20~30年前に中国で暮らすと

最近の中国しか知らない人が、1980年代の中国にタイムスリップしたら、非常に驚く事だろう。
インフラ状況、通信状況、衛生状況、その他が全く違う。
それ以前に通貨制度が違う。
為替が二重相場で、外国人用の紙幣(外貨兌換券)と中国人用の紙幣(人民元)が異なっていた。
外貨兌換券と人民元は、同じ1元でも実質価値は違い、実質1.5倍程度であった。
但し、双方の交換は禁止されており、これを行えば処罰された。

何故、兌換券の実質価値の方が高いかというと、外貨に再兌換が可能であった事と、兌換券を持っていれば、中国公民でも友諠商店で買い物ができたためだ。
当時、(徐々に規制は緩和されてきたが)外国人の生活空間と中国公民の生活空間は区別されていて、ホテルも外国人用・中国公民用に分かれていた。
物資が不足していた時代、購入品は、友諠商店でしか購入できなかったが、ここは外人専用。但し、兌換券を使用すれば、中国公民でも使用可能という事になっていた。
また、当時の人民元は、何度も切り下げが行われていた。二重相場の廃止は1994年だが、その際は、US$=RMB 5.7程度の公定レートを、US$ = RMB 8.8程度の実勢レートに統合する形で統合したので、実質的な意義は切り下げであった。
つまり、外貨に換金できれば、切り下げリスクを回避できる訳なのだ。

そんな訳で、人民元を兌換券に替えてくれというお願いを、頻繁に受けて困った。
勿論、1.x倍で替えるという話ではなく、若干、不便な場所に出張・旅行に行く事が周りの人間に漏れると、「あそこは不便で兌換券が使えない。困るだろうからお前の為に人民元にしてやろう」という、親切めいた言い方で持ちかけられる訳だ。
ただ、実際は、よほど辺鄙な場所に行かなければ、そんなことはない。それどころか、外国人が人民元を使おうとしても、拒否される事が多いので、この様な申し出は非常に困る。断るのに苦労した。

ちょっと面白かった出来事としては、広州出張した時に、東方賓館のレストランで、外国人でも人民元が使えると言われた時だ(会計の時に、兌換券か人民元か?と聞かれた)。
「広州一格式のあるホテルで、外国人から人民元を受け取るのか」と興味深かったのと、好奇心から、人民元は持っていなかったのだが、「どちらで払っても同じ価格?」と質問してみた。
マネージャーが、苦しそうな顔で、「自分自身も、兌換券と人民元は実際には違う価値だという事は知っている。但し、国家の方針には従うべきなので、当然同価格だ」と発言したのが記憶に残っている。

僕は、外国企業の常駐代表処で仕事をしていた訳だが、そこでは使用通貨が外貨兌換券になる。
よって、現地社員が経費(出張費・会議費など)を立て替えると、経費精算時には兌換券を返金する事になる。
つまり、スタッフとしては、人民元で立て替えると、経費精算時に兌換券が返ってくるので、実質価値が1.5倍になる訳だ。
よって、スタッフは、我先にとお金を立て替えたがるし、給与の金額だけでなく、経費の立替金額の多寡(出張・宴席参加機会の多寡)が不満につながった。

まさに、今とは大違い。
実際に経験しないと、こんな世界はなかなか想像できないだろう。
今の中国は、人民元の切り下げではなく切り上げを警戒し、外貨の流出よりも流入を規制している。
そして、人民元の国際化に向けたステップが、ここ数年、着実に進められている。
30年弱の中国の変化を見ていると、社会は変わる、というのを実感する。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です