取ったし(本当の休養ではないが、移動がないというだけで休養した気分になる)、ぼちぼち活動を始めようか。

今週末の過ごし方

残務整理も終わったし、週末はちょっとのんびりする事にした。
ただ、いつもながら、NNAの連載原稿(月曜日掲載)は書かねばならぬし、三井住友銀行の機関誌の締め切りも今週末にぶつかっている。
あと、21日の上海芙蓉会での講演のレジュメも作らなくてはいけない。
あと、週末でも、いくつか質問は頂くし。
という事で、7~8時間くらいの労働は必要なのはやむを得ない。

NNAの原稿は、東莞市の来料独資転換に関する東莞市人民政府弁公室がまとめた、政府工作会議議事録の内容。
来料加工の無償提供設備の移管に関して、少し明確な記載が行われている。
これは、東莞市では、監督期間(5年)未経過の設備のみ現物出資を認め、経過後の資産は(現物出資が認められないので)譲渡方式で移管せねばばらないが、代金の対外送金が認められない、という不思議な運用が行われているが、この矛盾をどう解決するかに付いて触れたもの。
それなりの明瞭化が行われているので意義はあるが、数点、「なんでこの部分をもう少しはっきり書かないのかなぁ」と不満に思う様な記載がなされているのはいつもながら。

三井住友銀行の機関誌は、中国における非居住者の課税。
P/E認定された場合とされない場合の納税手続をまとめたもの。

今回は、書く内容がすんなり決まったので楽だった。
書くネタがない時は、本当にプレッシャーになるので・・・

今回の悩みは芙蓉会の演目。
事務局の谷垣君より、「あまり詳しい実務に掘り下げないで、全体的な内容で。それでいて、さすが現場に強いコンサルタントだ、と思わせる様な内容にして下さい」という、かなり難しい注文をもらった。
内容を決めるのに、しばらく悩みそうだ。

缶詰め最終日は用語集改定

自宅缶詰の仕上げは、NACグローバルの斉藤さんと、7月発売予定の「用語集」の執筆作業。
僕が前回赤を入れた内容の総確認。

斎藤さんの頑張りもあって、用語集も完成版となった感がある。
資料が充実していて、僕がやりたかったものを全部入れられた。
「辞典」として、充実したものに仕上がったと思う。

用語が増量しただけでなく、財務諸表・各種税務申告書等の日中対訳だけでも数十種類。
行政許可62種類(貿易手続だけでなく、各種外資企業の設立に関しての条件、根拠法、資料等を明記)の解説等を加えたので、ページ数が800ページくらいになりそうだ。
かなりの事が、この本を手に取れば、一目でわかると思う。

資料編(財務諸表・申告書等、行政許可纏め)に付いては、作業と言えば作業であるが、これだけ膨大な作業は、普通できないし、僕も絶対やらなかった。
前回の用語集(約230ページ)だけでも、あまりの作業の大変さに、改定の依頼をずっと保留にしていた訳だから。
やはり、「初めての本を出す」という斉藤さんのモチベーションが、用語集の改定を実現させたと言ってよいであろう。
電子データ版も作る予定なので、是非、職場に一冊、という感じで使ってもらえるといいなと思う。

話変わって。
休憩していたら「、昔M&C(丸紅の子会社時代)のHPで水野さんが使ってた、mizuno-solution.comのurlを使ってる人がいますよ、中国商売関係で。空いたんでとったんでしょうね」という話を斉藤さんがしていた。
興味をひかれて見てみると本当だ。
面白い事を考える人があるもんだ。
ともあれ、僕とは無関係ですが・・・


缶詰めになって仕事をしていると・・・

先週末から、香港の新居(サービスアパートメント)に缶詰めになって、滞留していた業務・執筆の整理に没頭していた。
経理処理を含めて、業務はほぼ完全にキャッチアップできたと思う。

未整理の仕事があるという事自体が、精神的なプレッシャーになるので、これが解消されていくのは、メンタル面で楽にはなる。

ただ、昼夜とサービスアパートのデリバリーを食べ続け、一人黙々と仕事をしていると、(業務効率は良いのだが)大変孤独な気分になる。

そんな中、近くのコンビニに行ったら、りらっくまのぬいぐるみがあったので、暫し考えた挙句衝動買いしてしまった。
これがあると、何となく部屋がなごむかなと思った訳であるが、店員の若いお兄さんに、随分笑われてしまった

買ったのはこれ。

背中のチャックも付いているし(りらっくまは、中に人間が入っている)、なかなか忠実な作りだ。

残務整理を何とか終えて

10日間ほど、残務整理をこなす予定。
特に、経理処理。

上海、広州では、最初から記帳代行を頼んでいるのであるが、何分僕が経理出身なもので(なまじ自分で経理処理ができるので)、自分でやろうとしたのはいいが、日々のコンサルティング業務(本業)に追われて、遅れ遅れになっていた。

今月から、香港も新しい経理担当に記帳をお願いするのであるが、引き継げる状況にしなくてはいけないので、焦っていた。
週末は部屋にこもって働き続け、なんとかキャッチアップできた。
宿題をやり終えたような、ほっとした気持ちだ。

昨年度の会計士監査は上海は終了。
香港、広州はこれからながら、初年度の決算自体は固まっているので問題ないであろう。
3拠点、しっかりと黒字を出した。

中国の企業所得税法で、課税所得が30万元以内だと(あといくつか要件があるが)、小規模薄利企業として、20%の優遇税率が適用されるのであるが、上海法人は、この認定をとっていたにも拘わらず、30万元以上の利益を出したため、優遇税率の適用が認められなくなってしまった。

これが残念と言えば残念だが、経営コンサルティングもしている会社が、自分自身が「薄利」では格好悪いし、発言の信ぴょう性にもかかわりそうだ。

起業して、半年以内に香港、上海、広州に会社を作り、全て初年度から利益を出した訳だから、発言も信用してもらえるであろう。
その意味では、利益が出たんだからいいか、という感じだ。

今年は、新規の投資を2社。
既存の会社の増資を2社。

活動範囲も広くなってきて、やる事が多い。
じっくりこもって仕事ができる機会を有効に使い、片付ける仕事を片付けてから、一気呵成に打って出よう!

その後の人民元対外決済

いまや、丸紅上海の財経部長として活躍する谷垣君(これは語学研修生時代)から、「世界で最初に人民元の対日送金を実施した男になりましたよ!」という自慢げな報告があった。

去年9月のブログで、人民元対外決済の試行措置が活用されない理由と、今後の見通しに付いて解説したが、ここで予測した様に、運用面での規制緩和が徐々に実施されている。

これは、根拠となる法規(国際貿易に関わる人民元の試験的な決済管理弁法:中国人民銀行・財政部・商務部・税関総署・国家税務総局・中国銀行業務監督管理委員会公告[2009]第10号)自体は変更せずに、運用で規制緩和を実施しているもの。
具体的には、上記の弁法では、対外送金が認められるのは貨物代金決済だけであるが、非貿易項目の送金実例も出てきている事。
今回の送金は、日本に対する人民元送金(弁法では、香港・マカオ・ASEAN向け送金のみ)。それも、非貿易項目。
二重の意味で、弁法に基づかないオペレーションが、許可された事になる。

日本に人民元送金が認められた(日本で人民元口座開設・換金も認められた)というのは、意義としては大変大きく、人民元のハードカレンシー化への実験が、じわりじわりと進んでいる事が伺える。
勿論、人民元のハードカレンシー化は、人民元相場の大幅な切り上げに繋がりかねず、現段階で急激な規制緩和はしにくいと思う。
ただ、法規を変えずに運用面で実験をし、結果を確かめてから法規改定、というのは、中国がよく採用する方法。
国内流通権を外資に開放する(2004年)前に、保税区を使って、10年近く実験を行った上で開放につなげたのと、基本的には同じ事だと思う。

そんな感じで、人民元自由化の実験が、着実に行われている訳であるが、実験措置の速度は、僕が予想していたよりも、ちょっと速めかな、という印象。
完全自由化が実施されるまでは、施行措置実施後5~10年程度かかるかな、というのが僕の予測であるが、さて、これは早まるであろうか。


一つ補足すると、運用面での規制緩和が実施されているとはいえ、まだ、送金に関する管理は厳格に行われている。
つまり、外貨だとできない受け払いが、人民元だとできるという訳ではない。
この面での緩和は、まず行われないであろう。

なんとか体勢を立て直す

暫くの間、業務対応、連載原稿の執筆、講演等に追われており、目の前の事しか見えない状況であった。
おまけに、引っ越し、体調不良等が重なっていたし。

そんな訳で、ブログも全く書く余裕がなかったが、今日、執筆・業務を全て整理して、なんとか体勢を立て直す事ができた。

ちょっと安心した気持だ。

ここですぐブログが再開できるかどうか、というのは、精神的なものも関係してくるので良く分からない(ここしばらく、連載にも追われ続けていたので、書くという行為に対するプレッシャーが大きかった)。

ただ、慣らし期間を経て徐々に再開していこう。


紹興で本場の紹興酒を飲む

ちょっと前の事だけど、杭州⇒紹興⇒寧波を訪問した。

特に、紹興は初めての訪問。
大学時代から、紹興で本場の紹興酒を飲んでみたいと思っていたけど、その念願がやっと叶った訳だ。
紹興の開発区も前から見たいと思っていたし。

開発区は駆け足で見て、余った時間で魯迅記念館を観光。
そして近くの料理屋で、つまみと常温の紹興酒を飲んだ。

紹興酒は特に好きではないけれど、本場に来て、その雰囲気の中でのむとさすがに美味しい。
ゆったりと時間が過ぎるのを感じながら、ちょっと辛口の紹興酒を楽しむ。


そして、魯迅記念館、咸亨酒店を回る。


杭州湾大橋にて

寧波から上海への戻りは、杭州湾大橋を初めて渡る。
長さ33Km強の海上大橋だ。

これがない頃(2006年)、寧波から上海まで車で移動した事があったが、この大橋の開通により、かなり時間が短縮になった。
長さに感動するも、写真に撮ると、あまり感動が伝わらないな。

中国ビジネスコンサルタント水野真澄のブログ