マネー資本主義

NHK取材班がまとめた、「マネー資本主義(新潮文庫)」を読んだ。
米国流の、株主偏重・短期利益の過度の追及を求める資本主義を、単なる資本主義と比較して、マネー資本主義と位置付けている点が興味深い。
原丈人氏のインタビューにもあるが、会社は本来公共性を持っているものであるにも拘らず、株主のものだという思い上がりが、実体経済を疲弊させているという意見も、まさにその通りだ。
企業が利益を計上しているにも拘わらず、大量に人員を解雇し、企業が生き残るために必要不可欠な研究開発費を削り、短期利益の極大化を求める。そうする事で、経営者は莫大な報酬を受け取り、株主はキャピタルゲインを得る。
道理としておかしい事が、マネー資本主義では礼賛されるのは、ルールにゆがみが有るからだ。
巨大な富と権力を持つ者の立場で構築された、歪なルールである。
旧ソ連の崩壊は、資本主義の社会主義に対する勝利ではない。
欲望深い人の心が、経済理論と社会システムを崩壊させたもので、それを改善できなかった、旧ソ連式社会主義の自滅だ。
マネー資本主義により、富と権力が集中すれば、同様な事が起こり得る。

サブプライムローン問題から生じたリーマンショックは、金融工学を駆使して組み立てたリスク分散化理論が、暴走して経済を崩壊させたものであるが、それは、人の欲望が運用を必然的にゆがめたからである。
不動産が上がり続けない限り、成立しないモデルであるにも拘らず、取引が拡大し続けた事を、本著は取材を通して説明している。
この処方箋は、取扱説明を十分理解する事と、工学者の立場の意見があるが、これは人間の行動原理(利益への欲求を断ち切れない)からすれば、無理ではないか。
ローン会社は証券会社に債権を売却する事で、リスクから逃れられるので、クレジットカード使用禁止の人間や、債権取り立て中の人間にまで、住宅ローンを組む(適切な査定が行われていない)。
信用状況が劣る状況先への融資は、当然、金利が高くなり、返済不能に陥る事は容易に予想される。
これを、不動産が上がり続ければ、転売でリスク回避できるし、最新金融工学でリスク管理はできている、と信じる事で、自社の利益の拡大に向けて暴走する。
つまるところは、責任感と当事者意識の欠如であり、金融工学理論がリスクを消滅させたという盲信である。
これは、人の心の弱さが招いた必然で、旧ソ連式社会主義の崩壊と同じ根を持つものだ。

リーマンショックから時間が経過し、人々は相も変わらず同じ行動を繰り返している。
本著のテーマは、人間の欲望と向かい合うという意味では、永遠のテーマとも言える。

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