加工貿易制限分類の拡大のポイント

成田から上海に移動。
朝9時半に成田についたら、11時20分発のJAL便がDelayで、13時50分の出発に変更になったと知らされる。
今回の出張は、日本行きがキャンセル。上海戻りがDelayと両方トラブルに。
とは言え、成田でゆっくりと時間が有ったので、フジサンケイビジネスアイの原稿を3回分書き上げる事ができたので、まあ、結果オーライか。

上海に到着したら、亀一から、かねてより予兆があった、加工貿易制限分類の拡大に付いての発表があったと連絡が入る。
この内容は、以下の通り。


今回発表されたのは、「商務部・税関総署公告[2007]第44号」で、以下の内容となっている(施行は2007年8月23日)。
●制限分類を取り扱う加工貿易企業は、企業ランク(A、B、C類)に応じて、保証金を納める必要がある。
具体的には、A・B類企業の場合は保証金額の50%、C類企業は保税輸入原材料に関する関税・輸入増値税額の全額を納付する。
A・B類企業の保証金額に付いては、輸入関税・増値税の金額を基礎とするものの、輸入制限分類・輸出制限分類の違いによって、計算の調整が行われる。
●保証金は、保税品の輸入段階で納付し、製品輸出・核銷手続終了後に、預金金利を乗せて返却される。
●東部地域の制限分類加工貿易企業の場合は、上記の通り、A・B・Cに拘らず、保証金の積み立てが要求されるが、中西部にある場合は、A・B類企業の場合は空転(台帳管理のみで保証金の積み立てを要求されない形式)、C類企業は実転(保証金の積み立てを要求される形式)となり、A・B類企業の場合は保証金の積み立てが免除される。


では、この公告によって、なにが変わるかと言う点であるが、それには、先ず、現在の加工貿易企業の分類を理解する必要がある。

加工貿易企業は、その規模、パフォーマンス(違反暦の有無等)によって、A・B・C・Dの4分類に分けられる。
とは言っても、D類企業は加工貿易が禁止されるので、加工貿易を行っている企業の分類は、A・B・Cの3分類という事になる。
ただ、A類は優良な大規模企業。C類は軽微な違法暦がある企業という、特殊な位置付けなので、大部分の加工貿易企業はB類という事になる。
昨年に読んだ統計では、(うろ覚えではあるが)加工貿易企業全体の8割程度がB類だったような記憶がある。

現時点では、加工貿易を行う場合、
● A類企業は保証金の積み立て不要
● C類企業は保証金の積み立て必要
● B類企業の場合は、原則保証金積み立て不要ながら、特定製品を扱う場合は輸入関税・増値税の50%に相当する保証金の積み立てが必要
という事になっているが、B類企業が保証金を要求される「特定の製品」に相当するのが、「制限分類製品」という事になっている。

以上を整理すると、今回の公告による重要な変化は、「従来は保証金の積み立てが不要であった、A類企業の場合でも、制限分類製品を扱う場合は、輸入関税・増値税金額の50%に相当する保証金を払う必要が生じる」というもの。
更に、公告と同時に、新制限分類表が発表されているが、従来の394品目から2,247品目に大幅に拡大されており(1,853品目の増加)、保証金の積み立てを要求される加工貿易企業の数が、格段に増加する事になる。


これと同時に、以前より大まかな方針が打ち出されていた事であるが、中西部で制限分類品目の加工貿易を行う企業の場合は、A・B分類であれば保証金を納付しなくても良い事が規定されている。
つまり、制限分類加工貿易企業の内陸シフト促進の姿勢が明確に打ち出されているのがポイント。
とは言え、この制度変更によって、中西部に移転するメリットがでるのは、制限分類を扱うA・B類企業のみ。
更に、その影響も、保証金の積み立てに関する資金負担(保証金には預金金利が付くので、資金に関する調達金利と預金金利の差が影響)と言うわけで、この公告だけで、インフラ整備が遅れ、輸送コストの増加・リードタイムの延長が想定される、中西部への移転が進むかどうかは、僕としては疑問。
勿論、場所を選べばメリットは出てくるのかもしれないが・・・
因みに、東部地域とは、北京市・天津市・上海市、遼寧省、河北省、山東省、江蘇省、浙江省、福建省、広東省を指しており、中西部とは、それ以外の地域を指している。
また、保税区・輸出加工区は、保証金制度の対象外(制限分類企業でも保証金積み立て不要)というコメントが、商務部より出ている。