増値税関連の法規における輸出還付公式は、不還付税額、免税控除還付額、免税控除額等、紛らわしい単語が並んでおり、読んでも何を言わんとしているのかわからず、消化不良を起こしてしまう方が多い。
そんな訳で、誰でもわかる様に、増値税の輸出還付公式を解説しようと思いつく。
1.増値税の基本
増値税は、日本の消費税と同じで、最終消費者に転嫁する税額。
つまり、サプライヤー(一般納税人の場合)には、貨物代金と一緒に17%の増値税を支払い。
☆ これは、もらってしまった訳ではなく、あくまでも仮払いなので、資産処)。
顧客からは、貨物代金と一緒に、17%の増値税を回収する(その会社が一般納税人の場合)。
この税額も、もらった訳ではなく、預かっただけなので、仮受処理(負債処理)。
その後、双方を相殺して、差額を税務局に納税する事になる。
サプライヤー ⇒販売100⇒ <企業> ⇒販売200⇒ 顧客
←代金100 + 税額17← ←代金200 + 税額34←
税額部分の経理処理は、以下の通りとなる。
仮払増値税 17(100×17%) |仮受増値税 34(200×17%)
⇒ 相殺して上で、17を税務局に納税。
国内販売だけをしていれば、通常、負債勘定である仮受増値税(販売時に回収して預かり処理した増値税)の方が多いので、これ(多い部分)を納税すればよい。
では、資産勘定(仮払い増値税)の方が多い場合、どの様な理由が考えられるか、というと、一般的には、
1)一部、もしくは全額を輸出した。
2)仕入と販売のタイミングがずれた。
3)損失取引をしたので、販売増値税の方が少なかった。
という様なこと。
この内、1)の理由である場合は、税法に、仕入税額の還付(ゼロ税率)が認められているので、輸出還付を行ってしかるべきである。
2)はいずれは調整される筈なので、待っていればよい。
2.製造業の輸出還付
販売業の場合は、仕入れた財貨がそのままの形で輸出されるので、仕入税額に、還付率をそのまま掛けて、還付額を算定すればよい(仕入税額x還付率=還付額)。
⇒ 中国の輸出還付の特徴は、仕入税額が全額還付されず、輸出する商品によって還付率が決まっている。
一方、製造業の場合は、原材料が多数購入され、形を変え(減耗もあり)出ていくので、仕入税額の発票と輸出製品の、一対一の個別紐付けはできない。
よって、一種の割り切りにより、「輸出額をベースに還付しない額を先に決め、それ以外の仕入税額を還付する」方式を採用するのである。
この公式が、不還付額=輸出FOBx(17%-還付率)の意味。
それからのステップであるが、
① 還付控除の対象外となる金額(還付・控除不能額)の計算
還付・控除不能額=(輸出FOB-免税輸入原材料)×(17%-還付率)
☆ この計算式の趣旨は上記の通り。
因みに、免税輸入原材料というのは、進料加工で保税輸入した原材料は、増値税の免税対象となるため、不還付額を減らすために控除する。
② 納税額の計算
納税額=売上増値税(国内販売に際して徴収した仮受増値税)
-仕入増値税(国内仕入・一般貿易輸入で支払った仮払増値税)
+還付・控除不能額(①)
⇒ 納税額が正の数字になった場合は納付ポジションに、負の数になった場合は還付ポジションとなる。
☆
納税額が正の数字になる場合
——————————————-
仮払い増値税 50 | 仮受け増値税 100
| 不還付税額 0
例えば、輸出をせずに、国内販売だけをしていると、(販売月のズレや、損失取引が無ければ)この様に販売時に預かった税額の方が大きくなる筈なので、その差額(この場合50)を納税すればよい。
納税額が負の数字になる場合
——————————————–
仮払い増値税 100 | 仮受け増値税 50
| 不還付税額 10
一方、この様に、仕入時に仮払いした税額の方が大きい場合(且つ、不還付税額が有る場合)は、輸出が有る筈なので、還付を考慮する必要がある。
ただ、これだけでは、仮払い増値税(仕入税額)の方が大きい理由が、輸出によるものだけなのか、期ズレや損失取引によるものかが分らない。
その為、次(③)のテストで、理論的な輸出還付額を算定する訳である。
③ 還付可能額(最大還付容認額)の計算
還付可能額=(輸出FOBー免税輸入原材料)×還付率
☆
上記の計算の結果として、還付可能額(③)が、納付税額(②)のマイナスの絶対値より大きい場合は、②の金額が全額還付される。
その上で、還付可能額(③)-実際の還付額(②のマイナスの数字の絶対値)を、「免税控除税額」と呼称する。
一方、還付可能額(③)が、納付税額(②)のマイナスの絶対値より小さい場合は、実際の還付額は還付可能額(③)となり、免税控除税額は0となる。
以上が、製造業の増値税納付・輸出還付公式である、免税・控除・還付方式である。
こうしてみると、さして難しい公式ではないのだが、税法では紛らわしい書き方がしてあるのと、噛み砕いた解説が、今まであまりなかったので、抵抗感を持つ方が多かったという事かと思う。